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《シリーズ》政府のお財布 その① 3つの大きな歳出

政治や経済、そして財政や行政。
理系大学出身の私は(と言い訳するが)、そういった国を司る重要な仕組みについて疎いままここまで来てしまった。
そこで、少しずつでも良いので、この辺りのことを学んで行こうという趣旨で、シリーズ化して取り組んで行きたい。
どこまで続くか分からないが。

この連載では、政府のお財布、すなわち政府財政について学んでみたい。

上のリンクに挙げたように、財務省のページには『これからの日本のために財政を考える』と題した解説がある。
これをなぞってみよう。

今回のテーマは日本の財政の状況のうち歳出についてだ。
つまり、政府のお金はどう使われているのかを見ていこう。

1 予算はどのような分野に使われているのか

財務省の『これからの日本のために財政を考える』の冒頭に来るのが、予算の使いみちについてだ。
そこにはこう書かれている。


2021年度予算の国の一般会計歳出106.6兆円は、主に①社会保障、②国債費、③地方交付税交付金等に使われており、これらで約3/4を占めてます。

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グラフでは、4分の3を占めているという3つの歳出項目のみが色付けされており、これらが着目させたいポイントなのだと分かる。
これら3つのそれぞれについては、こう解説されている。

(1)「社会保障」:年金、医療、介護、子ども・子育て等のための支出
(2)「国債費」:国債の償還(国の借金の元本の返済)と利払いを行うための経費
(3)「地方交付税交付金等」:どこでも一定のサービス水準が維持されるよう、国が調整して地方団体に配分する経費

それぞれ順に見ていこう。

(1)社会保障費

社会保障費については、ニュースなどでも度々耳にすることが多くなっていて、ここで挙げられている年金、医療、介護、子育てについては、どれかしらニュースにならない日は無いと思うくらいだ。
すぐに気づくと思うが、このうち最初の3つ、つまり年金、介護は高齢者についてのことで、医療はどちらかというと高齢者、子育ては若い社会人世帯を対象としたものだ。
グラフで分かるように、全体の実に3分の1を社会保障が占めており、ここでは内訳が良く分からないが、後期高齢者医療費だけで10兆円などという解説もあったりするので、社会保障費のうちの多くが老人を対象にしたものということだ。

総務省統計局のページによれば、高齢者の総人口に対して占める割合が約3割だというから、公共事業、文教及び科学振興、防衛の3つを合わせた予算額の倍ほどの金額が高齢者向けに費やされているということのように見える(地方交付税交付金等の倍でもある)。

50代になった私としては高齢者に片足を突っ込み掛けている訳で、何とも言えない微妙な印象を持たざるを得ない。年代別人口構成がどうのという前に、とてつもない金額を高齢者に費やさざるを得ない状況がどうして作られてしまったのかが非常に気になる

例えば年金にしてみれば、年金を支給することが悪いのではなく、お金の集め方に対する説明が悪いと思う。自分が積み立てたものを年を取った時に支給して貰えるような錯覚を生みがちだが決してそうではない。自分が払った年金が大切にどこかに保管されているのではない。極単純化して言えば、自分が払った年金で今の高齢者たちを支えているのだ。
その仕組自体が問題とは思わないが、それならそうと、あなたの支払った年金があなたのお爺さんお婆さんの暮らしを支えています、と大学生に説明すればいいじゃないか。
そんなことを知らなかった私は大学生の時、祖父からお小遣いを貰ったことがあったが、実は払った年金の一部が戻ってきているようなもので、何だか分からないお金の循環が生じていたことになる。

例えば医療にしてみれば、それだけ莫大な医療費が掛かっているということは、長生きしているお年寄りの大半が何らかの病気に掛かっている、つまり苦しみながら長生きしているか、大した病気でもないのに病名を付けられていらない治療や薬を飲まされているかではないか。どちらもいるかもしれない。もっと言えば、薬は元来毒なのだから、飲まなくても良い薬を飲んで体調を悪くしている人だっているかもしれない。
考えてみれば、私の経験でも貰った薬を全て飲みきったことはそうはなく、家には少しずつ残った薬が大量にあったりする。
風邪には効かないはずの抗生物質を必ずのように処方されることに何の疑問も抱かないどころか、むしろ処方しろと要求するから処方するんだなんて言い訳する医師が出てくる始末だ。

(2)国債費

社会保障費の次に多いのが国債費だ。
国債の償還と利払いのための費用だという。

債券や投資信託が満期を迎え、投資家にお金を返還することを償還という。国債について言えば債券を発行して借りた債務を返済することを指す。
利払いとは金利の支払いのことだ。日本国債10年の金利は0.07%くらいだ。
日本国債5年になると金利はマイナスになっている。ただし、個人向け国債は最低金利0.05%が保証されている。

国債の金利が上がれば政府としては利払いが多くなるが、マイナス金利になれば単純に考えて利払いで儲かることになる
ということは、現在計上されている国債費24兆円の予算は主に国債の償還のための費用と考えて良さそうだ。

(3)地方交付税交付金等

簡単に言うと、税収の多い地域から国が集めたお金を税収の少ない地域に配るものだ。何で都会の人が地方を養うようなことをしなけりゃならないんだ、という人もいるかもしれないが、下図のように、地方の産業によって都会が助けられているという発想のようだ。地方から農産物を無償で提供されている訳ではないのだが。
この地方交付税、使いみちが決められているのならまだ分かるが、使途は自由だという点に違和感が残るかもしれない。

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なるほど統計学園」より

行政サービスにしても、人口の多いところの方がコストが掛かると考えれば、都市で集めたお金を地方に配ることが行政サービスの公平性を担保するものと言われるとやや違う気がする。ただ、あまりにも税収が少ない地域であれば、最低限の行政サービスすら実施不能になることも考えられるので、それを救済するという意味であれば理解は可能だ。人口密度が小さければ費用に対しての行政サービス効率が落ちるので交付が必要なのかもしれない。

地方交付税交付金は国が集めた税金を配るものなのだから、会計上は確かに支出(歳出)に当たるのは分かるものの、入ってきて出ていくだけなのだから政府の負担は実質ないものと考えて良いんじゃないか。手間賃くらいは掛かるかもしれないが。
つまり、財政において地方交付税交付金等で16兆円も掛かっていて大変です、というのであれば少し違う気がする。

なお、「地方交付税交付金」と「地方交付税」は同じものだが、その違いについてはここで解説されている。
この地方交付税交付金等の「等」が気になりはするが、このことについてはまたの機会にしよう。

つづく

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