東京ドーム最終戦に挨拶がなくて、「ダサい」と思ってしまった【8/14 対ジャイアンツ戦●】
去年は行われた試合後の挨拶が、今年はなかった。
日本のプロ野球には、その球場での最終戦を終えたビジターチームがファンに挨拶をする慣習がある。タイガースなら今回の東京ドーム、神宮球場、横浜スタジアム……と各地での最終戦が終わったタイミングで球場に駆けつけたファンに挨拶する。
もちろんお互いの順位によってはCSで対決する可能性があるから本当の終わりになるとは限らない。
だが球場側も「タイガースは本日が東京ドームでの最終戦でした。今シーズンもありがとうございました」とアナウンスをするのが一般的で、球場は1シーズン競い合った互いの健闘を称える雰囲気になる。
残り試合を数えるより、「(球場名)でのラストゲーム」と言われたほうが、シーズンの終わりが近づいていることを実感する。
タイガースはこの日の試合をもって今シーズンの東京ドームでの公式戦を終えた。東京ドームでの今季最終戦は、ジャイアンツ・戸郷翔征の完封勝ちで幕を閉じた。3塁を踏むことすら許さない、完璧な投球だった。
せっかくなら勝って挨拶するところを見たかったけど、こればかりは仕方ない。
テレビで中継映像を見ながら選手や監督・コーチが出てくるのを待つ。だがいつまで経っても出てこない。タイガースの人たちが出てくるところの映像に切り替わらない。しばらくして、ジャイアンツのヒーローインタビューが始まってしまった。中継映像にタイガースの人たちが挨拶をするシーンの映像は最後まで流れなかった。
一般のファンが現地のベンチを撮影した動画がYouTubeにアップされていたので、中継が終わった後に見てみた。
大山悠輔が内野ゴロに倒れて試合が終わった後、真っ先に岡田彰布監督が席を立って通路に消えていく。今岡真訪コーチはベンチの前に出てきた。選手たちも荷物を少しだけまとめてから、ベンチの1カ所に集まっている。おそらく挨拶をするためだろう。
だが肝心の監督はもうベンチにいない。監督がいないから、先導する人もいない。ベンチに残っている人たちも戸惑っている。
しばらくして、選手たちが少しずつ引き上げていく。今岡コーチはひとりで一礼をして、ベンチを後にした。選手も原口文仁や大山らが各自で一礼をしたが、結局そろって挨拶をすることはなかった。
この日、僕は初めてタイガースのことを「ダサいな」と思ってしまった。
どれだけエラーや三振を重ねても、選手のことをダサいと思ったことはない。
極限の重圧と隣り合わせの状況で普段通りにプレーするのがどれだけ難しいか、僕には想像もつかない。失敗してもだからカッコ悪いなんて思わない。
試合の勝敗も対戦相手がいることだから、こちらの思い通りになるわけじゃない。そのことは分かっている。だから負けても「悔しいな」「惜しかった」「次は勝てると良いな」くらいしか思わない。
甲子園で戸郷にノーヒットノーランされたときも悔しいとしか思わなかった。
横浜スタジアムで7点差を逆転されても「負けて悔しいな」という感想しか浮かばなかった。試合に負けてカッコ悪いな、なんて思ったことはない。
けれどこの日、僕は「今日のタイガース、何かかっこ悪いな」と思ってしまった。
同じ投手に良いようにやられて、悔しいのは分かる。
9連戦のラストにこんな試合になって腹立たしい気持ちなのは理解している。
でも負けて悔しいのはファンも一緒だ。今年の東京ドームの思い出がこの試合で終わってしまうのはすごく悔しい。
だからせめて、最後にレフトスタンドの前に顔を見せてほしかった。別にニコニコして出てきてファンサービスしてほしいなんて言わない。悔しさを全面に出してもらって構わない。何なら一緒に悔しがりたい。
「こんな試合だったけれど、最後にみんなの表情が見られてよかった」
「残り試合まだあるから応援するよ」
僕はテレビ越しに見ていたけれど、もし球場にいたらそんな気持ちを拍手や声で伝えていたと思う。
敗戦濃厚でも、レフトスタンドにいるタイガースファンは最後まで声を出していた。先頭の中野拓夢がヒットで出塁したときに歓声が湧いて、みんな変わらず応援しているなと感じた。僕も昔はよく外野席に通っていたから分かる。負けていてもヒットが出たら嬉しいし、最後の最後までかっこいいところを見せてくれると信じて応援するんだ。
今日は1年に1度、その気持ちに応える日じゃなかったんかよ。
いっときの感情を優先して、どうして我先にベンチの奥に引き上げちゃってるんだよ。
負けてもかっこいいところを見せてくれるタイガースでいてほしい。
全試合勝つのは不可能だから、せめてグッドルーザーでいてほしい。
野球をする子どもたちの良き手本であってほしい。
そう思うのは、贅沢な願いなのだろうか。