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【詩】三が滅びゆく




「三」は滅んだ。

奇数であり続けることを拒否した。

偶数を目指す過程で消滅した。


「三」は非偶数となったに過ぎなかった。

さらなる願望を成就することはできなかった。


「三」は「二」に対抗する意識をもっていた。

「二」が無限に分け与えられる力を持つと思っていた。

自分は奇数の矛盾を抱えていると感じていた。

偶数を目指したのはそのためだった。

彼はたしかに「二」と対立するものだった。

結局「二」と同じものにはなれなかった。


彼はあるいは「六」にはなれたかもしれない。

倍数である「六」は彼の興味を惹かなかった。

あくまで「二」を目指した彼は偶数になることに失敗した。


彼が三である自分を切り離そうとした瞬間、彼は形を失い空虚と化した。


「三」はあくまで「三」でありそれ以上でもそれ以下でもなかった。

彼がこの事実を受け入れることができていたら、滅びることはなかっただろう。




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