なぜ共通事業所に触れないのか?
5月10日の日本経済新聞夕刊では、3月の毎月勤労統計調査の結果が「3月実質賃金、前年比2.5%減ー3年9ヵ月ぶり下げ幅」という見出しとともに報じられた。景気がすでに後退局面入りしたのではないかという見方も出る中、「早くも賃金低下が始まったか」と思った読者もいたかもしれません。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190510&ng=DGKKZO44615580Q9A510C1EAF000
しかし、4月5日に以下のnoteで書かせていただいたように、今年の賃金上昇率は、いわゆるサンプルの部分入れ替えの影響によって0.9%のポイントのマイナスの断層が生じている。2019年入り後の賃金上昇率は、実勢よりも下振れして見えるようになることが懸念されます(2018年は過大でしたが)。
さらに、2018年中、「こちらが実勢ではないか」と野党が主張していた「共通事業所」ベース(前年も今年も調査している対象に限定して算出)の3月の名目賃金上昇率はマイナス0.1%でした(下図)。実績値のマイナス1.9%と1.8ポイントものかい離があります。減少しているのは変わりはないでしょうが、その程度はだいぶ異なります。
賃金低下を強調したいという記者の気持ちはわからないではありませんが、共通事業所ベースについても記事の末尾に触れて、実績値の落ち込みが過大である可能性があることも知らせるべきではないでしょうか?いずれにしても、断層修正が行われるGDP統計の雇用者報酬の公表(20日)が待たれますね。
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