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2023年、印象に残った本たち

わりと本を読んだ一年だった2023年。

しかし記録用に作成したエクセルの「本リスト」にかなりの確率で入力するのを忘れ、読んだ感と読んだ量がまったく釣り合わないという感じである。なんてこった。

読書にかたよりがあるため、たまに寄り道をして色んな本を手に取ったこの一年。正直、読んでもすぐ忘れちゃったり、そもそも難解すぎて読破できなかったり。決して読書家とは言えない私の読書記録。印象的だった3冊の紹介&感想と、そのほか読んだよかった本、読破できなかった本を。


■子育ての大誤解〔新版〕――重要なのは親じゃない (ハヤカワ文庫NF) 
ジュディス・リッチ・ハリス (著),  石田 理恵 (翻訳) 上・下

親が愛情をかければ良い子が育ち、育て方を間違えれば子どもは道を踏み外すーこの「子育て神話」は、学者たちのずさんで恣意的な学説から生まれたまったくのデタラメだった!双子を対象にした統計データからニューギニアに生きる部族の記録まで多様な調査を総動員して、子どもの性格と将来を決定づける真の要因に迫る。センセーショナルな主張が物議を醸す一方、子育てに励む人々を重圧から解放してきた革命的育児論。

子育てに悩んだときに、親の育て方が子どもの生育にどれだけ影響を及ぼすかが気になって手にした本。子どもって、わりと生まれもった気質というものがあるような気がしていて。だけど世の中は「親の育て方」にこだわるし、なんでもかんでも育て方のせいにされがちな気がしていて。それに、一緒にいる時間が長い母親だけの影響を受けるわけ? 過ごす時間が短い父親に責任はないってこと? って考えるとなんだかワンオペ育児の母親って辛すぎないって思っていたときに読んだのでした。結論この本は、世間が思っている以上に「遺伝」の要素って大きいんだよという説を唱えています。もちろん育ちが関係ないのではなく、「親」(家庭内環境)よりも「学校・友達・部活動」(非共有環境)などの影響が大きく、その子がどういった環境に身を置き、どのようなグループに属しているのかが、子どもの生育に最も影響を及ぼすらしいと。あとは、人は家庭内と家庭の外で性格を使い分けている、というよりも家庭外でもそれぞれの集団に応じて複数性格を用意しているので、家庭内で見るその子の性格とかあり方ってほんの一部しかない。親としては自分の見えている範囲内だけでその子をジャッジしてはいけないなと思ったことも大きかったかな。

■増えるものたちの進化生物学 市橋 伯一(著)

生命と非生命をわけるもの、それは「増える」ことである。増えて遺伝する能力は生物を進化させ、繁栄をもたらし、やがて私たち人間に自由と生きる喜びを与えるとともに尽きることのない不安や迷いを植え付けることとなった。生の悩みから生命の起源と未来を見つける知的間答の書。

人間の悩みとか欲望ってものは、「増える」という生命の本質が引き起こす本能からきているものなんだな、とすごく気持ちが楽になった一冊。そもそも、他人の目が気になったり、人とうまくやろうと気に病んでしまうのも、そうしなければ人間は生き残ることができなかったという歴史があるわけで、そのDNAが現代人に刻まれているだけにすぎないと。自分はなんでこうなんだ、とやるせない悩みを個人の問題として捉えるのではなく、生物の生存戦略として人間がおこなってきた選択が私たちにいかに影響を及ぼしているのか、そういう視点で社会を、自分を見ると、小さなことでくよくよと悩まなくてよいような気がしてくる。

■YMO1978-2043  吉村栄一(著)

【目次】
いままで知られていなかった新事実も満載
■はじめに
■第1部 1978‐1983(全13章)
第1章 「イエロー・マジック・オーケストラ」その誕生の背景にあったもの、変転していく運命/第6章 ワールド・ツアー『FROM TOKIO TO TOKYO』/第7章 YMOの転機となった、世界との連帯をしめすバック・グラウンド・ミュージック「BGM」/第13章 「ビハインド・ザ・マスク」の軌跡/ 他
■第2部 1992‐2021(全15章)
第1章 『テクノドン』の目覚め/第3章 20世紀の終わりに~奇貨としてのスケッチ・ショウとHAS/第5章 実質的な再々結成。「ライディーン79/07」/第15章(終章) 2020年、パンデミックの社会で 他
■おわりに
■YMO作品リスト ■YMO年譜 ■引用発言出典一覧

今年は今さらながらYMOにハマった一年だった。80年代のYMOにまつわる雑誌などをヤフオクで落札したりして。かっこいいものには知性が宿ってる。センスとか才能って確かにあるんだけど、それ以上にものづくりの下地となる膨大な知識があって、アイデアの着想があったり。審美眼を持つって、こういう人たちのことを言うんだろうなとか。ものづくりの真髄を感じられた一冊だった。

<2023年、読んでよかった本>
僕の狂ったフェミ彼女 ミン・ジヒョン (著), 加藤 慧 (翻訳) イーストプレス社
・ケチる貴方 石田 夏穂(著) 講談社
・がらんどう 大谷 朝子 (著) 集英社
・わたしに無害なひと チェ・ウニョン(著)  古川 綾子 (翻訳) 亜紀書房
・女子マンガに答えがある トミヤマ ユキコ (著) 中央公論新社
・ようこそ、ヒュナム洞書店へ ファン・ボルム (著), 牧野 美加 (翻訳) 集英社
・まだまだという言葉 クォン・ヨソン (著), 斎藤真理子 (翻訳) 河出書房新社
・進化論はいかに進化したか 更科 功 (著) 新潮社
・隣人X パリュス あや子 (著) 講談社
・自転しながら公転する 山本 文緒 (著) 新潮社
・50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと 和田靜香 (著) 左右社
・未来散歩練習 パク・ソルメ (著), 斎藤 真理子 (翻訳) 白水社
・実は、内向的な人間です ナム・インスク (著), カン・バンファ (翻訳) 創元社
・トゥデイズ 長嶋 有 (著) 講談社
・新しい女性の創造 ベティ・フリーダン (著) 三浦 冨美子  (翻訳) 大和書房
・小さな心の同窓会 ユン・イヒョン (著), 古川 綾子 (翻訳) 亜紀書房
・この世界からは出ていくけれど キム・チョヨプ (著), カン・バンファ (翻訳), ユン・ジヨン (翻訳) 早川書房
・ねこしき 哀しくてもおなかは空くし、明日はちゃんとやってくる。
猫沢 エミ (著)
・永遠年軽 温 又柔 (著) 講談社
・魯肉飯のさえずり 温 又柔 (著) 中央公論新社
・限界から始める往復書簡 上野 千鶴子 (著), 鈴木 涼美 (著) 幻冬舎
・上野先生、フェミニズムにうちてゼロから教えてください 上野 千鶴子 (著), 田房 永子 (著, その他) 大和書房
・細野晴臣 分福茶釜
  細野 晴臣 (著), 鈴木 惣一朗=聞き手 (その他) 平凡社
・この世の喜びよ 井戸川 射子 (著) 講談社
などなど

背伸びをして図書館で難解な本をいくつか借りたけど、ほぼ記憶にないのです。リストにも追加していないくて。読んだだろうけれど、もう忘れているのです。ぐるぐるぐる同じところを行ったり来たりして、これは私の英語学習のさまであり、人生にも似ています。

手元にはかなりの数の積読があり、読みたい本リストにも多くのタイトルが並んでいます。集中して本を読む時期とそうじゃない時期のバイオリズムが激しめなので、来年も「読んだ感と読んだ量がまったく釣り合わない」一年になることでしょう。それでもずいぶんと本に救われた一年。(ちなみに、心が病んだときはドラマ『カルテット』を観るのが私の習慣です。どうでもいいけど……)

来年もたくさん読んで、そしていつか、いつかね、私にとっての『カルテット』のような文章を誰かに届けたいというのが、夢なのですね。

年末年始は子どもと2人で旅に出るので、たまに読書しながら、とにかく風邪をひかず、1年の終わりと始まりを健康に過ごしたいと思います。






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