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プランとスケジュールの違い《ISO14001解説#05》
この記事は連載記事となっております。
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日本語には無い「計画」の意味
ISO14001を理解する上で知っておくべき事の一つに、「原文は英語であり、JISが翻訳している」という事実があります。
これはどういう意味かと言うと、英語でのニュアンスが日本後で訳しきれていない点が含まれているということです。
(だから、若い時に受講した講師から英文を読みなさいと教わりました)
さて、その訳しきれていない表現の代表格として「計画」という日本語があります。
原文(英文)では、
①plan
②schduel
の2つの意味で間接的に表現されていても、日本語訳のISO14001では共に同じ「計画」と訳されていたりします。
この違いを理解すると、「計画」を作る際にムリ・ムダがなくなり、ひいては効率的な環境活動を実行できるようになります。
2つとも日常的に使う英単語なのでなんとなくイメージできる人が多いかと思いますが、今回は「計画」の違いについて説明します。
1.「取り組み計画」と「運用計画」
前項で2つの英単語をそれぞれ「計画」と訳していると説明しました。
ISO14001ではどのように使い分けされているかと言うと、
①plan = 6.2取り組みの計画
②schduel = 8.1運用計画
と表現できます。
取り組みの計画とは、環境目標を達成するという枕詞がついています。
前回の記事で環境目標について、環境方針との整合をポイントに挙げました。つまり、環境方針⇛環境目標⇛それを達成するための計画という一連の流れがつながっていることがわかります。
このことから、取り組み計画は環境方針から導かれる計画と言えます。
一方、運用計画とは「プロセスの管理」に用いるものだと説明されています。手順や段取り、誰が、いつ行うか、といった5W1Hがポイントとなっています。
schduelという単語が示す通り、日程表という表現がしっくり来ると思います。
少しまとめると、
①plan = 取り組みの計画 =環境方針から導かれる活動項目
②schduel = 運用計画 =活動するための日程表
と解釈すると、それぞれの違いがより鮮明になるのではないでしょうか。
実はこの考え方、日常でも役立ちます。
例えば、旅行に行く際、静養なのかアクティビティなのかという旅の目的から、移動手段や観光日程の段取り決めをします。家族会議で揉めてしまう状況でも、2つのステップに分けるとすんなり決まるでしょう。
2.条件(ISO14001への適合)
それでは実際のISO14001を確認してみましょう。
6.2.2環境目標を達成するための取組みの計画策定
組織は,環境目標をどのように達成するかについて計画するとき,次の事項を決定しなければならない。
a) 実施事項
b) 必要な資源
c) 責任者
d) 達成期限
e) 結果の評価方法。これには,測定可能な環境目標の達成に向けた進捗を監視するための指標を含む(9.1.1参照)。
組織は,環境目標を達成するための取組みを組織の事業プロセスにどのように統合するかについて,考慮しなければならない。
8.1運用の計画及び管理
組織は,次に示す事項の実施によって,環境マネジメントシステム要求事項を満たすため,並びに6.1及び6.2で特定した取組みを実施するために必要なプロセスを確立し,実施し,管理し,かつ,維持しなければならない。
− プロセスに関する運用基準の設定
− その運用基準に従った,プロセスの管理の実施
注記 管理は,工学的な管理及び手順を含み得る。管理は,優先順位(例えば,除去,代替,管理的な対策)に従って実施されることもあり,また,個別に又は組み合わせて用いられることもある。
組織は,計画した変更を管理し,意図しない変更によって生じた結果をレビューし,必要に応じて,有害な影響を緩和する処置をとらなければならない。
組織は,外部委託したプロセスが管理されている又は影響を及ぼされていることを確実にしなければならない。これらのプロセスに適用される,管理する又は影響を及ぼす方式及び程度は,環境マネジメントシステムの中で定めなければならない。
ライフサイクルの視点に従って,組織は,次の事項を行わなければならない。
a) 必要に応じて,ライフサイクルの各段階を考慮して,製品又はサービスの設計及び開発プロセスにおいて,環境上の要求事項が取り組まれていることを確実にするために,管理を確立する。
b) 必要に応じて,製品及びサービスの調達に関する環境上の要求事項を決定する。
c) 請負者を含む外部提供者に対して,関連する環境上の要求事項を伝達する。
d) 製品及びサービスの輸送又は配送(提供),使用,使用後の処理及び最終処分に伴う潜在的な著しい環境影響に関する情報を提供する必要性について考慮する。
組織は,プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつために必要な程度の,文書化した情報を維持しなければならない。
2つあるので大変長いですね。
私の個人的解釈でまとめると以下のように表現できます。
①plan = 取り組みの計画
環境目標を達成するための取り組み計画は、下記項目を決めておくこと。
a)活動内容
b)活動に必要な人・モノ・カネ
c)責任者
d)環境目標を達成する期限
e)環境目標の達成を評価する指標
そして、これらの取り組みは環境活動として特別扱いせず、組織の事業活動にどうやって組み込むか考えること。
a~e)まではそのままの意味です。
最後の一文は、今回の連載記事の狙いである「無意味な環境活動からの脱却」として重要なポイントになっています。
環境活動は、環境活動として独立した計画や活動体制を敷くのが一般的だと思います。
しかしそれが、管理の煩雑さ・複雑さを生む要因となっています。
できれば事業計画(設備投資計画、教育計画、設備メンテナンス計画など)の中に「これは環境活動としても実施します」と関連付けされていると良いという意図が含まれているのです。
②schduel = 運用計画
組織は、環境マネジメントシステムに必要な要件を満たし、6,1リスク及び機会、6.2環境目標と取り組み計画を実行するための段取りを決定し、活動し、管理し、継続すること。
また、段取りの運用基準を決めておくこと。
■変化点管理
活動内容に変更があった場合は段取りの見直しを行い、非意図的だった場合は報告、評価をし、有害な影響がある場合は緩和的処置を施すこと。
■外部委託
会社として外部に委託している段取りを明らかにしておき、どんな影響力があるかも把握しておく。これらの把握方法は環境マネジメントシステムの範囲内で決めておくこと。
■ライフサイクル
《別記事にて解説》
これらの活動内容が予定通りに実施されたかどうかの証拠を残すためにも、運用計画の情報管理を継続すること。
大きくは4つに分かれています。
・まずは、運用計画としての条件が冒頭と末尾に記載されています。
・つぎに活動中の変化点管理について。
・そして外部委託している段取りの管理について。
・最後にライフサイクル視点での取り組みについてです。
原文ではプロセスと表現される単語を、段取りという単語で説明しました。
プロセス=段取りには「いつ、どこで、だれが、なにを、どうする」が含まれています。
まずは段取りを明確にすることをポイントにしています。段取りの運用基準という言葉がありますが、これは一般的な業務手順書(作業要領)と理解して問題ありません。
外部委託については一見膨大なように見えますが、例えば梱包、印刷/製本、販売などは環境への影響がないことを明言できれば良いでしょう。
そうすると、直接的な環境への影響がある廃棄物処理や清掃などを管理対象と決めることができます。
さらにそれらの判断基準は自分たちで決めて良いとされています。
ライフサイクルについては運用計画というより活動内容を示していることが多いため、別記事にて解説します。
3.よくある失敗例
よくある失敗については、①planと②schduelの混同があります。
特に、
①と②がほとんど似通った形で作成
①と②を統合して一つにしてしまう
などが見られます。
それぞれの違いを理解して「別物」と認識できないと、「なんで2つも計画書を作成しないといけないのか?」という発想に至りがちです。
ここで私の個人的解釈として効率の良い「計画」の考え方を下記に示します。
![](https://assets.st-note.com/img/1726047135-VtFip97Ix4XWdaq3JzGPvUfg.png?width=1200)
2つの計画の要素を取り込みつつ、一つにまとめるのが良いでしょう。
4.まとめ
今回は、2つの計画について記載しました。
役割の違う別物だと理解できれば、どのように表現すべきかたどり着けると思います。
もう少し踏み込んだ計画の作成について、例文、助言やコンサルタントに関する依頼については私のXからお問い合わせください。
https://twitter.com/KurodaSeita?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
以上となります。次回もお楽しみに!