④ 教科書教材で教えるべき「順序」とその原則

②で「具体的な事実の配列の在り方」について、教科書教材『たんぽぽのちえ』『どうぶつ園のじゅうい』『馬のおもちゃの作り方』を基にして述べてきました。それらはすべて、事柄が起こっていく時間的な順序をとらえさせるものであると言えるでしょう。
しかし、具体的操作期である低学年の児童にそれだけを教えることでよいのでしょうか。それは、一度教えれば経験からも簡単に理解できることでありますので中心として教えるべき「順序」ではないのではないでしょうか。

マガジン「論理的思考・表現の在り方(「順序」とは何か編)」においては、森岡氏・市川氏の論述を参考にし、以下の3分類(うち「論理的順序」についてはさらに2分類7パターン)を「具体的な事実を配列する順番」である「順序」と定義しました。

① 時間的順序
② 空間的順序
③ 論理的順序
 ⅰ) 相対的関係
   ア 単純から複雑へ(複雑から単純へ)
   イ 既知から未知へ(未知から既知へ)
 ⅱ) 対応的関係
   ア 原因から結果へ(結果から原因へ)
   イ 主要と付加(付加と主要)
   ウ 全体と部分(部分と全体)
   エ 一般と特殊(特殊と一般)
   オ 外見と機能(機能と外見)

教科書で指導すべきものと示されているのは、このうちの時間的順序のみであると言うことができます。しかしながら、実際の教材においては様々な「順序」が用いられているのです。そして、それらの「順序」については指導すべきこととはなっていないのです。

まずは教科書にある様々な「順序」について考えていきましょう。
1年生で初めて学習する説明文は『くちばし』(光村図書1上)です。よくこの教材を用いた授業を参観させていただきますが、「問いと答え」の構造を教えて「この構造が説明文の典型である」ということを理解させるようなものを多く見ます。しかし、これは単なる表現上のレトリックにすぎません。指導事項である「順序」には関わりないこととなります。
『くちばし』を読んでみると、「見てわかること(外見)→見てわからないこと(機能)」という「順序」で表現されていることが分かります。この「順序」(説明したい事柄を相手に分かりやすく伝えるには、まず見てわかる外見の情報を伝えて概観を把握してもらい、その後で機能的な側面などの内面の情報を伝えていくと効果的であるということ) について指導することがこの教材の価値なのではないでしょうか。

続く説明文『しどう車くらべ』も『くちばし』と系統的につながっています。この教材は『くちばし』とは逆に「見てわからないこと(機能)→見てわかること(外見)」という「順序」で表現されています。
つまり、1年生では物事をわかりやすく説明する「順序」として、まずは「見てわかること(外見)→見てわからないこと(機能)」という論理的順序について徹底的に学ばせることの必要性が示されているのです。

「順序」の指導で大切なことは、教材レベルの「順序」ではなく一般性・汎用性のある「順序」で指導しなければならないということです。つまり、『じどう車くらべ』では「しごと→作り」などという「順序」ではないということです。
学習指導要領でも示されていますように「順序」は「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」全てに関わる重要な指導事項なのです。一般性・汎用性のある「順序」を教えておかないと領域を超えて関連指導をすることはできなくなってしまうのです(『じどう車くらべ』で「しごと→作り」という「順序」で止めてしまうと、せいぜい「自動車図鑑を作ってみよう」的な内容関連のその場だけの指導になってしまいます)。
さらには、生活科等の他教科における活用などもできなくなってしまうことになるのです(「しごと→作り」を生活科の表現に活用させるとするなら、せいぜい作業道具の説明くらいにしか活用できないでしょう。しかし、「見てわかること(外見)→見てわからないこと(機能)」という「順序」を教えたならば、収穫した農作物でも自分で作成したおもちゃなどでも、それを活用して表現することができるのです)。

ここが「順序」指導の原理・原則となります。

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