複雑な世の中を幸せに生きる
始まりはたまたまから
地区の資源回収で古本を引き取ってくれるというので、いらない雑誌や本を集めていたところ2011年12月の雑誌【 ”ピ~”レジデント 】を発見。(”ピ~”を入れてみましたが、いかがわしい本ではありません。)
パラパラめっくってたら 勇気と活力が湧く「心の科学」という見出しでスリランカの上座仏教の長老による仏教の話が載っていました。仏教の話で科学って何? 怪しい 昔読んだっけかな?読んでないような気がするけど。と読み始めました。たぶん雑誌の思うつぼなのでしょう。わたくし単純で、不器用な男ですから。
ブッダが説いたのは宗教や信仰では無く、例えば物理、科学が物質を対象とするのに対し、ブッダは心と生きることを研究した科学でした。だから、阿弥陀仏などの存在も認めないし、菩薩への信仰も無く、極楽浄土があるともいわない。
ん~ 衝撃的!!
お寺さんにはいろんな仏像が飾られているし、こんなこと言ったら怒られるぞ と思いましたが上座仏教とはブッダの教えに最も忠実なもので、世界各地に広まり、各地で独自に解釈、装飾される前の仏教なのだそうです。
心と生きることを研究した科学、そして人間ブッダにとても興味が湧いたのでした。
ゴータマさん悩む
紀元前6世紀~5世紀に今のインドに実在した人で釈迦国の王子。名前はゴータマ・シッダールタ(後のブッダ。ブッダとは悟った人の意味だそうです)。釈迦国は世襲制の王国では無く、数人の名家の長が輪番制で王位についていたためゴータマさんは次の王にはなれない存在だったそうです。このゴータマさん(略してゴーさん)は弱肉強食・食物連鎖に心を痛め、老い、病、死を意識するようになり、ある日妻と子を置いて29歳で蒸発(出家)しました。(大昔の人なので解釈にも所説ありますが)
うちっだったら、突然姿を消したらカミさんキレるだろうなとまず思ってしまう私は凡人なのでしょう。
そしてゴーさんが最初におこなったのは座禅でした。何も考えない無の境地の禅の師匠に出会い学びました。その次に学んだのも禅の師匠で何も思わないことも思わない境地を学びました。
コレって 何も思わないことを思わないことも思わないことも思わない・・・・・・無限に? と心配しましたが、ゴーさんはこの2つで、禅では自分の望む境地にたどり着かないと考えて次に行ったのが苦行だったようです。
身体や心を痛めつけると言ったら分かりやすいかもしれません。そんな苦行の中で一番の苦行は断食でした。それでもゴーさんが求めていたものには届かなかったようです。
紆余曲折を経てたどり着いたのが精神を自由にフラットに生きること。自分にとって一番ふさわしい道を見つけ、心が動じることなくその道を歩いていくことでした。
生きていれば苦しむことがありますが、その原因は世間の物差し・世間の価値判断で生きているから。それらが煩悩となって苦しむのだとゴーさんは言います。解決するには ものの見方や考え方、言葉使いや行い、生活、生き方などを通して欲望をコントロールすること。なぜかと言えば欲望を満たしても更なる大きな欲望が更なる苦しみを生むだけだから。
また、勝者は敗者に感謝すべきだ。世の中の生き物は敗者により生かされているのだから。敗者は卑屈になる必要はないし、世の中に無くていいものなど一つもないとも言ったのでした。
過去、未来に囚われず、今できることを熱心に行い、人と比べることなく今日は良い日だったと言えるように生きるようと。
ゴーさんはみんなの心の平安を願って生きた人でした。身分制度が厳しく虐げられている人がいて当たり前の、その時代のなかで、どんな状況に置かれても人々を救おうとしたひとでした。
古い時代の分かりやすさ
ゴーさんの話もそうですが、いつの時代も大事なこと、本質は変わっていないんだなと感じます。
現代は情報が多すぎて糸が複雑に絡んで解決策が見えなくなっているけれど、絡んだ糸を一つ一つ解きほぐしてくれる。古い時代の話はそんな感じがするのです。
同じ意味で紀元前の中国の謎のおじさんもいます。
謎のおじさん
紀元前の中国の春秋戦国時代に、わずか二巻81章 約5,000字の書物を残しただけの人が。いまだに語り継がれている。それが謎の多い人、老子です。人々が心穏やかに生きられるように、老子は社会全体を幸せな方向へ進めようと考えた人です。そんな老子の書いた文章で気に入っているものをいくつかご紹介します。
28章 強さを知っていながら弱さにとどまる。栄誉を与えられながらも、腰が低い。
31章 戦争で殺した人の数が多ければ多いほど、相手を想って悲しみですすり泣く。
45章 本当に完全な物は何かが欠けている様に見えて、その働きは衰えない。
76章 生まれるときは柔らかく弱弱しい、死ぬときは堅くこわばっている。草木も同じで固くこわばっているものは死が近づいている。体・心も柔らかで弱弱しいものが良い。
80章 うまい食べ物を食べるのではなく、食べ物をうまいと思う事。同じように、衣服を心地よいと感じること。住まいが落ち着くと感じること。毎日を楽しいと感じること。
老子の話には正しく生きること、腰を低く生きることがよく出てきます。私は大好きです。でも、正直者は損をする、いい人は食い物にされるという考えも常識としてあるのも事実です。私がボランティアや骨髄バンクを人に勧められるようになるまで10年以上かかったのも、優しい人にボランティアを勧めて、その人が損をしたら申し訳ないという、いい人は食い物にされるの想いが少なからず心にあったからだと思っています。そのモヤモヤの解決のきっかけになったことは2つあります。
一つはボランティアをすることで、前向きに生きれるようになったこと。
もう一つはGIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代 という本に出会えたことでした。
今回はその本を紹介させて頂きます。
GIVE&TAKE「与える人こそが成功する時代」アダム・グラント著
人が大きな成功を収めるかどうかは、自分が「ギバー(与える人)」「テイカー(搾取する人)」「マッチャー(バランスをとる人)」のどれなのかが大きく関わっているそうです。組織心理学者で教授でもある著者は10年以上グーグルからアメリカ空軍にいたるまで、こうした選択について研究してきた人ですが、この人の研究だけでなく過去30年以上の社会科学者の研究で、これらの選択こそが成功に決定的な影響をおよぼしていることが分かったそうです。
調査によると、成功から一番遠い位置にいたのは「ギバー(与える人)」。それでは一番成功していたのは誰かといえば、それも「ギバー(与える人)」でした。そして、「テイカー(搾取する人)」「マッチャー(バランスをとる人)」はそこそこの成功にとどまっていたそうです。
それでは成功するギバーと失敗に終わるギバーとの違いは何かというと、失敗するのは自分を犠牲にして人を助けるギバーなのに対し、成功するギバーは相手の利益が大きくなるように努力するだけでなく、自分のことも大切にする人だそうです。失敗するギバーが陥りやすいのは、信用し過ぎること、相手に共感し過ぎること、臆病になり過ぎること だそうで、愛想のいい人を誰でも善人だと思って無欲で提供することで、テイカーに食い物にされてしまったり、必要なものを請求できなくなったり。だからギバーは、相手がテーカーの場合にはマッチャーとなる勇気、断る勇気、要求する勇気が必要なのです。
この本は、私に優しいから、正直者だから といって損はしないんだよ。逆に成功することが出来るよ。そう教えてくれました。この本との出会いに心から感謝しています。
気になった人はぜひ読んでみてください。
自分の生き方は自分で決める
世の中にはいろんな生き方があり、考え方があります。
私の考える最高の幸せは、自分だけでなく、周りのみんなも幸せであること。年老いた時に穏やかに、にこやかにお茶を飲む自分と妻や家族。そして友達や知り合いとも穏やかに、にこやかに趣味を楽しんでいることです。その最高の幸せは今の生活の延長線上にあると感じています。だから相手にしてあげられることが無くても、今のこの時に笑顔や優しい言葉だけでも忘れないようにしています。そして毎日を楽しんでいます。
あとがき
ブッダの初期の教えには、いろんなありがたい仏様も存在しないし、菩薩の信仰も無く、極楽浄土もないと書きました。では、あとから追加されたであろう、装飾されたもの。阿弥陀仏などや菩薩への信仰、極楽浄土がありがたくないかと言えばそうではありません。それぞれの時代に、それぞれの地で沢山の人々を苦しみから救おうといろんな方々が苦労した結果、想いを込めた結果生まれた優しい存在なのだと思います。
日本でも浄土宗を開いた法然さん(1133~1212)というお坊さんは仏教が貴族階層の政治理念であり、厳重な管理にあった時代に、全ての人を救おうと分かりやすく広めていきます。その際に後鳥羽上皇の逆鱗にふれて、四国に流されてしまうことになりました。弟子からも念仏の教えを説くことをやめたた方が良いのでは?との話も出る中でも「死刑になろうとも念仏の教えを説かなくてはいけない。」と説くことをやめず、「流刑を恨んでいないし、前から田舎で念仏を広めたいと思っていた。その機会を与えてくれたこの流刑に感謝する。」と言いながら渡っていったそうです。そのような方々の優しさに包まれて今の形になったものだと思っています。だから私もお寺さんにいった時は有難い仏像さんに手を合わせて「ありがとうございます。」と言いながら心落ち着かせて帰ってきます。
ここまで長い文章を読んでくださりありがとうございました。
最後になりますが悩んでいる人とそのご家族とその恋人、その友達が穏やかな幸せにあふれた生活を送れることを祈ってやみません。
参考
ブッダの教えがよくわかる 幸せに生きる仏教の知恵 ひろさちや 2010年9月30日 第一刷発行。
老子:小川環樹おがわたまき2005年4月10日発行
自由訳老子 新井満あらいまん2007年3月30日発行
念仏の聖者 法然 中井真孝 2004年6月1日発行
法然 ひとすじの道 藤井正雄 1986年1月29日発行
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