【呼吸のメリット】腹式呼吸!いいえ、複式呼吸!!
toA ミドルボイス構築コーチです。
今回は「呼吸」についてお話します。
声の仕組みと呼吸の影響
「呼吸のトレーニングは必要ですか?」
ということを聞かれることがあります。
答えは必要不可欠です!
なぜ必要不可欠と言えるのでしょうか?
まずは声の仕組みをみていきましょう!
声はどのような仕組みで声になるのでしょうか?
〈声の仕組み〉
肺から送り出された空気(呼気)が声帯を振動させてピーという音を作ります(喉頭原音)
この喉頭原音が口の形、舌の位置と動き、唇の動きなどの影響を受けて言語として理解できる「声」となります。
つまり、
呼気→声帯→共鳴
という過程を経て、声は声として認識出来るようになります。
歌唱時には音程、リズム、声色など歌として必要な要素が加わり、それぞれが声帯に影響を与えます。
ミドルボイスを発声したいと思っている方で
などの症状で悩んでいる場合、
声帯は何らかの影響を受け、発声に適切な状態ではないのですが、
先程の声の仕組みから
発声をする前から声帯に影響を与えるのが呼吸なのです。
よって、
呼吸は声帯を適切に振動させるために必要不可欠
と言えます。
では、より具体的に呼吸についてみていきましょう!
呼吸の重要性
呼吸方法と[理由]の理由
主な呼吸筋には
など、さまざまな筋肉があります。
今回は呼吸の仕組みから主に身体の部分についてみていきます。
肺には筋肉がありません。
よって、肺自体が膨らんだり、しぼんだりすることは出来ません。
呼吸をする時は横隔膜や肋骨の間の筋肉(肋間筋)などを動かすことによって空気の出し入れをしています。
胸式呼吸と腹式呼吸という呼吸方法をご存知かと思います。
胸式呼吸とは
普段、何の意識もせずにおこなっている呼吸です。
これは肋骨を肋間筋によって収縮させて、空気を吸ったり吐いたりする呼吸です。
一方、
腹式呼吸とは
主に横隔膜を引っ張ったり、元に戻すことによって、空気を吸ったり吐いたりする呼吸です。
横隔膜は肋骨よりも動く範囲が大きいため肺が広がりやすくなります。
「歌には腹式呼吸が良いんでしょ?」
漠然と腹式呼吸が良いと知っていたり、
ボイストレーニングを受けたことがある方の中には
[腹式呼吸で歌うと良い]
[丹田を意識して]
などのアドバイスを受けたことがある方もいらっしゃるかと思います。
しかし、
なぜ腹式呼吸が良いのか?
の理由として、
より多くの空気を吸えるから!
というのは、不十分です。
呼吸は声帯に影響を与えます。
肺に取り入れた空気の量(吸気量)は圧力となり、声帯を境として、口腔や鼻腔や頭部側にも圧力を生じます。
その結果、2つの圧力が均衡をとると安定した状態を作り上げます。
よって、
声門下圧と声門上圧のバランスをとることが喉頭を安定させるから
ということが理由となります。
声門下圧と声門上圧
声門にかかる圧力のどちらかが強い、もしくは、どちらかが弱い状態が起こると、上下の圧力のバランスが崩れてしまいます。
バランスが崩れてしまうと、声帯同士を過剰に閉鎖させて声がガラガラしたり、喉が上がってハイラリンクスになるなどの不健全な状態を引き起こしてしまいます。
呼吸は声門下圧になります。
当然、歌っていく中で吸気量は呼気量として減少していきます。
減少する吸気量、つまり、声門下圧の変化によって、上下圧力のバランスが崩れてしまわぬように、しっかりと圧力を保つ手段が呼吸方法だと認識を変えてみると呼吸の重要性が少しみえてくるのではないでしょうか?
呼気量と速さ
呼吸は吸気量を保ち圧力のバランスをとるほかに、
呼気量と速さも重要となります。
ミドルボイスを習得する行程の中で、声帯筋の活性化が必要となります。
ミドルボイスを出せない状態での呼吸の使い方は
多量の呼気を使って力任せに声を出す
状態になりますが、
声帯筋が活性化すると
適切な呼気で芯のあるしっかりとした声
で発声することが出来るようになります。
音は、空気の振動回数でその高低を認識することができ、高音になるほど振動回数は多くなります。
引き寄せられた声帯が触れ合って、1秒間に何回振動するかが音の高さとなるのですが、
たとえば、A4=440Hz(A4という音を出すためには440回の振動が必要)となり、これを意識的に触れ合うように筋肉を動かすのは不可能です。
ベルヌーイの定理という物理法則があります。
詳しく知りたい方はこちらをご参考ください。
わかりやすい例えでは
電車が駅を通過する時に身体が電車側に吸い寄せられる
という物理法則です。
つまり、物体は流れの速い方に吸い寄せられるということなのですが、これは発声時にも起こります。
さまざまな筋肉で引き寄せられた声帯は、声として発声するために触れ合わなくてはなりません。
このベルヌーイの定理が機能する呼気量と速さが適切な時に、声帯は自動的(無意識)に触れ合い、正しく発声をすることが出来ます。
このことからも、ミドルボイスを習得するためには
呼吸のトレーニングが必要になるということです。
吸気方法とコントロール
呼吸の重要性がお分かりいただけたところで、
実際にどうやって圧力を保つために空気を取り込めばいいのかをご紹介したいと思います。
1.胸
胸式呼吸で普通に空気を取り込んでみましょう。
6~7割くらい空気を取り込めたと感じられたら問題ありません。
2.腹
腹式呼吸でお腹やみぞおち辺りが少し前に出るように空気を取り込んでみましょう。
この時に腹式呼吸が出来ない場合は鼻から空気を取り込んでみてください。
それでも、感覚が掴めない場合は横になって仰向けになり、鼻から空気を取り込んでみましょう。
3.腰
腹式呼吸の延長で、
腰に手を当て、腰が少し膨らんでいくように意識して空気を取り込んでみましょう。
4.背中
胸式呼吸の延長で、
背中側にも空気が入っていくのを意識してみましょう。
胸式呼吸は肋間筋の可動域が腹式呼吸と比較して小さいため、背中側に空気が入っていく感覚を感じられない場合があります。
ですが、肋間筋を鍛えていくことで胸骨が少しずつ広がるようになり、後にこの感覚が得られることがあるので、意識して空気を取り込んでみましょう。
お腹だけの腹式呼吸ではなく、
胸式呼吸と腹式呼吸の両方の要素から、
他の箇所も意識することで空気を取り込みやすくするので
複式呼吸
と、しています。
各箇所は感覚的なもので、
実際には肺に空気が取り込まれています。
各箇所を意識することで、肋間筋や横隔膜を引っ張る機能性が刺激されて、より多くの空気を肺に取り込むことが出来るようになります。
複式呼吸で空気を取り込み、
そのまま息を吐き出さないように保つと
身体の内側から外側へ圧力を感じられると思います。
この状態が声門下圧がかかっている体感となります。
声門下圧を体感できましたら、
次に、声門下圧を保ちながら息を使ってみましょう。
上下の前歯を軽く触れ合わせて、歯の間から息が漏れるようにスーッと息を吐いてみましょう。
一気に吐き出すのではなく、少しずつ時間をかけて吐き出します。
30秒間途切れることなく、
スーッと息を吐き続けることが出来れば、
吸気量と声門下圧を保つ力が問題ないという目安になります。
このトレーニングを継続することによって、
横隔膜、肋間筋、腹筋群が鍛えられ、胸郭を広げる柔軟性が増していきます。
より多くの空気を吸い込むことも可能となり、
歌唱時に必要な圧力をコントロールしていく土台が出来上がっていくでしょう!
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回は呼吸についてお話させていただきました。
歌といえば、つい、発声の方ばかり考えてしまいがちなのですが、呼吸がなぜ必要となるのか、そして発声にどう関係しているのかをみていくと、呼吸が欠かせない要素だと感じられたかと思います。
回数を重ねることで、意識下からどんどん無意識に出来るようになっていくので継続してみてください!
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最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!
それでは!