11月の私
11月の3連休は娘の誕生日なのであった。
今年の誕生日は、以前からずっとおねだりされていた『一人部屋』を作ることになっている。
夫の在宅ルームを兼ねていた寝室を、娘の部屋に。
物置を、夫の在宅ルームに。
娘の部屋として使っていたリビング隣の、窓なし和室を私の部屋兼物置に。
家には、組み立て式のロフトベッドと新しいラグの入った巨大段ボールが玄関を塞ぐように鎮座している。
この連休で方をつけてやる。
シュミレーションは出来ていた。朝一、まず夫のクローゼットをだな……。
連休初日。
シュミレーションと違ったのは、義両親からの入電。
「娘ちゃんの誕生祝いを渡したいから来れる?」
連休初日、大雨警報発令中である。
実は、娘の誕生日と、義両親の結婚記念日が同じ日なので、11月中旬に和歌山旅行に行くことになっていた。完全に油断。
旅行は旅行、祝う日は祝うのである。「来れる?」に対する返事は、YESまたはYES、及びYES、迷わず言うよsay YES。
慌ててケーキを買いに行く。ケーキ屋さんの屋根から落ちる雨がもはや滝であった。
ああ、鯉の滝登り的なおめでたさというか、勢いある成長の喜びというか、そんな風に脳内をポジティブ変換してみる試みをしてみたが、まあ、土砂降りとしか思えない。
マックスで左右に振れるワイパーが何の役にも立っていないのを眺めながら、ため息が溢れそうになったが、呼び出された案件は祝い。
娘が「見てー!すっごい速さ!」とワイパーを指差し笑っていて、夫が「何にも見えねぇ!」と身を乗り出していた。確かに何にも見えない、一寸先ホワイトアウト。困難が一周回って面白くなってきたので、車内でギャアギャア賑やかに安全運転してもらいつつ現着。
玄関を開けると、義両親が「すごい雨になっちゃったね、ご苦労様」と私たちを労ってくれた後、「今夜はすき焼きよ」と、先ほどの豪雨を思わせるほど(?)霜の入った牛を見せた。「これだけだと胃がもたれるから赤身もあるよ」と別のパックの牛もチラリ。
さらに、「今年は娘ちゃんのベッドや布団を買うんでしょ?」と現金が、娘にではなく私に手渡された。
……面倒とか思ってごめんなさぁぁぁぁい!!!
まるで先ほどのワイパー並みに高速で頭を下げる私が、心の中にいた。
つい小躍りを披露。「 SUKIYAKI!!」
雨に濡れてとても寒かった。お寿司や刺身だったら嫌だな、などと贅沢なことを考えていた私に、なんたるご褒美。
しかも、牛が二段構えの囲い込み、霜霜霜からの赤、からの豆腐、白滝、ごぼう、さらに霜からの赤、そして卵追加!! 脳内がお年玉付きの正月到来である。
私と娘は小さく体を揺らしながら、その喜びを表現した。
正真正銘、現金な奴らと書いて「とき子家」と読む。
で、案の定、夫は泥酔し帰宅。
連休2日目(誕生日当日)
二日酔い気味の夫の尻を叩きつつ、全クローゼットの中身を大まかに入れ替えていく。
その最中に
「お母さん、誕生日ケーキは作ろうね」と宣う娘。
え!?昨日食べたやんけ!?という私に
「うん、昨日は買ったから、今日は作る」
いや、そうじゃねえだろ!!と言いつつも、年に一度の誕生日当日に胸を高鳴らせている娘に私は心底甘い。
「スポンジは既製品でいいよね!?」
というわけで、電動泡立て機を片手にドームケーキを娘と30分ほどで仕上げる。
次に、その手を電動工具に持ちかえ、ロフトベッド組み立てに入る。謎の無双感である。
ちなみに、電動工具は自己肯定感が高まる道具ベスト3に入るので、落ち込んだりしたらぜひ購入して欲しい。(1と2はこれから考える)
私は黙々とした作業が好きなので、家族はこういう時、全面的に私主体で動いてくれる。
まずパーツを全て並べてから、親方よろしく「そっち持ってきて、5番と7番繋ぐよ!」
「Fのネジ4つ用意しといてー」などと指示を出す。
夫と娘は、なぜか嬉しそうに私の指示を待ちながら「はいよ!」と動いてくれるので、イラつくことなくスムーズに完成。それでも2時間弱はかかかった。
次に各々の部屋を完成させていくのだが、和室のおもちゃの量が想像以上。
さらに思い出の品々が行く手を阻む。
ゴミ袋を何枚用意しても入りきらない不用品たち。
引っ越して3年しか経っていないのに何故。
ここからリサイクルショプで売るもの、メルカリに出せそうなものを選別。脳内の疲労度が一気に溜まっていく。
買うよりも手放すエネルギーのほうが消耗するとわかっているのに、なぜ人はモノを増やしてしまうのであろうか。
程なくして夜を迎えたので、作業を諦め、ピザを発注。
スキヤキの翌日がピザ、そして2日連続ケーキを食らうという、私の体内も危機的状況にありそうだった。
娘は、二日連続の祝いの席に浮かれ切っている。
しかも、今日は新しいベッドが完成しているのだ、義両親からの祝い金も使ってかわいいシーツも用意した。
しかしそれは、母にとって別れを意味している。
それまで、シングル布団を2枚並べ、家族3人一緒に寝ていた。
この12年間ずっとだ。
寝返りを打つ度に体のどこかが温かかった。
時々、年に数回、一緒に寝ない日も「今日は広々〜!」と言いつつも何故か布団の隅っこで寝る癖がついていた。
今日からひとり。
これはもう、親離れではなく、子離れの試練である。
「全然寂しくない?」と問う私に、満面の笑顔で「全然!」と答える娘。
いや、寂しがれや。
連休3日目
爆睡のちの目覚め。
体も頭も非常に疲れていたので、3秒で寝てた。私の切なさどこいった。
そして、家の中は、まだまだ引越し中のごとき荒れようである。
夫と娘は、早々に自分の部屋を完成させて浮かれているが、こちとら物置も移動させているのだ。同時進行でメルカリ出品もしている。
後から出品しよう、などと言っていたら、間違いなく面倒になるので、売ると決めた瞬間から撮影に入らなければならない。これが私の鉄則。ツライ。
「これは…何ゴミなの…?」とか「これってまだ使うの!?」と俄かにキレ出している私を見て、昼ごはんと夜ご飯の用意がされた。ありがとう。
連休終了とともに部屋が片付いたかと問われたらとんでもなかった。誰やシュミレーションは出来てるとか言った奴。
思い出のアルバムに振り回され、小学校の図工作品に行手を阻まれ、細々としたものを売りに行ったり買いに行ったり、ゴミの日まで待ちに待ったりして11月上中はどんどん溶けていった。
パートの合間に、電動工具で押し入れにクローゼット作ったりする作業などで、自己肯定感爆上げ祭りなども行ったが、とにかく疲労度は増していた。
ようやく、ゴミの日が全てコンプリートされ、今週の燃えないゴミを出し終えたら終了だ。メルカリも残り1点を除いて全て売れた。
その合間に、岡山と和歌山へ行き、学校の用事をこなしに行き、パート仲間にクリスマスツリーを譲ったりしていた。
ここ最近の忙しい発言はこういったわけでして、とにかく2024のうちに家がスッキリしていくのはとても嬉しい。
次こそは、不要なモノを溜め込まずに生きていきたいと思いつつ、冬に備えて、ベランダ用ミニ温室を物色している今日この頃。
そろそろ、温かい部屋でコーヒー飲みながらゆっくりnote読んだり書いたりしたいという気持ちでございます。