嫌になっちゃった

私は恐らく、世間一般的に言うチャラ男を好きになるタイプだ。

思えば昔からそうだった。
中学時代はクラスで1番背が高く、運動も勉強もトップクラスで、顔は彫りが深くスタイルも良い、そんな男子を好きになった。
学級委員長に真っ先に推薦され、それを満更でもない様子で受け入れ、淡々とこなすようなリーダータイプ。誰にでも優しく、どんな他愛のない話でもニコニコしながら付き合ってくれる。ほんとに中学生?ホストじゃないの?ってくらいコミュ力の鬼だった。
こんな人と付き合ったら、一生忘れることのない、まばゆい輝きを放つ青春ライフが送れるのだろうなと甘い妄想を膨らませていた。
ただ彼は彼女を取っ替え引っ替えしていた模様。性格も所々母性本能をくすぐるような可愛さがあるから、数多くの女子たちに好意を向けられていたことは間違いない。それを手玉に取って数々の女子たちと純異性交遊を楽しんでいたのだろう。

大学時代は端正な顔立ちで、運動神経が抜群で、子供が好きで、私の好きな背中の形をしている男子を好きになった。
でも彼はとにかく私の中の常識からはみ出しすぎている奇行しかしない人だった。講義中は落ち着きがなく何度も「トイレに行く」といって席を立ったり、特定の先生をおちょくったり、指名されても無視を決め込んだり。とにかく気に食わない奴だった。
けれど面食いな節がある私からしたら、当時はとにかく目の保養としてずっと隣にいてほしい存在だった。服装も私好みのシンプルコーデ、柔和な笑顔、細いのにがっしりとした背中。どれもが神々しかった。
ただ聞いた話によると、金遣いが荒かったらしい。確かに学生にはちと高くね?というブランドものをたくさん持っていた。また目線の先に可愛い女の子がいればすぐさま甘い言葉を囁き捕まえ、夜は忙しくしていたらしい。あれ?今思えばそんなに格好いい奴じゃなかったかも。

私を私以上に理解しすぎている友人たちによると、自分自身がしっかりしすぎているから、そういう人に惹かれるんじゃないの?とのこと。あとダメ男とかヒモ男にも気をつけてねと言われる。
私に彼氏ができたら彼女たちの審査を受けてもらうことになっているのだが、そんなことに応じてくれる男性なんぞいるんだろうか?普通に私含め周囲の人間までヤバい人認定され、ご縁が解消されてしまう可能性も否定できない。

話は変わり、先日ある男性とサシで飲んだ。向こうが「もっと仲良くなりたい」と言ってくれ、私も同じ気持ちだったから、とある夜中に酔った勢いで誘ってしまった。
2軒ハシゴしたのだが、個人的にとても心地よい時間だった。相手が頼む料理は私の好みドンピシャだし、食べるペースも飲むペースもズレがなく合っていた。食事のペースについては相手が合わせてくれていたのかもしれないけど、久々に一緒に食事をしていて楽だなと思える人に出会えて、純粋に嬉しかった。
そんな場でするなよって感じだけど、心が解放されすぎて仕事の愚痴などもこぼしてしまった。それでも共感と否定を絶妙なバランスで織り交ぜた回答を紡ぐ彼に、尊敬の念さえ抱いた。まじでパーフェクトヒューマンすぎて、こんな素晴らしい人間が身近にいるって、私前世で何か徳積んだっけ?と考えてしまった。

でもさ、こっちから誘う時点で何かしらの好意を向けられているのに普通は気づきますよね。うん、相手も気づいていたはず。ただきっと相手は別に私のことなんぞ、ただの知人としか捉えていなくて「まぁ誘われたし?とりあえず行くか」くらいのテンションだったと思う。だから余計に「飲んでモヤモヤを晴らしましょうタイム」という何の生産性もない時間に付き合わせてしまった事に対し、今更罪悪感が沸き起こっている。
しかも、帰り際に私が潰れかけてしまったのも本当に良くなかったなと。なんとか家には自力で帰れたけど、だらしなさすぎて幻滅されたよね。もう「仲良くなりたい」なんて思いは宇宙の遥か彼方に飛んで消えていったと思う。

少しでもお近づきになりたいという私の不純な願いは、最後の最後でボロとなって現れた。生まれながらの性格で今更治りようのない詰めの甘さが露呈した夜。朝起きて見た空はこれまでの人生で1番霞んで見えた気がした。

自分の心を開いて、ボロを出して落ち込むくらいなら、やっぱり自分が自制心を持って支える側に回れるパートナーがいいのかな。となるとやっぱチャラ男にダメ男にヒモ男が最適解なのか?なんて考える休日の午後。
あーあ、こんな自分が嫌になっちゃった。

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