小学校の国語科の授業 古文編① 古文の指導の目的

ひと昔前までは、『竹取物語』は中学校で最初に学習する古文であり、その冒頭である「いまはむかし ~ いとうつくしうていたり」を暗唱させられるという定番の教材でした。現在では、その冒頭は5年生の教科書に掲載されています。そして、相変わらずその指導は暗唱が中心となっています。
もちろん、音読させ、さらに暗唱させていくことも重要なこととなります。それによって、古来よりの日本語の持つリズムや響きの心地よさを実感でき、日本語のよさを味わうことができるからです。
しかし、それだけでよいのでしょうか。

学習指導要領において古文は「伝統的な言語文化」として位置づけられています。この「伝統的な言語文化」の含まれる「我が国の言語文化に関する事項」(「知識・理解」領域)については解説に以下のように示されています。

 我が国の言語文化とは,我が国の歴史の中で創造され、継承されてきた文化的に価値をもつ言語そのもの、つまり文化としての言語、またそれらを実際の生活で使用することによって形成されてきた文化的な言語生活、さらには、古代から現代までの各時代にわたって、表現し、受容されてきた多様な言語芸術や芸能などを幅広く指している。今回の改訂では、これらに関わる「伝統的な言語文化」、「言葉の由来や変化」、「書写」、「読書」に関する内容を「我が国の言語文化に関する事項」として整理した。

そして、「伝統的な言語文化」については「我が国の言語文化に触れ、親しんだり、楽しんだりするとともに、その豊かさに気付き、理解を深めること」に重点を置くとされ、古文を指導する高学年では以下のような指導事項が示されました。

第5学年及び第6学年
ア 親しみやすい古文や漢文、近代以降の文語調の文章を音読するなどして、言葉の響きやリズムに親しむこと。
イ 古典について解説した文章を読んだり作品の内容の大体を知ったりすることを通して、昔の人のものの見方や感じ方を知ること。

ひと昔前の(そして現在でも続く)音読や暗唱の指導は、指導事項アについては達成できることでしょう。しかし、イについてはどうでしょうか。冒頭を読むだけでは「作品の内容の大体」を把握することはできません。よって「昔の人のものの見方や感じ方を知ること」はできないことになります。
古文の指導においては、指導事項のアとイの両方が達成されたときはじめて「親しむ」ことができるのではないでしょうか。
「親しむ」とはそれを身近なものとしていくことです。古文の作品で具体的に言うのなら、その作品を現代の文学等の作品と同様に日常の読書の対象として考えるということになるでしょう。

学校教育において古文を指導するのであれば、その指導の結果、児童たちが自ら図書館にその本を借りに行く姿が見えるようなゴールにしていかなければならないのです。

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