百面相役者/江戸川乱歩

 読了。ネタバレあり。

 学校教員である「私」と新聞記者のRは親しくしていた。ある日、Rが「私」に見せたいものがあるという。Rに連れて行かれた先は劇場だった。そこで「私」は、巧みに変装をする役者を見る。その変装は鼻や耳の形まで変えるほどの見事なもので、「私」は圧倒される。

 劇場からの帰り道、Rは「私」に家まで来てほしいと言う。そして家にて、とある新聞記事を見せる。墓荒らし、死体の首を切り取って盗む残酷極まりない事件の記事だ。犯人はまだ捕まらずとその記事にはあった。そのあと、Rは「私」に一枚の被害者の写真を見せる。

 その被害者の写真を見て「私」は驚愕する。その写真に写っていた老婆は、先程劇場で見た百面相役者の変装の一つと相違ないのだ。もしや、百面相役者がこの残虐な墓荒らしの犯人で、切断した首の顔を使って変装を遂げているのではないか? Rはそんな推論を立てる。そして、この事件について深く調べようと決める。

 それから少しして「私」がRに会いに行き、例の事件はどうなったのかとRに問うと、Rは笑って「あれは空想だよ」と言う。全部自分の空想で、犯人はもう捕まっているのだと。それから百面相役者がどうなったのか、その行方は知れたものではないのだった。

 いや……絶対「空想だよ」と笑ったRは殺されていて、「私」がそのときに会ったRは百面相役者本人だろ……と思った。Rは真相を突き止めようとして殺されてしまったのだろう。「私」にR本人ではないと思わせる演技力は役者である賜物だろう。

 頭を使わなずともわかりやすい話だった。なんというか、江戸川乱歩くんの本はテーマ性を重んじるでなく、エログロの雰囲気を味わえる作品ばかりだな、と感じた。それなりにおもしろい物語だったので、エログロの雰囲気感じたい方は是非手に取っていただければと思った。

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