【詩】滝
僕は目の前を悠然と流れる滝を見て、美しいと思った。
彼は時と場所の制約を離れた美しいものは存在しないと言った。
それでも、どこかにあるはずだ。
僕らの比較を絶した、絶対的に美しいものが。
目の前の神々しい流れがそれを証明しているように思えた。
下山すると、彼に会った。
彼は「この滝も、100年後には陳腐なものとなる」と言った。
そのときの彼の鋭い瞳は何かを語っていた。
僕はそれを見逃さなかった。
彼の瞳の奥には、確かに絶対的に美しい何ものかが映し出されていた。
僕たちはそれに名前をつけることができていないだけなのだった。
名前をつけたとたんに、それはすでに美しさではなくなっている。
それでも、美しさは確かに彼の瞳の中にあった。