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セールと聞くと買いたくなるのは何故か

 冷静に考えれば、セールとは購買意欲をそそるために売る側が仕掛けるものである以上、それで得するのは買う側ではなくて売る側。買う側は得した気分にさせられるだけ。

 こう説明しても、それを安易に受け容れる人は少ないだろう。安く買えるのだから得に決まっている、どう考えてもそう思えてしまうからだ。セールはお得というのが強烈に刷り込まれていて、ちょっとやそっとでは拭えないのだ。それどころか、セールで買わなければ損だとすら思わされている。

 バカにするつもりは決して無く、私を含めた人間の摂理としてそうだと思うから言うが、あなたの値ごろ感はいい加減で全く当てにならない。ましてや、他人の言うお得な価格など聞くに及ばない。だからどんなに賢明に判断しているつもりでも買い物で得することなど無い。
 こう言われて素直に納得出来る人はまずいないだろう。それくらい私たちは飼いならされている。

 価格はいわゆる市場原理で決まる。提示された価格は、その時の適正な価格であって、高くも安くも無い。しかし、過去の記憶や将来の予想と照らし合わせると高くも安くも見えることがある。
 セール前は高かった服。これからも値上げが続きそうな食用油。今日のお買い得品などなど。

 価格は市場に供給された時点がベースとなって、その後は時間とともに陳腐化する。ただし、需給バランスに乱れがあればそれに合わせて乱高下する。需給バランスは供給側でコントロール出来るものもある。
 一般的には鮮度が落ちれば価格は下がる。市場の揺らぎの中で、底で買えば得という考え方は成り立つし、需要が逼迫して高騰する前に購入出来ればお得というのも成立する。しかし、セールに供されるような日常で使うような品は、必要な時に買うべきものであって、安くなっているからといって買ってしまうのは本末転倒だ。

 ありがちな言い訳として、どうせ使うのだからセールの時にしか買わないというのがあるが、そんなの売る側も分かっていて、さして売りたくない時は値札を高くしているだけだ。人気があって売れているものは高くなるというのも市場原理なら、多く売れる物は安く作れる(売れる)というのも市場原理。その狭間で、売りたい時に安く見せるというのがあるわけだ。

 要するに、セールと聞くと買いたくなるのは、私たちが資本主義経済にすっかり飼い慣らされた結果なのだ。飼い主がこっちを見ると目を輝かせ尻尾を振ってはしゃいでしまう飼い犬と同じなのだ。
 そう思いつつも、サイトのセールに事前エントリーしてあれこれ物色している私は、犬ですら無く、もはや鴨に過ぎない(鴨さん、失礼!)。

おわり

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