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4年ぶりのお酒とあふあふの串揚げ
「あけおめ〜」
「ねぇあけおめ!元気だった?」
19:30の居酒屋。騒がしく座る友人と私がいた。
市内に住んでいるのに、半年以上ぶりの再会。何度となく約束するのに、いつもタイミング悪くトラブルが起きるのだ。「ごめん、コロナになった」「ごめん、子どもの遠足が雨で延期になって、バッティングした」そんな調子。呪われてる?ってくらい会えない。
お茶もできないまま迎えた12月。彼女から「飲みに行こう」と誘いがあった。授乳も段階的に落ち着いてきて、ようやくお酒が飲めるようになったらしい。
それは大変だと湧き上がり、お店を決めて、年の瀬に予約を取って、ワクワクして、そして私はインフルエンザになった。
夫が先に罹患し、「いやだ!私は絶対に飲みに行くんだから!絶対にうつらない!」と誓いを立て、夫の全力隔離に乗り出した次の日には喉が痛かった。呪いよ。
枕を濡らしながら日をずらしてもらい、ついに年は明け、満を持して迎えた。もう何があったって行く!這ってでも!そんな日だった。
あまり間を空けずに子を産み、育児に追われていた彼女はお酒を飲むのがなんと4年ぶり!4年お酒飲めない?!震えるわ。そんな記念すべき日に同席できるなんて、とても光栄だ。
お酒の注文を終えると、目の前にいる友人は左右をきょろきょろと見回し、「子どもがいないって不思議なかんじ。荷物もこんなに少ない!」と顔を綻ばせた。
久しぶりのお酒が飲めるということ以上に、子どもたちのいない環境でゆっくりと食事できることがたまらない開放感を与えているようだ。
すごく親バカで、いつも私の目の前で「んもう、かわいい〜」と自分の子どもを抱きしめチュッチュしている友人。
子どもたちを愛するが故に、毎日子どもたちのことを考えて、自分の時間を削りに削って生活している。世のお母さんたちの苦労は計り知れない。きっとこんな息抜きの時間はすごく貴重なのだろうな。楽しんでほしい。
私の瓶ビールと友人の柑橘系チューハイが届き、なんだか私の方がどきどきしながらグラスを鳴らした。
「今日は子どものやることもう全部済ませて、あと寝かしつけだけパパに頼んできた!帰ったら寝るだけ!最高!」
ぐっとガッツポーズを決める友人が、2口、3口とお酒に口をつけていくと、首が見る間に赤く染まっていく。
じつは年始にもマッコリを少し飲んだらしい彼女。しかし、そのときは後で子どもの世話をしなきゃと気が張っていたのか、ぜんぜん酔わなかったらしい。
そう言われるとたしかに、私も外で飲むときはあまり酔いにくいけど、家の中だとすぐに酔っ払ってしまったりする。気の緩みは酔いの回りに大きく影響するんだなぁ。
石切神社のすぐ近くに構えるそのお店に入ったのは、はじめて。飲み歩きが好きな友人の義姉が教えてくれたそうだ。口コミで入るお店っていうのはなんだか少し特別感がある。
下町っぽい温かみが感じられながらも、木の素材が目立つ店内は品がいい。メニューはどれもおいしそうで選べなくて、おまかせコースというのを頼むことにした。
ちょっとジャンクささえ感じる大阪の大衆串カツとは違った、少し手の込んだ「料理」の串揚げ。つける調味料もお店の方が都度説明してくれる。
中でも子持ち昆布の串揚げが絶品!ジュワッとした衣のあとにプチプチとした食感、味わいある昆布、ほんのり塩気が広がって、ずっと噛んでいたい。おいしすぎて、思わず追加でもう1本頼んでしまった。
口の中が幸せになって、飲んで、話して、しばらくすると次の1本が届く。そんな繰り返し。
芋の串揚げなんか、口をあふあふさせながら食べて、うまーいと一緒に目を2人で見開く。とっても、幸福だ。
途中で友人が家の見守りカメラを確認すると、ちょうど子どもたちの寝かしつけの時間だったらしく、「パパ頑張ってる」と笑いながら見守っていた。その顔がすごく優しくて、感極まりがちな年代になってきた私はちょっとジンとする。もう2本目の日本酒いってたし。
私は子どものいない自由な身ではあるものの、結婚して大阪に来て以来、友人と飲みに行くことはなく、夫もお酒をあまり飲まないときたもんで、基本的にひとり飲みを続けている。
夫が心配するので夜にひとり出かけることもなくなって、私にとっても久しぶりの友人とのサシ飲み、夜の外出、という具合。
普段からひとりがわりと好きなので、そんな生活もなんのこっちゃないと思っていたけれど、友人と飲むお酒はやっぱり最高に楽しかった。抜く息なんかないかと思っていたけど、どうやらあったらしい。
結婚したって孤独を感じることはままあるもので、それは母になった友人たちも、子どもがいたって孤独だよと言っていた。
だけど、こんな日がたまにあるなら、孤独もまぁいいかと思える気がした。それくらい、ハッピーな時間だった。
酔っ払ってキャッキャと騒ぐ私たちを、夫が車で迎えに来てくれて、友人を送り届けてから家路に着いた。快く送迎をしてくれた夫って、いい人だなぁとしげしげ思ったりした。
そんな日があって、私たちはまた毎日に戻っていく。
いつか彼女の子どもたちとも一緒に飲める日が来たりするんだろうか。まてよ、それって私、何歳?
まぁいいか。そのときにまたいいお酒が飲めるよう、息抜きながら今を生き抜きましょうよ。
あ、お後がよろしいようで。
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