走るこども、走らないおとな
喫茶店へ向かう途中、道路の反対側に両手を広げて立っている女性がいた。
何をしているのか気になった。
見ていると、女性の数メートル先に、走ってくるこどもの姿が。
なるほど、自分のこどもが小学校から家へ帰ってきたところかあ。
学校から帰ってきた我が子を、お母さんが抱きしめて迎えてあげるなんて、
なーんてすてきな親子だろって思ってたら。
なんとこども、走って帰ってきて、
お母さんの前を、
そのままスルーして玄関へ。
お母さん、「…え?」
みたいな顔して、
両手をスッとおろして、
自分もそのまま玄関へ。
すてきな場面を見られると思ったのに、
私も、「え?」
と思いながら、
そのまま歩きつづけた。
そういえば、小学生ってなんかやたら登下校中走ってるよなあ。
別に急ぎの用事があるわけでもないだろうに。
でも、たしかに自分も登下校中よく走ってたかも。
朝から友だちを追いかけて、追われて、
蜜をすえる花のスポットでは立ち止まるけど、
すったらまた走りはじめて。
別に急いで帰らなきゃいけないわけじゃないのに、
1本早いバスにどうしても乗りたくて、
「さようなら」と同時に下校班の友だちとスタートダッシュを切っていた。
たまたまなのか?
いや、私の20年後輩のこどもたちも、
やっぱりよく走っている。
なんでなんだろう。
そして、いつから走らなくなったんだろう。
ん、待てよ、中学生の時はどうだったか?
自分は中学生の時から自転車通学だったので、
登下校で走ることはなくなったけど。
あ、でも、中学も高校も運動部に入っていたから、その分よく走ってたか。
(しかもやたら走らされる部だった。)
大学生になると、一人暮らしで体たらくな生活をしていたので、
遅刻しそう!と走る場面は多々あった。
…もしかしたら、人間、
どこかしらで走る時間を確保するように、
DNAにプログラミングされてるのかも…。
いやでも待てよ、社会人7年目の自分は、走るタイミングが全然ない。
というより、走るほどの運動をしたり、
走るほど急がなくなってるのかも。
走りたくないから、前もって行動するようになったり、
食事に気をつけたり、
寝る前にストレッチを始めてみたり、
ほんとはバスに乗りたいけど、がまんして目的地まで歩いてみたり。
そんな生活に変わっている気がする。
…わかったぞ。
おとなになったら、走らなくなったんでなく、
もう走れないんだと。
それなら納得。うん。
そういえば、つい3日前、久っっしぶりに走る父を見た。
空港で、ポケットからチケットを落とした人がいたのだ。
たまたま気づいた父が、あわててその人を追いかけていて、
…たしかにヒヤヒヤした。
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