【詩】北風と歯車
新しい季節は北風とともに消えていった。
あまりにも若すぎた時代は去った。
切れない糸で結ばれていると感じていた。
気づいたらほどけて寒風に消えていた。
コーヒーカップから滑り落ちた、
その小さな指はもう僕のものではない。
砂の上に残った細い足跡は、
波にさらわれてゆっくりと消えていった。
赤い糸は幻想だったと知ったとき、
神様のいたずらを思った。
すれ違ったまま重ならない歯車。
僕を打ち砕いたのはその一つに過ぎなかった。
桜の季節がやってきた。
舞い散る花びらの中で、笑い合った記憶が胸をよぎる。
暖かい風に吹かれながら僕は歩き出す、誰もいない方角へと。