【詩】指輪



黒い服を着た人が集まっていた。

泣いているのは私ひとりだった。


式が終わり、冷たい風が吹き抜けた。

人々はみな陽気な笑みを浮かべていた。

私は自分の足元ばかりみつめていた。


みんなは、知らない。

彼がいかに立派に生きて、いかに立派に死んだかを。


指輪を交換した私たちの未来は明るいはずだった。


彼は車に轢かれそうな女の子を助けようとした。

彼はかつて存在した誰よりも立派な人だった。


私には薬指の指輪だけが残された。


この指輪だけはいつまでも外すことはないだろう。


いいなと思ったら応援しよう!