もし打ち切りになっていなかったら、「機動戦士ガンダム」37話から52話はどんな展開になったか?
全52話の予定が打ち切りになり、43話で完結した「機動戦士ガンダム」
「機動戦士ガンダム」は、1979年4月7日から1980年1月26日にかけて、全43話がテレビ放映されました。
しかし、当初全52話だったところ、視聴率の不振や玩具の売り上げの伸び悩みが原因で打ち切りとなり、43話に短縮されることになったのは、よく知られているところです。
他にも、打ち切りになったアニメ番組はありますが、「機動戦士ガンダム」の場合は、突然中途で話が終わるのではなく、きちんと描くべきテーマを描き切って最終回を迎えました。それはすばらしい手腕だったと思います。
打ち切りが発表されたときの、製作陣のコメント
「機動戦士ガンダム」の打ち切りを発表した記事が、1980年2月号の「アニメージュ」に掲載されています。2月号ですが、発売は1月10日と推測されます。余談ですが、雑誌の発行日は、実際の発売日より1ヶ月程度遅い年月日が奥付に表記されています。慣習なのでしょうが、資料として、記事の発表年月を知りたいときに困るということがあります。
1980年1月10日というと、第40話「エルメスのララァ」が放映された後ということになります。残り3話しかないわけです。当時テレビにかじりついていたファンは、どれほどのショックを受けたでしょうか。
打ち切り決定を受けて掲載された製作陣のコメントのうち、ほとんど触れられることのない広告代理店、テレビ局、玩具メーカーのコメントと、総監督のコメントを、ここでご紹介しましょう。
富野監督のいう「この作品をとおして知りえた人々のすべて(キャラクターをふくめて)」は、このときから今に至るまで、増え広がりつづけています。そう思うと、コメントの一つひとつに感慨深いものを感じますね。
打ち切られなかった場合、どういう展開になったのか?
しかし一方で、気になることもあります。もし打ち切られなかった場合、全52話でならどういうストーリーが展開されたのだろうか、ということです。
それがわかる資料が、日本サンライズ発行の「機動戦士ガンダム 記録全集(5)」に掲載されています。トミノメモと呼ばれる、富野監督が書いた52話までのシノプシスがあり、37話以降52話までは本編とかなり異なっている、というのです。
ここでは、その内容を各話の流れやポイントがわかる範囲で箇条書きにまとめて、ご紹介します。
なお、シノプシスであるため本編には登場しないメカや人物名があることを、ご承知おきください。
第37話「バロムの罠」
キシリア少将は、マ・クベとバロムに連邦軍の追撃部隊の殲滅を命じる。
ホワイトベースはマ・クベ隊と接触
アムロは、モビルスーツ「ドワッジ」数機で強襲をかけてきたバロムと交戦
バロムはシャアとの約束を思い出し、テキサスコロニーに逃げ込む
その頃、シャアはララァとともにテキサスコロニーに潜入していた
第38話「テキサスの攻防」
テキサスコロニーで、シャアはララァに戦いを教えようとしていた
アムロはテキサスコロニーで遊牧民の少年カスバル・ベイリーと出会う。彼はジオンに憎悪を燃やす17歳の少年で、ザンジバルが入港したことをアムロに教える
シャアはマ・クベに、テキサスコロニーのガンダムを討つべきと進言。自らもモビルスーツ「ギャン」で出撃
マ・クベも専用モビルスーツ「ハクジ」で出撃。ガンダム対ハクジの戦いをシャアはララァに見せる。マ・クベ敗北
少年カスバルはアムロに連れて行ってくれと頼み、アムロの部下になる
ララァはシャアに心酔する
第39話「シャアとセイラ」
キシリアは、シャアに指揮官を失ったマ・クベ隊を統合させる
ホワイトベースはテキサスコロニーに入り、ガンダムとアムロの救出に向かう
アムロはシャアのモビルスーツ「ギャン」を破壊
逃れるシャアはアムロ救出隊のセイラと出会う
シャアとセイラの会話の中で、セイラは「本当のシャア・アズナブルという人を知っていた」という。それに対し、シャアは「彼も暗殺されたらしいから、私が名前をもらった」と明かす
シャアのザンジバルはテキサスコロニーを脱出。セイラはシャアの金塊を受け取る。ホワイトベースを降りるか逡巡するが、アムロに声をかけられ船に乗る
第40話「シャリア・ブル 激進」
ギレン・ザビは木星から帰ってきたシャリア・ブルと謁見し、シャアのところへ行かせる
シャリア・ブルに「ゲルググ」が与えられる。このゲルググには予知能力を察知するシステムが搭載されている
沈みがちなセイラにアムロは初めて興味を持つ。セイラもアムロを対等な相手としてみるようになる
シャリア・ブルはゲルググで発進し、ワッケインのマゼランを沈める
アムロはシャリア・ブルと対戦する中で、錯乱。予知能力に感応の目覚めをみる。しかし、意志を消すという戦術でシャリア・ブルを倒した
ララァはその戦いをみて、アムロは敵にしてはならない人、とシャアに告げる
第41話「ルナツー防戦」
ギレンはキシリアの基地グラナダへ降りる
未来を洞察する力を生む進歩が連邦から始まるのは許せないギレンは、よりすぐりのニュータイプ部隊を編成しガンダムに差し向ける決意をする
キシリアはグワジン、空母ドロス、チベなどで艦隊を編成して出撃
勇将ダルが山越えハンマーという恐るべき武器を有したモビルスーツ「ガッシャ」で出撃。ホワイトベースをキャッチする
セイラはガンタンクで出撃するが、ガッシャに狙われる
アムロはセイラの危機を予知能力で察知し、セイラを救ってガッシャを殲滅
ルナツーから連邦軍艦隊が発進しジオンと戦う。ホワイトベースはドロスを殲滅
アムロはセイラの病室を見舞う。「セイラさん、あなたもニュータイプなのですか?」
第42話「グラナダへの道(シャアの敗北)」
ホワイトベースはルナツーで補給を受けるが、アムロはララァに呼ばれてGスカイで発進、エルメスをみて撤退する
しかしシャアのモビルスーツ「キケロガ」に襲われる。ララァに誘い出されたのだ
しかし土壇場でアムロに逃げられる
モスク・ハン博士登場。「ジオンのソフィアという男の理論を君の父上が流してくれてな」
アムロ父は生きている?!「フラナガン機関に殺された」
モスクの技術でガンダムはシャアに勝利。だがシャアはエルメスに救出される
セイラはシャアが救出されたのを残念に思う
第43話「グラナダ攻略」
グラナダにたどりついたシャア。ホワイトベースがグラナダ攻略を開始
シャアはキシリアと宇宙用アッザムに搭乗して出撃。連邦軍のジムをたくさん撃墜する
ハヤトがアッザムの弱点を発見
キシリアはシャアに言う「恨みをはなすなら、剣の一太刀とも、私にくわえたらどうか?」シャアがジオンの忘れ形見、キャスバルだと耳抜いていたキシリア。私はお前さえ使ってギレンを倒そうと考えていたのだが
「お言葉に甘えさせてもらおうか」シャアはキシリアを刺殺
再びララァに救出され、シャアはグラナダを脱出
グラナダ陥落にギレンは歯軋り。デギンが和平交渉を持ち出す
第44話「エルメスのララァ」
グラナダを占領した連邦軍を恐怖に陥れる、ララァのエルメスによる遠隔攻撃
アムロはララァにひかれて出撃する
セイラとミライは、そのアムロの行動が連邦の危機を示していると悟り、ミライはブライトにアムロの勝手な行動を認めさせる
ガンダムはエルメスの遠隔攻撃を受け、ピンチに
しかしセイラの死を顧みない防戦の中、ガンダムは立ち、エルメス本体が月面の地中にあることを悟る
アムロはセイラを救出し、地中にひそむエルメスへと向かう
第45話「遭遇!ララァ」
アムロはGブルの装甲を通して、ララァがアムロにターゲットを絞っているのを感じる
シャアはギレンと会見し、ララァを追う。半エスパー(ニュータイプになりかけ?)でシャリア・ブルの部下だった少年パッカデリアを従えて、モビルスーツ「ガルバルディ」で出撃
ガンダムとエルメスは、地中深くで対決。そこで二人の意識が合流し、二人の間に調和を生む
二人の戦いこそ人の歴史、一つの時を超えた時、人はまた新たな人になる
そこへパッカデリアが侵入、「共に死ね、ジオンにとってララァは裏切りとなる」。シャアはその叫びを聞き、さもありなんと思う
しかし、パッカデリアの「ガリバルディ」はカイとハヤトに撃墜される
シャアは自らの「ガリバルディ」を操り、ララァにいう「私はガンダムを討ちたい」
ララァは絶望する「あの少年は敵ではない、仲間なのに」しかしシャアの要求をはねつけることはできない
しかしシャアはアムロに敵わず、撃たれそうになった瞬間ララァはアムロに憎悪を持ち、シャアを庇ってアムロに撃たれる
第46話「デギンの降伏」
病床のセイラにシャアから花束が届く
傷ついて帰国したシャアはギレンと会い、ガンダムのパイロットの危険性を訴える
ギレンから、シャリア・ブルの部隊に残っていた人材とゲルググ、ジオングを与えられる
ホワイトベースは、ジオン制空権内の偵察命令を受ける。そこでデギン公王の船と接触。デギン公王がホワイトベースに乗り込んで、ブライトらと会う。デギンの秘書クスコ・アルはブライトが真の意味で惚れた女性だった
会談後、デギンはセイラと個人面談。ジオン・ダイクンが、増えすぎた人類をこれ以上放置してはいけないと、選ばれた人々による地球連邦の管理を考えつく。デギンはそれに賛成したが、反対派もあらわれ、ダイクン一派を追放した
セイラは「奴隷制度を復活し、ザビ家独裁を目的となさったからです。父のやり方とは違います」
デギンの和平交渉をよしとしないギレンは、デギンを襲撃
デギンは「もやはこれまで。恨みがあるならアルテイシア、私を討て」、しかしセイラは、兄のキャスバルとは違う、という
デギンは死ぬ。ブライトはクスコ・アルを救出する
第47話「ジオン最終兵器を探れ」
アムロは、ブライトに「クスコ・アルは危険だ、スパイだと思う」と忠告
ホワイトベースは、ジオンの中に不審な宇宙船の動きをキャッチし偵察
38バンチの住民が強制移住させられていた。アムロらは38バンチに侵入するが、そこで新鋭モビルスーツ「ガラバ」に追われる
そのパイロットを捕らえ、アムロはソーラレイ作戦のことを聞き出す
シャアは新モビルスーツ「ガラバ」を受領
第48話「ジュピター船団を撃つ」
シャアは、ギレンにゴラという人物をゲルググのパイロットに推挙
しかしギレンは否定的だった。シャアはギレンを俗物と思い、ギレンも殺そうと決意する
しかしギレンはいつでも倒せる。その前にガンダムを倒し、アムロに対して快哉を叫びたい。「俗物は俺かもしれん」
ヘリウム3を運ぶ船団が木星から帰国する。ホワイトベースはマゼラン2隻とともに、この船団に襲いかかる。クスコ・アルはこれをジオンに知らせるため脱出。ブライトが自ら追いかけ、ミライが艦長代理を務める
ブライトはクスコを射殺する
ゲルググで出てきたゴラに、アムロはララァの再来を感じる
第49話「ソーラ・レイ パート1」
ゴラは脱出。ギレンの前で、シャアがキャスバルであることをバラす
しかしギレンはそれを気に留めず、シャアに「ガラバ」を、ゴラに「ジオング」を与える
連邦軍が月の裏側に出てきたところで、ソーラ・レイが発動。連邦軍の大半が殲滅される
ホワイトベースと補給艦が取り残される
ギレンは狂喜乱舞。シャアとゴラに残存勢力を叩くよう命じる
アムロはゴラのジオングと戦い勝利する。しかしそこには憎悪しかないことを感じる
第50話「ソーラ・レイ パート2」
レビル将軍が宇宙に復帰。連邦軍が殲滅された謎を追い、アムロは38バンチへ向かう。そこにシャアが待っており、戦いが始まる
「私には、ニュータイプの素質があっても俗物ゆえにその能力が発揮されんのだ。これで、奴に勝てるのか?」
しかしアムロに対抗できるシャアはニュータイプといえる。二人は共感する。そしてソーラ・レイの第2射が発射されたのを目撃する
レビル将軍麾下の戦力は一瞬にして消失
やりすぎだ!とシャアが思った隙に、アムロにやられる。だがシャアは生き残る
アムロらは、38バンチを破壊
第51話「ジオン殲滅 パート1」
瀕死のシャアはジオンの首都に帰る
シャアはギレンに、敵であるアムロに興味がある、あなたを討つのはアムロだ、という
連邦軍の数隻の艦隊が、ジオンの中心に向かう。アムロは、国家の指揮者たる者を討たねば戦いは終わらないと悟っている
ギレンもグワジンで出撃。戦いは要塞都市ア・バオア・クーへと移る
ア・バオア・クーへたどりついたガンダム、アムロは「敵は一人だ、ギレンだけなんだ」と叫びつづける
アムロの部下になっていたカスバル・ベイリーはここで死に、アムロは上司としての責任を感じる
第52話「ジオン殲滅 パート2」
ギレンはア・バオア・クーに逃げ込む。シャアは重態をおしてア・バオア・クーへ向かう。
ホワイトベースは大破し、ゲリラ戦にまきこまれる
アムロはギレン親衛隊と拳銃で戦う
真の敵はギレンだ、という思いはアムロ一人のものではなかった
シャアも一緒にはしり、ブライトが叫ぶ「ギレンはここだ」
セイラも、ミライも走る
セイラ、ミライ、アムロはララァの声を聞くが、ギレン親衛隊はセイラ、ミライ、シャアを次々倒す
アムロはギレン・ザビと対峙。しかしギレンは、ア・バオア・クーは1分30秒後に自爆するという
アムロはギレンを撃つが、親衛隊に討たれてて倒れる
「ギレン・ザビは死んだのだ。僕を殺して何になる。逃げろ、全力を尽くして逃げろ、ア・バオア・クーは爆発する」
そこにララァの声が聞こえてくる。「アムロ、行こうよ、新しい時代が開けるんだから」
破壊されたガンダムにたどりつくアムロ。「眼を開いてごらん。意識を開いてごらんよ。みんながみえるよ」
アムロは仲間たちに呼びかけて助ける
セイラは、目の前にシャア、いやキャスバル兄さんがいいるが、シャアは、「私は無理だ、前だけ行け、生き延びろ」という。最後に「アルテイシア、愛している」と言い残し、セイラ、いや、アルテイシア・ダイクンは走った
最後にガンダムも翔び、全員が脱出。ア・バオア・クーは爆発した
「ララァ、遊ぼうね、明日」アムロは混濁する意識の中で言った
宇宙世紀0080、1月3日、地球連邦政府とジオン共和国の間に和平交渉が成立
本編と、全52話だった場合の相違点は
こうしてみると、全52話だった場合は確かに本編と展開がかなり異なっていることがわかります。着地点は同じであっても、プロセスが異なり、その相違によって、おそらくは視聴し終わったあとの印象は、かなり違ったものになりそうです。
では、違ったものになると思われる要素は何か、ということを考えてみることにします。
(1)打倒ガンダムを目指すギレン
シャアによってキシリアが殺害されたあと、ザビ家として最後に残るのがギレンです。彼は、連邦軍にもアムロというニュータイプがいることをシャアから知らされ、未来を洞察する力を生む進歩が連邦から始まるのは許せないと考えます。そして、シャアのもとにニュータイプ専用機とニュータイプ戦士を次々と送り込み、打倒ガンダムを目指します
(2)アムロは敵ではない、と考えるララァ
ララァはアムロについて、私と同じ力を持った人が敵側にもいる、と感じ、シャアに、アムロを敵にしてはいけないと告げます。しかし、シャアはガンダムをなんとしても倒したい思いが強く、シャアに心酔しているララァは、結局シャアがガンダムを倒す手助けをするため出撃し、死に至ります。本編では、ララァはアムロを「シャアを傷つける悪い人」と思っており、スタンスの違いがあります。
(3)デギン公王がホワイトベースでブライトらと面談
ホワイトベースはジオンの制空圏内に入り、デギンの船と遭遇。和平の必要を感じたデギンはホワイトベースに乗り移り、そこでブライトらと面談します。そのときデギンの秘書としてホワイトベースにやってきたクスコ・アルは、ブライトの思い人だったのです! デギンは個人的にセイラとも話し、もし恨みがあるなら私を殺せと告げますが、セイラは「私は兄とは違う」と、それを断ります。
デギン公王が和平のためホワイトベースに乗り込んでくる、というのは、「小説版機動戦士ガンダム」にあった筋書きです。クスコ・アルも、ララァの後釜という形で小説版に登場します。実現しなかったシノプシスの内容を、小説に盛り込んだということもできるでしょう。
しかし、ここにきてブライトの恋愛話というのはかなり無理があります。ジオンにいたクスコ・アルと、地球出身のブライト。一体どこで出会っていたのだ? もしこの展開になるとしたら、脚本家はかなり困ったことでしょう。
(4)何度も何度も、アムロにやられるシャア
シャアは最後まで踏ん張って戦い続けますが、2回にわたって敗北後ララァに救出され、3回目はララァが彼を庇って死ぬという体たらくです。このことについて、シャアは、ニュータイプの素質があっても俗物ゆえにその能力が発揮されんと自己分析しています。
ザビ家復讐のためギレンを倒したい、だが、ギレンはいつでも倒せる、その前にガンダムを倒したい、と最後まで戦い続けます。結果的に、勝利を遅らせているだけのような気もします。
(5)ブライトがホワイトベースから降りてしまう
デギンの連れてきたクスコ・アルはスパイだと危険視するアムロ。ホワイトベースが、木星から帰ってきた資源輸送船を襲撃すると決まったとき、その危険を知らせるため、クスコ・アルはホワイトベースを脱走します。それを追ってブライトもホワイトベースを降り、最後はミライが艦長代理を務めることになります。ブライトとは、ア・バオア・クーで再会する流れです。
(6)アムロは「倒すべき敵はギレンだ」とみんなに呼びかける
シャアは、倒すべき敵はギレンだ、ということをアムロが感じていると理解しており、アムロがあなたを倒すとギレンに伝えます。そして最終決戦の地となるア・バオア・クーにガンダム、ホワイトベースが乗り込むと、シャア、セイラ、ミライなどみんなが、アムロのその呼びかけに応じてギレンを目掛けて走り出します。ギレン親衛隊と撃ち合いになりますが、最終的にアムロがギレンを撃ちます。しかしその直前、ギレンは、ア・バオア・クーは1分30秒後に自爆する、と宣言。アムロはララァの声を聞き、みんなを脱出へ導くのです。
ラストは解釈が分かれるところです。シャアは力尽きて、脱出できず死んだでしょう。
アムロはガンダムで脱出しますが、「ララァ、遊ぼうね、明日」アムロは混濁する意識の中で言った というところで終わっています。脱出はしたものの、すぐにララァのところへ行ってしまう(=死)のではと思わせるラストです。
全52話の展開には「その後」のアイデアが多く盛り込まれていた
この、全52話のシノプシスを読んで、私が思ったのは、続編で展開される物語の基となったアイデアが多く盛り込まれているな、ということです。
ララァの登場以降、ジオン軍側はどんどんとニュータイプ戦士を送り込んできます。これは「Zガンダム」を思わせる展開です。みんなの力を借りて敵を倒す。これもまた、「Zガンダム」ラストにおいて繰り広げられた展開に似ています。シャアが、ギレンを倒すよりも、何よりもガンダムを倒したいという思いに駆られて戦う展開は、「逆襲のシャア」を思わせます。打ち切りになったからこそ、続く物語が展開されることになった、と思うと、逆に、打ち切りになったことは幸いだった、とも考えられそうです。
実際、どうでしょうか。私の印象では、打ち切りにより43話になった本編の終わり方であったからこそ、「機動戦士ガンダム」は傑作となったように思います。本編でも、アムロは「本当の敵はザビ家の頭領だ」と悟って、その人物(この場合はキシリア)を撃とうとしていました。しかし結果的にそれはシャアに阻まれ、アムロは誰も倒さずに終わっています。「みんなの力で、敵をやっつけた」という終わり方ではない、私たちが見たことのなかったラストが生み出されたのは、43話の制限があったからこそだったと感じました。
そのことについては、「機動戦士ガンダム 全話レビュー」第43話に詳しく書いていますので、よろしければあわせてお読みください。