山月記/中島敦

 読了。ネタバレ注意報が必要なのかわからないほど有名な話だが、一応注意書きしておく。ネタバレあり。

 虎となった一人の男。その友。久々の邂逅に、二人は話をする。なぜ己が虎となったのか、己の詩をどうか後世に伝えてほしい。虎となった友人の頼みを、その友は聞き届ける。虎となった男は、残された自分の妻子のことより自分の詩のことを優先すべきではなかった、これが己の間違いなのだと言う。最後に、その友は行く道から振り返って、虎と成り果てた友の姿を見た。それから藪に飛び込んだ虎は姿を現さなかった。

 「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」という名言がある中島敦の代表作である。高校時代に誰もがこれを読むと思うが、わたしはアホなので習ったことをすっかり忘れてしまった。なので、思ったことや感じたことを素朴に書こうと思う。

 まず、虎と化した男の深い絶望が感じられた。詩で名前を残そうと思っていた男が、なかなか名前を上げられず、自分がなめていた人間がそのたゆまぬ努力によって、自分よりも才能のない中詩人として名前を残していることに対する、なにか自分の中での後悔のようなもの。虎となった男は、己の才能を過信して努力しきれなかったのではないか。いつか男は気を狂わせ、寝床から飛び出し、いつの間にか虎となっていた。うまく言い表せないが、男の驕りが男を虎とならしめたのかもしれないなと思った。いや、わからないが。

 代表作とだけあって非常におもしろい物語だった。いつ読んでも名作はあせないのだな。だから後世に伝えられるのだろうな。中島敦の物語は大体おもしろいと父親から太鼓判を押されているので、どんどん読んでいきたい。


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