だれでも同じようにできるわけではない。
介護現場が全てそうだとは思いませんが、僕が勤務して来た会社では、適材適所とはいえないような配置がよく見られます。
ただ、これは僕個人の見立てと、法人の判断や評価をするポイントが全く違っていたり、法人が期待する役割を当てはめたりしてる人事異動や配置なので、僕の見立てと違うから間違いだ、とかダメだ、とかそういう事ではなくて、なんだか勿体無いなぁ、と思う事が良くある、多く見てきた、という事です。
基本的に当法人は年功序列で勤続年数と年齢でエスカレート式に役職が上がっていきますので、よほどやる気がないとか指示命令を聞かないとかの問題がなく、本人に役職につく気が少しでもあればリーダーや管理職には比較的なりやすいのではないかと思います。
定期的に上司との面接もありますが、とくにキャリアプランを確認するわけでもなく世間話とか悩みがないかとかの内容です。
月に1回会うか会わないかの上司相手なので、通り一遍の話くらいしかできない感じですね。
実際どうなのかはわかりませんが、個人的には年に1回面接をする決まりだから形式的に実施しているだけ、というような印象です。
そんな会社なので、勤続年数は長いけど上に上がりたくなかったりする年配の現場職員が多く、若いけど責任感があって頑張るタイプの管理者・リーダー層が多いように思います。
ただ、管理者になる際に必要なリーダーシップや組織管理運営に関する研修などはほとんどなく、あってもコンプライアンス関連の書類業務の研修があるくらいで、それも1日程度です。
年功序列の給与体系なので、現場職員の方が月収が高いというチームも多くありました。
職員というくくりが正しいかはわかりませんが、現場職員で生きる職員もいれば、管理者リーダーで生きる職員もいると思います。
会話コミュニケーションが得意だったり、書類系が得意だったり、それぞれの職員の優点を生かして伸ばすのがチームづくりの基本と思っていますが、そもそもそういう評価自体がなされていない組織の中で、責任感とやる気だけで誰かの上司になるので、管理者・リーダーになる職員の負担は相当厳しいと思います。
僕自身も非常に苦しい経験をしてきたし、できれば同じような経験はさせたくない思いが強いので、丁寧に順序立てて育成したいので、年に1回の面接の中では必ず個人のキャリアプランを確認して、それに向かって今の職場で何がステップになるか、個人の向かう先とチームの目標が一致しているか、一致していなければどのようにして同じ方向に向かせるかを面接の中で相談したり提案したりして調整します。
役職になれば、その役職が本人を育ててくれるという話は聞いたことがありますし、僕自身もそういう風に思っていた時期もありました。
確かに、その立場にならないと見えない景色や責任感を感じる事はできますが、それってその状況で個人の力だけで乗り切れるかどうかは、ほとんど運だと思っています。
職員の指導や育成、チームづくりは、野菜を育てるのと同じような準備と段取りと季節(時期)が重要だと思っています。
僕は2~3年ほど、認知症ケアに活用したくて農業を少しかじった事があります。今でも農業と認知症ケアのリンクはやってみたい事の一つですが、野菜を育てる上で重要なのが土づくりです。
荒地を開墾した経験もありますが、ふかふかの土を作るために固い地面を耕して、時には木を切り倒して根をはがして石を除きます。
こういった土づくりは、基本的なチーム力をつくる事だと思います。
少なくとも同じ方向を向く、最低限の報連相ができる。
次は種をまいて水や肥料を与えます。
植物の種って面白くて、一つだけ植えてもあまり育たなくて、二つ三つを同じ穴に入れてまくと育ちがいいんです。(農家さんに教えてもらいましたが、本当にそうなんです)なので、職員育成でも相対評価できるような同僚がいる環境は大切かもしれません。
若芽が出てくると2つ3つの中から一つの芽に間引くのですが、その時期って野鳥に狙われやすくて僕の場合は雉に若葉をすべて摘まれた事がありました。
若手が最初に直面する壁を一人で乗り切れるか、野鳥や外敵から守るためにネットを張ったり何等かの対策をするか、大切な事だと思います。
外敵はチームメンバーかもしれませんし、リーダー自身かもしれません、または本人自身なのかもしれませんが、そういう慣れてきた時期のフォローは必要と思います。
また、野菜の種類や季節によっては、土の上にマルチというビニールを張る事で害虫や育成を促進する工夫もする場合もあります。
育てる環境を整えるのも重要ですよね。
雑草はすごい勢いで成長しますので、雑草の処理も重要です。
こまめな畑の手入れは、育つ野菜の実りに直結します。
水やりも同様です。害虫の種類によっては必要な対策も違います。
木酢などの対策で十分なケースもあれば、ちゃんとした農薬を使わないと全滅するケースもあります。
職員を育てるというのは、そういったこまめな手入れや観察が必要で、観察の結果必要な対応を適時打つ必要があります。
そうして実った野菜は、収穫の時期を間違うと野鳥やイノシシに狙われて荒らされます。
僕もせっかく作ったトウモロコシを根こそぎイノシシ一家に食べられた経験がありました。1時間早く収穫に行っていたら・・・という状況でした。
この人材不足のご時世ですので、適切な時期に適切な処遇で適切なキャリアに繋がなければ、他の会社に引き抜かれたりするんだと思います。
これからの時代、超高齢社会の中で何も介護福祉の業界だけが介護の専門家を必要とするわけではありません。
全産業で介護の専門家としての視点や技術は欲しいはずです。
高齢者のニーズに対応できる事は、商品が売れるニーズがそこにあるという事です。多くはないとは思いますが、介護職の他業種への流出も今後はあたりまえに起こりえる事だと思います。
そんな中でも介護職不足です。30万人以上の介護職が不足するといわれています。
これからを担うリーダーを、手間暇かけて育てていないと大変な事になると思います。
特にうちの法人では、こういっては語弊があるかもしれませんが、少なくとも僕が経験してきたすべてのチームで、やる気のない向上心のないベテラン現場職員の集団の中で、少数のやる気のあって向上心のある中堅若手の職員が肩身の狭い思いをしながら利用者さんのために、と頑張ってチームを支えていました。
そして、そこからリーダーに上がった職員の多くが途中で退職していっています。それはどんな言い訳をしても結果として数値として出ている明らかな事実ですが、僕の上司に言わせると『乗り越えられなかった』という事らしいです。
これには大いに反発して、タイトルにも書きましたが、誰でも僕らと同じように出来るわけではない、ちゃんとフォローしてあげないと育つものも育たない、と反論しましたが、『それでは甘い』そうです。
僕自身は、甘くてもいいから、やる気のある職員はどんなに時間をかけてでもちゃんと育てたいと思っています。
野菜と一緒にできる問題ではありませんが、育つ時期だって人それぞれです。
僕自身、20代の頃には理解できなかったり受け入れられなかった事が30代や40代で理解できたり、すんなり受け入れたり、できなかった事ができるようになった経験があります。
それぞれのスキルに到達できる適切な時期が、個人それぞれに存在するのだと思います。その時期の見極めや予測を立てて、適切にフォローする。そういう事ができないと、これまでと何も変わらない、少なくとも当法人では何も変わらず同じ事の繰り返しになると思います。
いま、リーダー層の不在を嘆いている原因に、そういうまいた種が勝手に育ってくるのをまっているだけ、という理由があるのではないか、という所をきちんと精査してほしいのですが、今度受けもつ次期管理者候補の育成を2か月でせよ、という命令が来た事も考えると、あまりそういう方向で人手不足・管理者不足を深刻に考えていないのだなぁ、と思いました。
さんざん文句をいっての2か月で、しかも『2か月で管理者育成なんて前代未聞だ』とも言われましたので問題は深刻だと思います。
そりゃ、書類作るくらいの仕事なら2か月もあれば十分でしょう。
しかり、リーダーとしてチームを率いるいろはを教える、僕の後任として赴任するのですから必ず僕と比較されます。
そして後任候補には伝えていないようですが、僕は2か月後には異動して別の職場です。
会社にはフォローの仕組みをしっかり作らないと潰れるから具体化せよ、と要望は出しましたが、どこまで検討してくれるか不安です。
今のチームの課題を考えると新人管理者ではなく管理育成の経験のあるベテラン管理者をよこしてほしいと要望もしたのですが、結局僕のいる地域に異動できる職員候補がなく、管理者経験のない候補となったとの事。
適材適所をもっと考えて判断してよ・・・と思ってのこの記事です。
いずれにしても後継者を育てる事は楽しいので僕自身、遣り甲斐はあります。やる気のあるリーダーを生かすも殺すも僕次第、といった所ですので責任も重大です。会社だけではなく介護業界全体の損失になるので、潰れないで継続できるように育成しないといけませんし、後継者候補が着任するまでに準備することが山盛りです。