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私達の生きる道

 ヨーロッパでもインフレが加速したことを受け、政策金利を上げることになった。
 これでゼロ金利政策を取るのは日本くらいになったということか。

 現在のインフレは資源価格の上昇に伴うものだから、資源の需給が落ち着けば相場価格も元の価格に戻り、物価の上昇は落ち着くというのが本当のところかもしれない。
 アメリアやヨーロッパに比べ賃金上昇を伴わない物価上昇である点が日本は違うのだという考え方もあるが、資源価格上昇等に伴って物価が上がっているのは事実で、もし世界的な相場価格の影響を受けるとすれば、賃金が上がっていない分だけ日本人にとっては厳しい状況になるとも取れないだろうか。

 安物買いの銭失い、という格言が昔の日本にはあったが、それは経済成長の裏付けがあったからだろう。
 ここ数十年の間、経済的な成長や好景気と無縁のここ日本では、日々の暮らしを維持するのが精一杯で、安物買いしか選択肢が無くなってしまった。
 将来の成長が見込めないとすれば一般庶民には夢も希望もあったものではなく、たまたま起業で成功した一部の人たちや、既得権益を上手く操る人々だけが密かに旨い汁を吸っているのが実情だ。

 金銭的な成功を僻んでいるのではない。
 いわゆる成功者たる彼らは彼らなりに努力と能力と運を利用して頑張ったに違いない。別に他人の成功をとやかく言って引きずり降ろそうということではない。
 そもそも金銭的な成功が幸福とイコールな訳では無いから僻むまでもない。ただ現実はそうだということを言っているに過ぎない。

 問題は、金持ちがお金を沢山もって幸せそうに見えることではなく、庶民がお金がなくて生活が大変だということでもない。もちろん、生活が大変なのはその個人にとっては大問題だが、お金があれば幸せで無ければ不幸せという二元論的な安直な価値観から脱却しなければならない。
 その前提において問題は、貧富の差や格差が、社会経済にとって不都合だという点だ。
 経済はお金が循環することで回る。
 一部の富裕層にだけ偏っていては、経済が回らない。
 富裕層からは、我々が沢山お金を使っているじゃないか。それでいいじゃないかと反論が来そうだが、それでは駄目なのである。
 お金というのはお金があるところに集まる習性があって、富裕層が使ったお金はそれ以上になって富裕層に戻ってくる(寄付なら別だが)。つまり社会全体には行き渡らない。

 悪いのは金持ちではないし、貧乏人でもない。
 資本主義経済というのは本来そういうものなのだ。
 みんなが等しく幸せな人生を送れるなんていうのは、資本主義経済の元では幻想に過ぎない。


 経済のグローバル化によって、国内だけで考えていては分からないことが多いはずだが、積極的に情報を取りに行かない限り、日本以外の経済事情についてはニュースで取り上げられることは無いから触れる機会がない。
 日本はいつの間にか世界経済の中で不利な位置に追いやられた。
 国外の資源に頼らなければ生きていけない私達が、これまでの蓄えを食い潰しながら生きながらえることが出来る期間はそう長くない。
 何か挽回の策を実行して行かなければ、先進国と言われ続けるポジションは維持出来ない。
 経済発展だけが人の幸福ではないということを考えれば、日本は日本なりの生き方があり得るはずだ。
 アメリカやヨーロッパと背くらべをしたところで、何も良いことはない。最初から彼らの視野には入っていないのだから。

 そろそろ私達の生きる道を探す旅を始める頃ではないだろうか

おわり

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