【読後想】『悪党』★★★★☆
夏休みの宿題で読書感想文が苦手だったけれど、感想でも書評でもなく、想ったことを勝手に書き留めるだけなら出来そうだということで記録する読後想。
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買おうか買うまいか正直悩んだ。
暴露動画を見たことがあったし、暴露はパフォーマンスの部分もあるだろうからまだしも、暴露の理由というか内容が好きには離れなかった。結局子供が駄々をこねている延長線上にあるように感じたからだ。
しかし著者は(元)新聞記者。
新聞記者の視点で書かれたらどうなるのか気になった。
というわけで、今回私が選んだのはこちら。
伊藤 喜之(著) 悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味 (講談社+α新書)
現在進行形の出来事や事件を伝えるのが新聞という報道機関。それまでに分かっていることを時系列に整理して、裏の取れた事実として並べる。
この本の場合の「事実」とはインタビュー証言だ。関係する人々への果敢なインタビューに基づいて話が繰り広げられる。
対象者は快くインタビューに応じてくれたとされているが、そこは著者の取材力のなせる技だろう。
対象者との関係を築いて密着取材をするのは、並大抵のことでは無い。取材開始時は新聞社という看板があったからこそ相手も取材を認めた面があるから全てが著者の実力かというと違うだろう。しかし看板はあくまで看板。要するに人なのだ。看板だけで仕事は出来ない。
という訳で私の評は★★★★☆。
星4つだ。
まず、読み物として面白い。読み進めていたらいつの間にか終わってしまった。動画を撮影しているカメラの後ろ側からの視点でとらえた対象者の姿がそこにある。密着取材というだけあって、取材者である著者と対象者の距離感は近く、浮かび上がる人物像は身近さを感じる。
しかし対象者のことがくっきりハッキリ分かるようになったかと言われれば否。何とも掴みどころが無い男だということが分かる。
予め読んでいたレビューにあった通り、読み物として面白いが、読み終わった読者の中に何が残ったかと言われると何も残らない。独りのさみしがり屋のギャンブル依存者がなぜ犯罪を犯し、さらには暴露を行うに至ったのが分かったからと言って、それはそれまでの話。それで私達の考え方や生き方は変えられないだろう。しかしそれでも先が読みたくなるのは、そこに人の本質の一端が垣間見えるからかも知れない。
おわり