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エッセイ| 年末年始こぼれ話 漱石ぞな、もし


有名な夏目漱石の小説『坊っちゃん』。ちょっと読み込み感のある表紙ですいません。今回はこれにまつわる話。


こちらは、現在入院中の医療施設での12月31日から1月2日にかけての食事メニューです。年末年始は特に豪華にしてくれます。

 
 今日は非常に他愛もない話なのですが、文学つながりで、してもいいかな、と思ったので書きます。 
 上に2つの画像をアップしました。1つは、夏目漱石の小説『坊っちゃん』。もう1つは年末年始の病院での献立表です。まず献立の話をしますと、病院にいるので、もちろんいつもは質素なメニューなのですが、季節の行事ごとに嬉しい食事を出してくれます。年末年始ともなると、ご覧のように毎日毎食が楽しみなメニューとなります。 
 今回の話。ご馳走は大みそかの年越しそばから始まりました。期待にそむくことなく、衣がパリパリとした非常に美味なえび天2尾が入っていました。
 しかし、ふだん質素な食事をしている身には、これすらお腹にもたれてしまいました。でもこれから豪華お正月メニューは続きます。たかが3日続く程度のこと、なんのこれしき、と、その後も美味しく食事を頂いていました。
 おかげさまで無事1月2日夕食まで完走しました。2日の晩は菜めしです。これが非常にあっさりして塩味も効いていて食べやすく、締めくくりにぴったりでした。
 ここで思い出したのが、夏目漱石『坊っちゃん』の中のエピソードでした。坊っちゃんは東京育ちで江戸っ子気質、曲がったことが大嫌いな真っ直ぐな性分です。物理学校(現在の東京理科大学)を出て、数学教師となります。初めての赴任先は四国・松山の旧制中学校でした。赴任先では生徒の手荒い歓迎(いたずら)に、手を焼きます。方言にも、田舎のやり方にもなかなかなじめません。校長や教頭のことも気に入りません。
 そんな中で、宿直の当番が回ってきました。宿直部屋は生徒たちの寄宿舎の西の外れにあります。そして、布団へ入ろうとしたときに事件が起こります。なんと中にバッタが5〜60匹入っていたのです。これには坊っちゃんも怒り心頭、寄宿生を呼び出すことになりました。

以下、引用します。

 おれは早速寄宿生を三人ばかり総代に呼び出した。すると六人出て来た。六人だろうが十人だろうが構うものか。寝巻のまま腕まくりをして談判を始めた。
「なんでバッタなんか、おれの床の中へ入れた」
「バッタた何ぞな」と真先の一人がいった。やに落ち付いていやがる。この学校じゃ校長ばかりじゃない、生徒まで曲りくねった言葉を使うんだろう。(略)
「バッタたこれだ、大きなずう体をして、バッタを知らないた、何の事だ」と云うと、一番左の方に居た顔の丸い奴が「そりゃ、イナゴぞな、もし」と生意気におれをり込めた。「べらぼうめ、イナゴもバッタも同じもんだ。第一先生を捕まえてなもし﹅﹅﹅た何だ。菜飯なめし田楽でんがくの時より外に食うもんじゃない」とあべこべに遣り込めてやったら「なもしと菜飯は違うぞな、もし」と云った。いつまで行ってもなもし﹅﹅﹅を使う奴だ。

以上、引用終わり。

 この箇所を思い出してしまい、私は菜めしを食べながら笑いが止まりませんでした。ここは完全に自分の笑いのツボに入ってしまいました。菜めしは本州ではポピュラーな料理のようですが、北海道ではあまりなじみがありません。ですから、一層この箇所が頭に残っていたのかも知れません。
 しかしギャグとしても一流、現代でもこれはコントとして通用するのではないのでしょうか。他にも笑えるポイントが多々あります。漱石が現代に生きていたら、作家といわず、いいお笑い芸人にもなれたことと思います。


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