縮む日本
ビッグバンから始まった宇宙が今でも物凄い速さで膨張しているという。しかし、その宇宙の中の地球に住む私達はそのことに全く気付いていない。中にいると自分のいる世界が全体の中でどうなっているのかは分からないのだ。
いま日本が急速に縮んでいる。
経済的な意味で先進国という括りでいられるのも時間の問題かも知れない。
今でもそれなりに快適な生活を送ることが出来たのは、過去に加速した惰性が続いていたからだ。その惰性に翳りが見え始め減速に転じるのだとしたら、次の駅のプラットホームが何処にあるのかを良く確認しておいた方が良い。
金融の専門家には日本の経済は盤石だという人もいて何を信じれば良いのか分からないが、たとえ盤石だとしてもそれは内部の話であって、外からどう見えるかということとは違うと思う。
つまり10円駄菓子が10円で売っている限りは、たとえ給与が上がらなくても同じような生活を続けられるが、例えば東南アジアで昔10円で売っていた露天の駄菓子が今や30円しているとすれば、日本の給与しか貰えないとすると彼の地ではかなり貧しい生活しかすることが出来ない。それでも日本の経済が盤石と言って良いものか。
世界の国々がそれなりにハイペースのインフレで喘いでいる中、日本では値上げこそあれどもまだそれ程インパクトのあるインフレになっているとは感じない。それでも、それはこれからやって来るのかもしれないから油断はできない。
油断は出来ないが、大半の人はインフレになったところでどんな影響があるのかあまり良く見えていない。同じ時給では漫喫に泊まることも出来なくなるかもしれないというのに。
内需が回っている限りは直ぐに生活が脅かされることは無いとしても、内需を回すためには外部から取り入れなければならない物があるのが日本だ。全てを自己完結出来るのではないのだから、いずれ外の影響を受ける。
ではなぜ直ぐにインフレにならないのか。
日本の官僚や政治家が優秀だからか、日本人が優秀だからか。
そうは思えない。
となれば、次の扉を開けた向こう側に広がっているのが暗黒の世界であっても驚かない。
海外でのインフレ傾向が今後も続くとしたら、これまでのように海外旅行に行くことは出来なくなる。日本円を持っていても海外では紙くずにしかならない。
思えば、海外から日本に爆買い観光客が押し寄せていたときに気付くべきだった。日本で爆買いする理由は、日本製品の価格にあったのだ。
安くない製品を爆買いするとは彼の国も金持ちが増えたなと思っていたが、そうではなかったのだ。既にその時、日本は安い国だったのだろう。
今のところの景気がシュリンクしているようには見えない。金利上昇で経済活動が縮小すると予測される海外に比べ、日本ではゼロ金利政策継続で景気を維持している。それでも日本の株価は海外市場と同時に下がっているし、もはや海外の投資家は日本株に魅力を感じないという。つまり成長性が見込めないということだ。
こうしていつの間にか日本はシュリンクしていく。安いだけが取り柄の国になっていく。
いや、そうなってはいけない。
海外に売れるのは工業製品だけではないはずだ。日本的価値観や文化や風土。そうしたソフト面での輸出をベースに、日本をより高く売るためのブランディングが必要だ。
日本人がこぞって海外ブランドのバッグを買い漁ったように、海外の人々が日本発の商品やサービスを買い漁る世界観が必要だ。
それは新しく作るの必要があるものではなく、私達にとって身近すぎて気が付かないものなのかも知れない。
おわり