優勝争いの大一番で、僕はキャッチャーの坂本誠志郎ばかりを見ていた。
2021年のタイガースはペナントレース終盤まで激しい優勝争いを繰り広げていた。開幕直後から好調を維持してスタートダッシュに成功したタイガースと、夏場以降に勝ち星を積み重ねてきた東京ヤクルトスワローズの一騎打ち。残り試合も少なくなってきた10月はピリピリした試合が続いた。
タイガースとスワローズの直接対決。10月9日の試合に8番・キャッチャーでスタメン起用されたのは、控え捕手の坂本誠志郎だった。タイガースには東京オリンピックの代表にも選出された梅野隆太郎がいたが、深刻な打撃不振に陥っており、控えの坂本に出番がまわってきた。この大事な1戦の命運を坂本が背負うことになった。
この日内野のそこそこ良い席を確保していた僕は、スタメン出場した坂本に釘付けだった。ベンチから試合を見ることが多かったどんなプレーを見せてくれるか、気になって仕方なかったのだ。
坂本のプレーは「丁寧」だった。相手選手が少しでも隙を見せようならアウトを狙いに行き、ピッチャーの投げた球が外れて暴投になりそうなときは体をめいいっぱい使ってボールを逸らさないように止める。ピンチのときはじっくり時間を使って焦らない。彼のクレバーさのようなものを感じていた。
だがこのときのヤクルトは相当に手強く、2回には一打同点のピンチを迎える。早くも訪れた山場だったが、スワローズの1番・塩見康隆に対して、ピッチャー・秋山拓巳のストレートは外角いっぱいに投じられた。
「ストライク、アウトッ!!」
そのピンチを脱したその瞬間。坂本が拳を握りしめていた。
ピンチを脱した興奮、大事な試合で結果が出せた喜び、自分がリードする秋山から最高の1球が来た昂り、色んな感情が拳の中に詰まっていた。カメラのシャッターを切る僕も、熱い思いを抑えられなかった。
1点差で迎えた最終回、1アウト満塁、一打サヨナラの大ピンチを迎えるもタイガースは逃げ切った。坂本は再び強く吠えた。その表情に、仕草に、全てのプレーに、この試合にかける思いがこもっていた。
シーズンオフの今でも、坂本のガッツポーズ写真をよく見返している。ムードメーカのイメージが先行しがちな坂本の闘志が高かぶっている様子が伝わってきて、胸が熱くなる。試合に出ている坂本は、最高にカッコイイ。
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