#10 耳心地
私たちは数多ある言葉の中から、いくつかを選んで会話をしている。
しかも、たくさんのひとたちが使ってきたものを優先的に選んでしまうものだから、耳心地はきっといいものになってしまっているかな。
あそこのカフェの窓際の席に座るカップルもきっとそうだ。誰もが聞いたことのある愛の言葉を魔法のように囁いて、甘いひとときが溶け出したハチミツをふわふわのパンケーキの上に落として二人で美味しく頬張るのだ。
すっかり汗をかいたグラス。
クリームソーダの炭酸が撥ねる音。
氷が溶けて傾いて、直立の紙ストローが少しへたる。
遠目ながらそんな気がした。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?