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日記(読みたい文章、面白い文章)

気づいたら2024年もすでに2月を過ぎていて、年末年始、娘と関西旅行に出かけたこともなんだか幻みたいになっている。

年始からはなぜか簿記の勉強したり、決算書のわかりやすい読み方とかいう本を借りたりして、新しい1年の始まりにやりがちな、「今年こそはこれまでとは違うことをやってみるんだ」という、意気込みだけが前のめりなやつになっている。

図書館で予約していた本がどんどん届いて、これまた気分が散漫になりながら、それなのに図書館に行くと、つい文芸誌もろもろを借りてしまう。

それでも「群像」の生方美久さんの連載が面白くって、わ〜っと読んじゃうし、まだ一作も読めていないけどずっと読みたい作家、高瀬隼子さんの創作「新しい恋愛」を読んで、生方美久さん脚本の『いちばんすきな花』をなぜか思い出し、このひと匙の自己肯定感が心地いいなと思う。

2023年9月号の「文學界」の中には、高瀬隼子さんが文学フリマでおもしろいエッセイを見つけて紹介するという企画があって、その中の文章に胸打たれる。生活綴方出版部による『文集・バイト』。十人の執筆者がぞれぞれのアルバイト経験について書いているもので、高瀬さんが印象的だったという、とりあえずビールさんという方の文章が紹介されていて、思わずうなった。

マッチングアプリで会う人からの「何のバイトしてるの?」という問いに「カフェのバイト」とすんなり答えられるときが一番安堵する瞬間だった。それは、家族仲が良いことを無駄にアピールしたり、知ってる子の話や知ってる子からきいた知らない子の話の主語を「友達が」に置き換えたりするときとまったく同じで、「円満で正常な女の子」のカードを揃えることでなにかの勝負に勝てる気がしていた。

いや、わかりすぎる。カフェでバイトはしたことないけど、安堵の所在に関してはわかるとしかいいようがなく、絶妙すぎて思わず笑ってしまった。


文芸誌は、普段自分が読むことのない書き手との巡り合いがあったりして、私はそれが楽しい。最近は井戸川射子 さんの文章が好きだなと思っていて、それは個人的に、韓国の作家ハン・ガンさんの文章が好き、ともつながっている気がする。川上未映子が好き、とも遠からずも近からず。

川上未映子さんが「小説を書く」行為について「書きぶり」の大切さをインタビューで話していて、いい文章に巡り合うたび、そうだよなと思う。

なんというか、文章力って、合うとか合わないとか、好き嫌いを超えたもので、固有の迫力と励ましを感じさせる体験そのものなんじゃないか。どんなに説教くさくても、どんなにオピニオンにまみれていても、それを読ませる文体が発揮されていればいいんだと思う。いい文章ってそういう感じがする。どんなに立派で親切でも、退屈じゃしょうがないもんね。

個人的に、一文が短く、リズムのいい文章よりも、つらつらつら〜と続くような文章が好きなんだと最近自覚したんだけど、読みづらいゆえ、一定以上の文章力がいるし、読ませる文体か否かは大きい気がする。

とまあ、読みたい文章は山ほどあるのに、私の読書タイムは寝る前の30分程度なので、色々と追いつかず、最近は風呂場に持ち込み、濡らさないように細心の注意を払っているのに、突然やってきた娘にしぶきをかけられ、本気の目で怒った自分を反省したい。





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