ToA 小説

ひょんなことからあらゆる人々の人生や世界を垣間見る機会の多い人生を歩むこととなりました。誰かの心の琴線に触れるようなストーリーをシェアしていきたいと思っています。米国在住。

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ひょんなことからあらゆる人々の人生や世界を垣間見る機会の多い人生を歩むこととなりました。誰かの心の琴線に触れるようなストーリーをシェアしていきたいと思っています。米国在住。

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向こう側へ(短編小説)

青空が広がり風そよぐ気持ちのいい天気の日には必ずといっていいほど、サブはお気に入りの場所へ出かけて行く。そして今日も丘の上の見晴らしの良い指定席で高いフェンスで囲まれたこちらの世界の外に広がる乾いた大地とその遠く先にうっすらと見える草原をじっと見つめていた。 「おいサブ、そろそろ夕飯の時間だ。時間通りに戻らないとまたお前、母さんに叱られるぞ。」 夕食の合図である6時の鐘がちょうど鳴り響きはじめたところだった。ここではベルトコンベヤーで一斉に食料が運ばれてくる。自分の世界に

    • Hello 2021

      未曾有の危機に直面した2020年。多くの尊い命を失い、未知のウイルス、度重なる不幸のニュース、先の見えない未来に心身共々疲れ果ててしまった人が多くいると思う。私もそのうちの一人なのだけれど、コロナ禍は普段忙しいことを理由に直視するのを避けていた秘められた不安や苦悩、そして自分と向き合う良い機会でもあった。 思い返せば物心ついたときから、私は切羽詰まったようにいつも生き急いできた。忙しい忙しいとぼやきながらまるで何かから追いかけられているように。でも戸惑いながらも突如現れた思