#6.芸能人になりたい~再び~
―連載マガジン『ポンコツだらけの音楽会~私の夢の叶え方』第6話。
全話はこちら第1話、第2話、第3話、第4話、第5話―
中学2年生になる頃には、
いじめはだいぶ鎮静化されていた。
クラス替えが良いきっかけとなり、友達もできた。
いじめがきっかけで私は作詞の楽しさを知り、
ステージへの憧れを再び持つようになった。
「ステージに立って沢山の人を笑顔にしたい!」
その気持ちが溢れ出していた。
作詞をする時に、英単語辞典をよく読んでいたこともあり
英語に興味を持つようになった。
小学時代の苦い思い出から疎遠になっていた発声練習をするために、
陸上部と兼部して合唱部にも入部した。
仲の良いクラスメイトも入部していたおかげで、
すんなりと溶け込むことができた。
部活が始まる前には、音楽準備室(楽器が置かれている部屋)で
好きな歌を自由に唄ったりしていた。
主旋律以外のパートも唄えるように、
色々なパートに挑戦した。
そんな学生生活の傍ら、
オーディションにチャレンジする日々が続いた。
当時、浜崎あゆみに楽曲提供していた
HALという作曲家のプロデュースオーディションでは
原宿のイベントスペースで歌を披露した。
他にも、ソニーミュージックアーティストオーディションや
アミューズ映画出演オーディションに参加したが
どれも合格の言葉をもらうことはなかった。
オーディションや紹介などの縁で、
芸能事務所のマネージャーの人と面接する機会もあった。
しかしここでも、YESと言ってもらうことはなかった。
夢の芸能界は、本当に夢だった。
体型や特技、歌、どれをとってもいまいち。
目指している将来像もない。
ただ、有名になりたい。
みんなを笑顔にしたい。
その気持ちしかなかった私は、本気で芸能人になりたい子には見えなかった。
オーディション落選が続いたことで、嫌気がさしていた時。
原宿を歩いていたら声をかけられた。
「すいません、芸能事務所の者ですが…」
初めてスカウトを受けた。
驚いたのと同時に、ついにきた!と心の中で歓喜した。
「もし芸能界にご興味おありでしたら、ご連絡ください」
そう言うと、私に名刺を渡し去っていった。
後日、その事務所を訪ねると…沢山の人が面接に来ていた。
用意されていたエントリー用紙を記入した後、
顔のアップと全身写真を撮影してもらった。
そして面接が始まった。
自己PRをした後、色々質問をされ終始和やかな雰囲気だった。
(よし、これならいける!)
そう思った時だった。
「もし弊社で芸能活動をする場合は、登録料と宣材写真費をお支払いいただきます」
登録料…?宣材写真費…?
芸能事務所にも色々なパターンがあることを、
私はここで始めて知ることになる。
芸能事務所に入る時、
登録料を徴収する場合がある。
そして芸能界でドラマ等へ出演する際には、
芸能人だけのオーディションがあり、
その応募時に使用する宣材写真の費用が発生することがあるそうだ。
私がスカウトされた事務所は、
登録料10万円、宣材写真費用8万円だった。
合計で18万円…
中学生の私には大金に思えた。
そんなお金を母に相談することはできず、
また芸能界への道は閉ざされてしまった。
この事がきっかけで、
私はオーディションへ応募しなくなった。
たとえ合格しても、お金を取られるかもしれない。
その時、また同じような絶望を味わいたくない。
そこからは、普通の中学生活を送るようになり
部活や友達とプリクラやカラオケに行く日々を送った。
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