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イベントレポート(マジ天使!5)

※マジ天使!はナンバリングされていないので5は便宜的なものと留意されたし。

・ごあいさつ

 春も終わりの気配を出し始めた五月も末のこと、そこからちょっぴり時を進めて令和3年の6月12日。
 今日はとあるイベントのお話をしようじゃないか。
 大丈夫、さほど長くはならない。ゆったりいこう。

 ときに、「私に天使が舞い降りた!」という作品がある。2016年にコミック百合姫で連載を開始し、コミックスは9巻まで発売。2019年にはアニメ化されて劇場公開も決定している人気作品だ。
 そんな「わたてん」の二次創作作品、その即売会が今回の舞台というわけ。
 厳密には動画工房というアニメ制作会社のオンリーイベントだがそこはまぁ割愛。
 さて、導入はここまでだ。
 隙を見せた君たちには存分に自分語りを聞いてもらうとしよう。

・いつでも期限は迫り来る

 時計の針を少しばかり戻して5月20日。
 いつだってギリギリというのは良くない結果を生む。思い返してみて欲しい。グループLINEの出欠確認。課題レポートの提出期限。入稿締切に夏休みの宿題。ギリギリに慌てて良かったことがあるかい?
 もっとも、後悔をいつだって活かせる訳ではないのもまた人間なんだけど。と、過度な一般化をしたところで日付の話だね。
 あぁ、そのとおり。この日はイベント「マジ天使!」のサークル参加申込期限当日だった。
 本を作れるほど作品のストックもないし今回はいいかな、
なんて棚上げしていたサークル参加。しかし創作衝動というのはいつ何時襲いかかってくるのか分からないもので、気づいたときには参加費を振り込んでいた。速報すら無いから地震よりタチが悪い。
 サークルカットすら出来てないんだぞ!
 一番大事な金銭部分だけ先に処理したら帰宅即申込みフォームとにらめっこと相成った。
 サクカは既存の焼き回し、これだって持続可能な同人活動目標(SDGs)の知恵なんだから手抜きとか言わないで。事実は時に人を傷つけるんだからね。
 さぁさぁ残りは3週間。使える土日は6日間。その内3日は埋まってる。
 ほぼ詰みみたいに見えるけど、コピー本なら十分さ。

・約束の地「蒲田」

 かくして光陰矢のごとし。
 ターフを駆けるウマのように時は巡ってイベント当日。え、何? 言い回しが気になる? まぁエフフォーリアとグランアレグリアに単勝突っ込んで溶かした話はいいじゃないの。
 この日は朝食にトーストを一枚。それからホットコーヒーを一杯。
 梅雨らしく適度に湿気を含んだ空気の中を進み京急蒲田駅に向かうことにする。
 新刊はバッチリ持ってきた。そうそう、今回はコピー本だけど印刷所を利用したんだ。
 コンビニでもいいんだけどデータ入稿が可能ってのは大きい。イラストのPSDファイルとテキストのPDFファイル混合で小冊子印刷してくれるのは物書き絵描き両方やってる身としては魅力的すぎるんだよ。しかも安い(カラー1枚30円)。ちなみにお願いしたのはアキバにある太陽出版さん。
 交通費の都合もあるだろうから各自お得な方法を模索してみるといいんじゃないかな。

 駅に着いたら予め連絡しておいたFuji先生と合流。わたてんのSS書いててサークル参加までしてる人なんて片手で数えられるくらいだからね、縁は大切にしないと。
 会話しつつ徒歩五分、大田区産業プラザPiOに到着。
 懐かし……くはないな、一週間ぶりだしね。
 10時半になりサークル入場開始。当然のように一番乗りだ、そういえば前のマジ天使!のときも一番だったっけ。
 ともあれまずは設営開始と洒落込もう。
 今日は前回よりも簡略化して荷物を減らしている。その中でも大きいのは印刷したお品書きとそれを吊すスタンドを廃止したことだ。

 ゆーてお品書き、みんな見てる?
 新刊と値段が分かれば十分じゃない?

 というわけで新装備のiPad Airにその役目を託してお品書きスタンド君は留守番だよ。正直なところドライバー持ってくるのがめんどくさいんだよね。
 品物並べて釣り銭用意したらあっという間に設営完了。正味5分ってところかな。

 ほいでさ、まだ11時にもなってないわけじゃない?
 開場時間って13時じゃない?

 ――ヒマだーっ!!!
 ヒマにあかせて最近マイブームなオレンジジュースをセブンに買いに行ったりしてるとちらほらサークルさんも入場してたりして。

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・即売会の目的、とは

 それほど大規模なイベントというわけでもないからね、販売数を期待しての参加ではないんだ。
 どちらかというと見知った参加者と挨拶したり話したり、という方がメインの目的だよね。
 そもそも論としての「二次創作同人活動に販売利益を見込むことの是非」みたいなところについてはまた別の機会に譲るとして。
 やはり直接会って話すことの恩恵というのは大きいんだよ。
 もちろんTwitterやDiscordでチャットや会話をすることはできるかもしれない。それでもその場に存在する“生”の人間とは違うわけだ。
 昨今のリモートを否定しているわけじゃないよ、どちらが上ということもない。
 ただ、同じ場を共有することにもそれなりの意義があるという話。
 人は言語のみにコミュニケーションをするにあらず。声音や視線、仕草なんかのノンバーバル(非言語)コミュニケーションを活かせるのは現場に居るもの同士ならではなんじゃないかなと思うんだよ。

 はてさて、それはそれとして。
 作品の感想を交換したり今後のイベント状況を憂いたり、ときに創作論を交えたり。
 そんな時間を過ごしているうちに長針はぐるぐると巡り、まもなく13時だ。
 気がつけば入り口には開場を待つ一般参加者の姿がずらり。
 ささやかながら、戦が始まろうとしていた。

・開戦の鐘、そして凪

 張り詰めた空気が場内を満たす。
 興奮と緊張が駆け巡り秒針の音がやけに大きく聞こえる。
 さぁいよいよだ。いよいよ戦が始まるのだ。
 ついに長針がカチリと重い腰を動かした。
 それが合図だった。ここぞとばかりアナウンスは高らかに鬨の声を上げる。
 ウォォオオオオ
 コミケにはもちろん及ばない、ぷにケットやSHTにも到底並ばない。それでも熱意は変わらない。
 ただ己の求める宝を目指して突き進む情熱に一切の曇りはない。
 財布を握りしめ、パンフレットに目をこらし、意気揚々と人混みをゆくオタクたち。

 それをただ椅子に座って眺めること20分。
――あれ、もしかしてわたてんを目当てに来た人って想像以上に少なかった?
 己の力不足を加味しても前回より少ない気がする。
「恋する小惑星」「ゆるキャン△」も同じイベントだったから、会場内を見渡す限りではそちらに多く行っている印象を受けた。
 それもまぁ良かろう。私は肩の力を抜くと、心穏やかに青絵まぐ先生の新刊百合えっち本を読み始めた。
 開場前にちゃっかり得ていた戦利品を読み、Twitterを眺めながら過ごしていると既に14時。
 もともとイベントスペース自体もそれほど大きくはない。
 全てのサークルを見てまわっても大して時間はかからないのだ。
 つまり、以降はゆるりとした交流が場を支配する。
 こちらも適当に周りのサークルさんと話を始めだす。開場前のひとときをリバイバルする訳だ。
 同じジャンルで何度も参加していると自然と知り合いは増えていくもので、幸いにして話し相手には事欠かなかった。

 そうそう、今回は恋アスの関連で天体写真の展覧会も行われていたんだけどそれがまた美しいんだ。それこそイラストなんじゃないかと錯覚してしまうほどに。
 でも確かにそこにあるのは現実で。肉眼で見上げる夜空の美しさ、その延長線上に光り輝く一瞬が切り取られている。
 テントの中に広がった、手が届きそうな永遠のロマンに思わず息を呑んだんだ。

・そして祭りは終わりゆく

 イベントの終わりは16時半だったけれど少し早めに撤収準備。
 これ以上居ても新しく人が来ないことは自明だったし、挨拶もひと通り済んだし、何より新しい予定も入ったし。
 ささやかながら食事会をすることになったのさ。もちろんこんなご時世だから少人数短時間の制限付きだけどね。

 とある都市伝説がある。
 神絵師は神絵師の肉を喰らい、己の画力を高めている。そんな噂話。
 まったく恐ろしい話だ。人知れず消えていった絵描きは皆、強者に食われてしまったのかも知れない。
 しかし、“肉”の正体が実態を持たない情報であるとするならば得心がいくのだよ。
 情報、それは力だ。
 これは単純な技術の話に限らない。イベントの種類、運営側の状況、印刷所の特徴、あるいは創作者としての考え方。
 自分に無いものを取り込み、交換して己の血肉とする。
 弱肉強食の世界において、それを捕食に喩うのはなかなかに示唆的じゃないかね?

 そんなこんなをつらつらと述べてきたわけだが、そろそろおしまいの時間。
 愛しのPiOはどうやら11月末まで接収されてしまったらしい。
 されどそんなことでめげる我らではないだろう?
 嘆いたって不貞腐れたって結局は筆を執るしかないんだから。
 次にイベントに出るのはいつになるんだろうね、そして何を作るんだろうね。
 まだ全然決まってないけれど私は私なりに頑張るとするよ。

 最後に、ここまで読んでくれたあなたへ目一杯の感謝を!


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