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Expression

言葉の外にあるもの つかまえてみたかった
言葉の内に眠る想い どうか届けたくて
紙を立てた 絵筆を執った 背筋が伸びた
私は描くんだ

ロマン主義だとか
写実主義だとか
キュビズムも シュールレアリスムも
こだわらないまま 色を走らせた日々
誰かが描いた絵を 後世の人が
カテゴリーでくくることに違和感がある

画家が描きたいものは
狭い範疇に収まるほど
小さいものじゃなかっただろうって思うんだ

どうして そんなこと考えるかって
母さん 訊かないでよ
私が絵にこだわる理由なんて
国家機密より内緒にしているから

いくつもの反故にした紙の霊が
私の絵筆に憑依して
まだ まだ 描き足りない気がする
あまりにも 自分の筆力が
なさすぎて 弱すぎて
せっかく生きたまま吐いた絵も
すべてモノクロに見えるから

抽象画ですと自慢して
落書きみたいに表して
これぞ私なんだと言ってきたけれども
君が見たいはずの情景は
狭い現世にとどまらずに
はるか私の夜を超えていったね

どうして そんなに悩んでいるのって
姉ちゃん 知ってるでしょ
私が絵を考えない時間ほど
乾ききった今はないんだから

いくつもの呑み込んだ言葉の霊が
私の背中に憑依して
まだ まだ 言い足りない気がする
消えそうな 自信のとろ火が
吹き飛ばされて 痛みを思い出して
せっかく頑張った昼日中も
すべて夜に沈んでいくから

次は 怖くないのかもしれない
もう 大丈夫なのかもしれない
いや やっぱり崩れそうなものは崩れそうなんだ
生きるために描くのか
描くために生きるのか
終わりのない問いかけに
一歩 近づけるのなら

ほら パレットさえも捨て去って
ひとりぼっちの藍色を抱きしめて
黒い嵐に流されてしまう
その前に
私だけの絵具を 探しにいこう

さあ 君となら絵筆も要らないから
まっすぐな茜色を伝えて
満たされない青色で溢れてしまう
その前に
私に足りない色彩を 補ってほしいよ


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