【詩】涙の追いつけない場所



彼の悲しみが疾走していた。

涙は追いつけなかった。


どのパーティでも主役は彼だった。

輪の中の彼はみんなに笑顔を振りまいていた。


彼の悲しみを見た人々は沈黙した。

そして彼の涙はポーズだとみなした。


けれども確かに彼の悲しみは疾走していた。

ついて来れる人は誰もいなかった。


彼は笑いながら地獄に落ちていた。

涙は彼を一時的に解放するに過ぎなかった。


涙はとめどもなく流れ、いつしか彼は息絶えていた。



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