自社サービス「ならでは」の作り方〜プロダクトの再PMFに挑んだプロセス紹介〜
グルメサービスRettyでプロダクトマネージャーをしています、田中大登(@tnkdaito)です。
現在はグルメサービスが多く存在する中で、Rettyを指名利用する理由をユーザーさんに感じてもらえるよう、チーム一丸となり模索しております。
このnoteでは「どうすればユーザーさんにRettyを指名利用してもらえるか」を模索し進めたプロダクトの再設計プロセスを、代表してまとめます。
こんな人に読んで欲しい
・自社サービスのファンを増やしたい方
・PMFに苦戦されている方
・既存サービスを再設計したい方
・成長に伴いサービスの色が薄れつつある危機感をお持ちの方
前提1_そもそもPMFとは
PMF(プロダクトマーケットフィット)している状態とは、そのプロダクトが提供する価値が、マーケットにおいて浸透している状態のことです。
「問題の定義」→「適切な解決策の提供」→「解決策が広く浸透する」というプロセスを経て、プロダクトはより大きく価値あるものに進化します。
浸透して利用者が増えると新たな課題も表出するため、このプロセスは繰り返します。繰り返すほどプロダクトはより大きくなり、結果より大きな価値提供ができるようになります。
PMFに関してこちらnoteが参考になるので興味がある方はご一読ください。
前提2_Rettyが再PMFに挑む背景
Rettyは「Bestなお店が見つかる」というコンセプトを元に提供しているグルメサービスです。大衆による評価が高いお店からお店を探すより、自分の好みや嗜好性にあった人からお店を探す方が、いいお店に出会えるよね。というソリューションを提供するサービスです。
アプリを中心に一部のユーザーさんは、Retty内で好みにあうお店を探す方法を認識し積極的に利用してくださっています。一部だけでなくより多くのユーザーさんにこのお店探し体験を提供したいと課題意識を持っています。
今まではグルメサービスとして当たり前にある機能や品質の担保のため、開発を進めてきました。具体的には情報の整備やネット予約機能の提供など、お店を探して予約するまでの体験をストレスなく行えるレベルにするための改善です。
定性/定量的にプロダクトを調査した結果、Rettyならではの価値を一部のユーザーさんだけでなく「誰でも分かりやすく利用できる」ようにすべきタイミングが来たと判断し、より広い範囲でPMFしている状態を目指しました。
結論_プロセスの全体像
より広い範囲のPMFを目指して行ったプロセスを図に起こしてみました。
各事項を詳細に記載します。
詳細1_ユーザーさんの傾向を分類
こちらは元スマートニュースの西口さんが顧客起点マーケティングという書籍の中で紹介されている9セグマップのフレームワークを活用しました。
9セグマップとは以下図のように利用頻度とブランド選好度でユーザーさんの傾向を分類するフレームワークです(以下図は書籍から引用)
これをネット調査やアンケート調査を元に作成し、自社サービスや競合サービスと合わせて、ユーザーさんの傾向が現在の市場でどのセグメントにどのくらい寄っているかを可視化しました。
詳細2_ボトムアップ/トップダウン調査
ボトムアップ調査として、9セグマップの積極ロイヤルに分類されるユーザーさんに直接お話を伺う。他サービスで積極ロイヤルなユーザーさんにお話を伺うなど行いました。内容の例を挙げるとどんな経緯で該当サービスを使うようになったか、どんな理由で該当サービスを選好するかなどです。
RettyではUXリサーチとして毎週ユーザーさんと直接お話しする機会があるので、詳細に興味がある方はこちらをご覧ください。
トップダウン調査では、お店探しを理論的にモデリングし洗い出しました。その上でボトムアップ調査から得たインサイトやニーズを分類/整理することで、どのニーズを満たすためにどんなプレイヤーが存在するかが見えます。
詳細3_プロダクトで満たすニーズ定義
ボトムアップとトップダウンの調査により、見えてきたRettyで満たすべきニーズ(仮説)が多くのユーザーさんが抱えるニーズなのか検証します(以下図の③)
これらのプロセスを経て、ユーザーさんがグルメサービスに求めるニーズを洗い出しました。すべてのニーズを1度に満たすことはできないため、そこからRettyがどのニーズを注力して満たすべきかを決断する必要がありました。
・すでに一度PMFした価値をより強くするもの
・使い続ける理由となる深いニーズであること
・より広く多くのユーザーさんが抱えるニーズであること
を前提にRettyが満たすべきニーズを決定し、そのニーズが満たせることをRettyを利用する理由(=プロダクトの価値)だと定義しました。
詳細4_提供価値要件の定義
Rettyで提供すべきコアバリューの定義後は、コアバリューの解像度を向上させる必要がありました。具体的には他の人ってどんな人か。1人なのか複数の人なのかなどです。
解像度が低いと提供すべきプロダクトでの体験がブレてしまいます。
再度ボトムアップ調査を繰り返すことで、当該ニーズが満たされたと感じるか要因/要素を掴めたため、それを提供価値の要件として設定しました。
具体的には他の人といってもグルメに詳しそうな人がいい、1人の意見より複数人の意見の方が安心できるなどです。
詳細5_方向性の検証
先の要件を満たすためのアイデアを模索します。
いきなり具体策は考えず、ニーズを満たすアイデアの方向性を模索します。
他の人のオススメをスコア化する。グルメに詳しい人のみがお店のオススメができる。など、意見を出しては棄却し、良さそうなアイデアがあれば再度ボトムアップ調査をするプロセスを繰り返します。
結果として〇〇好きのオススメ、というアイデアの方向性が固まりました。
詳細6_アイデアのコンセプト化/定義づけ
ここから先の方向性を具体的にしていきます。
・おでんを好きな人ってどんな人なの?
・なんでおでんをオススメするの?
・その人はどうおでん屋さんを探すの?
・その人のオススメってどんな価値があるの?
・価値を感じてもらうためには何が必要なの?
・おでん好きじゃない人はどう思うの?
など方向性が見えても、検討/定義すべきことが多々あります。
定義された内容を元にプロダクト全体の理想像を設計していきます。
詳細7_理想のユーザーシナリオ作成
ユーザーさんがプロダクトの利用価値を認識し享受するには、点としての機能提供ではなく線/面でのプロダクト設計と価値提供が不可欠です。
線/面でのプロダクト設計のために、ユーザーさんがどうRettyを利用すると快適かつ価値享受ができるかを図示したユーザーシナリオを作成しました。
注意点として作成したシナリオが作成者のエゴになると良くないので、ユーザーさんの気持ちや使い方に憑依できるメンバーで作成しました。
よくユーザーさんの感情を書き出したりもしますが、あれは運営の押し付けになるので入れてません。またユーザーさんの利用チャネルを網羅したもの(=カスタマージャーニー)ではなく、価値享受のための最短最適チャネルの設計だと意図的に用途を限定しています。
詳細8_全体でシナリオとロードマップのすり合わせ
出来た理想のシナリオに対して、課題と解決策をばっくり書き足します。
課題:なぜ現状は理想に届いていないのか
解決策:課題解決のために何をやるべきか
例を挙げるとお店のオススメ投稿が大変という課題に対して、投稿ハードルを下げる、投稿するメリットを伝える、投稿後の楽しみをつくるなど、解決策は抽象度が高い状態で記載をします。
やるべきことに対して優先順位付けを行い、並び替えて時間軸を加えることでロードマップらしきものを作成しました。
上記シナリオとロードマップを部門を超えてすり合わせることで、全社一丸となって進むことができます。チームや部門が異なっても機能改善/開発が点で行われることなく、線/面としてプロダクト全体における位置付けを理解した上で進めやすくなります。
詳細9_具体的な設計と検証
ここまで進めることで具体的な設計の際、プロダクト全体での理想体験と前後関係が認識できているため、設計がしやすくなります。
以降は詳細な価値や機能の定義⇄プロトタイプを用いて議論や検証を繰り返します。
アウトプットによる価値提供が精度高く見えてきたタイミングで、実装前検証を広い範囲で行います。詳しくはこちらのnoteに書いております。
最後に
上記プロセスを経てリリースしたものがこちらです!
ラベルが変わっただけじゃないかと思われるかもですが、これはまだ第一段目です。
今後はさらに「詳しい人たち」による「オススメのお店」から、お店探しがもっと楽しく便利なるよう機能改善を進めていきます。
このプロセスを二人三脚で進めたリードデザイナーが具体化フェーズの工夫をまとめたnoteもあるのでぜひこちらも見てもらえると嬉しいです!
またこのプロセスを見て好感や興味を持った方はぜひ以下から気軽にご連絡ください!引き続きよりよいサービスにむけて一丸で頑張っていきます。
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