見出し画像

インフレと賃金上昇を予感してみる

 連日の値上げ報道に嫌気がさすを通り越して、将来の不安を感じ始めている人も多いだろう。

 日本では長らく低インフレ時代が続いており、物の価格が年々上昇していくという感覚を忘れてしまっていた。それが、ここに来て物の値段が今後上昇していくという風に思っている人が増えてきたという。
 世界中での物価高報道を聞けば、それが日本にやってくるのは時間の問題と思うのも頷ける。実際に少しずつ値上げは進んでいるのだから実感を伴って将来の物価高が予想出来るというものだ。

 実は、今後物価が上がるかもしれないという、この将来予想がインフレの正体だという。
 そのような将来予想は、景気が良い時は期待と呼ばれて歓迎されるが、景気が低迷している時は一寸先は闇などと言われる。

 同じ現象でも異なった解釈がされるのは、物価上昇は物価の問題だけで済まないからだ。家計の支出に影響する物価動向は、収入としての賃金の動向と切り離せない。生活をお金という側面で捉えた時に、そのインプットとアプトプットのバランスの問題だ。

 インプットが変わらないのにアウトプットが増えるようでは、いずれ家計が破綻するというのは単純計算でも分かる。

 物価の将来予想が上昇傾向の場合にインフレが達成されるということだとするならば、賃金も連動して上がるかもしれないと思ってもおかしくなさそうが、賃金の将来予想が上向かないのは何故だろうか。

 それは、ここ数十年で賃金が上がったという経験が無いからではないか。

 物価の上昇も未経験な人が多いところ、周りからの情報で何となく上がっていく気になれたのだとすれば、賃金だって同じ様に上がりそうだという情報によって期待が膨らんでもおかしくない。

 ところが、いかに諸外国の時給が上がっていると聞いても、期待感が膨らむどころか目先が暗くなる感じがしてしまう。日本には賃金上昇余地が無いと思い込んでしまう。

 学費は自分持ちで奨学金の返済に追われる、政府の借金が1200兆円、年金は払えども支給されるかも分からない、社会保険料や税金は高い。
 仮に少し賃金が上がったところで支払いが追いかけてくるイメージしか無いから、収入が増える感覚が無い。
 つまり将来への期待よりも不安や諦めという考え方の習慣ばかりが強化されて来た。

 そうであるならば、無理矢理にでも将来期待を抱いてみるのはどうだろうか。

 物価上昇は続きそうだけど、来年は給料増えそうだよね~、とか。
 給料が増えれば景気が良くなって、さらに給料が増えていくよね~、とか。
 どうしよう、来年のボーナスがヤバいことになりそう。欲しい物をもっと考えておかなきゃ、とか。
 来年は海外旅行に行きまくろう、とか。

 思ったり口にしたりするだけなら無料だ。
 そこで重要なのは、そんなとぼけた発言を聞いた側が無条件にこう言うことだ。
 そうだよね~、と。

 少しは気持ちが明るくなるだろうか。
 そうなれば儲けもの。

 武士は食わねど高楊枝、といったところだ。
 気位高く行こうではないか。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?