サービス関係の対等性
サービスと言うと、日本ではオマケや無料というニュアンスがある。
何故だろうか。
サービスの意味についてネット検索してみるとたくさんの解説がある。それだけ気になる人が多いということか。
ある解説によれば、サービスという言葉の元となっている英語のサービスの語源は奴隷だという。
これを聞くと納得してしまうのだが、現在は奴隷という意味ではなく提供するという意味で使われることが主流なのだから、サービスと聞いて奴隷をイメージするとしたらちょっとした時代錯誤なはずだ。
言葉の意味は時代と共に変わるものだから、本来のサービスという言葉には無料の意味は無いんだ、と言ったところで空虚だ。
サービスしろよと言ってくるお客さんに、あなた、言葉の使い方が違いますよと言うのは見当違で話が噛み合わないだけだ。煙に巻くつもりなら良いが。
言葉の意味の様々は脇に置いておくとして、サービスが一方向的なものである事は違いない。
サービスする側とされる側が必ずある。
ここで問題にしたいのは、その関係の対等性についてだ。
する側とされる側の関係が対等であるのなら別に問題ない。しかし対等性が崩れると問題に繋がることになる。
サービスに纏わる関係性をここでは便宜上、「サービス関係」と呼ぶことにする。
サービス関係では、サービスする側はされる側に何かを提供することになるのだが、される側は何かを提供するのだろうか。
一般的には金銭だ。
常連客が値引きのサービスを要求するとしたら、一見何も提供していない様だが、継続的な売上を提供することとの引き換えだとも取れる。
サービス残業はどうだろうか。
サービスされる側、つまり会社は長期雇用と定期昇給を提供していた。これもある意味金銭の提供だ。
では、初めて店に訪れた客が、競争店舗の価格情報を示して値引き要求をしてきた場合はどうだろうか。そのような客は継続顧客になる見込みは薄い。だから、サービスされる側が提供していることは、強いて言えば他店情報だろう。そんなことは店も承知の情報だろうから、客が押し付けてくるそんな情報は店の得にはならない。つまり、この場合両者は対等な関係になっていない。それなのに客は得意気に高圧的に店員に値引きを要求するだろう。店員としてはサービスなんかしたくなくなるはずだ。もっとも、他店価格を示されることは想定内だから、値引きをしたとしてもサービスではなく元々その店が販売しようとしていた価格ということなのだが。
最近テレビのニュース番組で、タクシー乗車でのトラブルを良く聞く。
客が無賃乗車したとか、運転手に暴行したとか。
事件化するような事案でなくても、タクシーの客は横柄な人も多いようだ。密室の中で運転手と客の二人きり。
そこにサービス関係。
運転手は客を車で運ぶ。客は運賃を払う。
それ以上の関係性は無いはずだ。
快適な移動を司る義務があるとか、客を不安にさせたり不快にさせてはならないとか、ケチを付けだしたら切りが無いが、ドライバーは一般常識の範囲内で履行すれば良いのであって、そんなことは客が過剰に要求出来ることではない。タクシードライバーは客の奴隷ではない。
金を払っているんだから言うことを聞け、なんて言う権利は客にはない。
これはタクシーに限らず、全てのサービス関係に当てはまることだと思っている。
普段は普通に見える人が、タクシードライバーや店舗での店員に対して、横柄というかタメ口になるのは、きっと関係性を勘違いしているだけだろうし、本人は横柄なつもりもないのかも知れない。
だとしたら、そんな態度は今すぐやめた方が良い。
意図してやっているとしたら、逆効果だからやめた方が良い。
相手が率先して快くあなたの望みを実現してくれるよう、上手くしむけるようにした方が良い。その点ではタメ口野郎よりもヤクザの方が何億倍も利口で大人だ。ヤクザは意図して自分のペースに持ち込むべく、服装から立ち居振る舞いから言葉遣いまで計算し尽くしているのだから。
「お前!」と蔑むように言われた時には、哀れでバカで最低な奴だと思っておけば良い。
なお、上司と部下はサービス関係ですら無いので、人間同士として対等に接するのがスマートだと思っているし、それが出来ない上司がいたとするならそいつは勘違い野郎で人間の屑なのだから、畜生とでも思っておけば良い。
おわり