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第3回 これだけ!逆行列の基本  (線形代数)

 前回は覚えておくべき特殊な行列と行列の四則演算にまつわる法則についておさらいしました。

今回は逆行列とは何か、そして2次行列の逆行列の求め方を学びましょう。

1.逆行列とはなんぞや

 突然ですが皆さん、5の逆数って何ですか?…$${\frac{1}{5}}$$ですよね。
その数字をかけ合わせることで1になる数を逆「数」といいました。
逆「行列」は逆数の行列バージョンです。次のように定義されます。

$${\bold A \bold B=\bold I}$$を満たす行列$${\bold B}$$が存在するとき、
$${\bold A}$$は正則行列であり、$${\bold B}$$は$${\bold A}$$の逆行列である。

ちょっとややこしいですね。
 まず定義の言葉の意味ですが、少しかみ砕くと「$${\bold A \bold B=\bold I}$$の式があったとき、$${\bold B}$$は$${\bold A}$$の逆行列だよ。ただし、$${\bold A}$$は正則行列でないと、その式は成り立たないよ。」です。
 1文目は言葉の通りに飲み込んでください。$${\bold A}$$とその逆行列である$${\bold B}$$をかけると単位行列になります。これは先ほども言ったように逆数の定義とそっくりな形ですね。
 2文目は$${\bold A}$$が正則行列なら逆行列計算できるよ、と言い換えられますね。正則行列かどうかの判定法は後述します。
とりあえず「逆行列って逆数の行列バージョンかあ」と思っておきましょう。

2.暗記!2次行列の逆行列

①2次元正則行列の判定法
気になる正則行列の判定法ですが、次の行列$${\bold A}$$について、

$$
\bold A=
\begin{bmatrix}
a&b\\
c&d
\end{bmatrix}
$$

次式を満たすときに行列$${\bold A}$$は正則行列であり、$${\bold A}$$には逆行列$${\bold A^{-1}}$$が存在します。

$$
det(\bold A)=ad-bc\ne0
$$

逆行列を求めなさい!と言われたらまずは$${ad-bc}$$を計算して、0であれば「逆行列なんてねえよ」と言えばいいし、0以外なら次の②に移ればいいわけですね。
 ちなみに$${det(\bold A)}$$は$${\bold A}$$の行列式といいます。ものすごく脱線するのでここでは説明は省きます。そういうもんだと思ってください。

②2次元正則行列の逆行列の求め方
暗記しましょう。①の行列$${\bold A}$$の逆行列$${\bold A^{-1}}$$は次で与えられます。

$$
\bold A^{-1}=\frac{1}{ad-bc}
\begin{bmatrix}
d&-b\\
-c&a
\end{bmatrix}
$$

例題です。次の行列の逆行列を求めてみてください。

$$
\bold A=
\begin{bmatrix}
2&3\\
1&4
\end{bmatrix}
$$

答えは下の通りです。あってましたか?

$$
\bold A^{-1}=\frac{1}{5}
\begin{bmatrix}
4&-3\\
-1&2
\end{bmatrix}
$$

3.3次以降の逆行列はどうすんの?

 こう思ったあなたは鋭いですね。次回解説します!

4.逆行列って何に使うの?

 こう思ったあなたはとても鋭いですね。実は工学分野の様々な局面で活用されていますが、主に数値計算に用いられるように感じます。ここではざっくりとだけ紹介します。

例えば次のような連立方程式を考えてみましょう。

$$
\begin{cases}
2x+3y=10\\
4x-y=5
\end{cases}
$$

これを手作業で解くなら、2つの方程式をyについて解いて、yを消去してxを求めて、最後にyを計算する。という手順をとると思います。しかしコンピュータはそういった手続き型の解き方が苦手です。そこで計算を楽に処理する方法が逆行列です。上の連立方程式を行列で表すと次式のようになります。

$$
\begin{bmatrix}
2&3\\4&-1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
x\\y
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
10\\5
\end{bmatrix}
$$

この式を次のように置き換えます。

$$
\bold {AX}
=\bold B
$$

今求めたいのは$${\bold {X}=[x\ y]}$$です。ここで両辺に$${\bold A}$$の逆行列$${\bold A^{-1}}$$を両辺にかけます。そうすると、

$$
\bold {X}
=\bold {A^{-1}B}
=
\begin{bmatrix}
\frac{1}{14}&\frac{3}{14}\\\frac{2}{7}&-\frac{1}{7}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
10\\5
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
\frac{25}{14}\\\frac{15}{7}
\end{bmatrix}
$$

となり右辺を掛け算するだけで答えが出ます。この形式の計算であればコンピュータは一瞬にかつ大量にこなせるのです。このくらいの連立方程式は自分でやった方が速い?そう言ってられるのも今のうちですよ。

 具体的にどの分野でどんな使い方をされているかを知りたいでしょうが、残念ながら今回はここまで。興味があればご自分でも色々調べてみるといいでしょう。好奇心が人を一番成長させるのです。

まとめ

 ここでは2次行列の逆行列の求め方について解説しました。

もはやこのコーナーも恒例ですが…私のブログで勉強するのは大変ありがたいですしうれしいですが、このブログは理工系として必要最低限の会話ができる知識をお伝えするのみなので、書籍と合わせて勉強することでより効率的にそしてさらに深く勉強が進むかと思います。まずこちらの書籍を手に取ってみて、並行して学んでみるのもいいかもしれません。

次回は逆行列の便利な計算方法と逆行列の活用法について学んでいきましょう。
次回はこちら↓


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