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「最悪」のレンジが広い
今、日本は「最悪」のインフレが起きている。
アイスクリームを洋服に落としちゃったとき、「うわっ、最悪!」というが、言うほどではない。アイスクリームをノートパソコンの上に落としちゃう方がもっと最悪だ。
範囲をアイスクリーム以上に広げれば、もっと最悪なことは世の中にごまんとあるはずだ。アイスクリームを落としちゃうどころか命を落としちゃったときくらいが「最悪」だろう。
落としちゃったものが「アイスクリーム」から「命」まで幅広く「最悪」を使用するとは、一つの言葉で表現するにはいささかレンジが広すぎやしないだろうか。
そして、「最悪」の幅が広いから、日本人はなんとか「言外の表現」で最悪の度合いを伝えるはめになっている。
あんまり最悪じゃないときは、「サイアクw」といった感じで末尾に草をはやして軽めのタッチを演出する。
まぁまぁ最悪なときは、「うわ~サイアクだ…」といった感じで三点リーダを末尾に添えて結構まずいことをアピールする。
とてつもなく最悪なときは「最悪の事態だ」と言った感じで、常套句を超えた額面通りの使い方をして本当に最悪であることを演出する。
だが思い出したい。日本語は表現が豊かなはずなのだ。最悪に変わる言葉はいくらでもある。
あんまり最悪じゃない時は「危ない」「まずい」などだ。
まぁまぁ最悪な時は、「やばい」「落ち着け」などだ。
とてつもなく最悪な時、これはもう「最悪」だ。
では、「最悪」を使うほどのとてつもなく最悪な時とは、どういうときだろう。ここで「最悪」のレンジをしっかり決めて、今後ぶれないようにしていきたい。
「もっとも悪い」ということだから、各方面で命に係わるくらい悪いときに使えばよいだろう。「最悪」という言葉が辞書に載っているとして、例文を考えてみる。
例えば、受験に失敗した時の場合、
「合格発表の掲示板を見ていて自分の番号がないからもう一度探していたら掲示板が倒れてきて脊椎を損傷した。最悪だ。」
うん、いい。命に係わるレベルだ。受験番号がなかったくらいまだまだ「やばい」くらいのレベルだろう。
会社で1億円の損失を出してしまった時の場合、
「取引先の人との最終契約日に朝寝坊した。遅れて契約締結会場に向かったら、相手方が怒ってしまい、契約が白紙になってしまった。その時契約会場が老朽化して崩れて生き埋めになってしまった。最悪だ。」
これもなかなかいい。命に係わるレベルだ。1億円のレベルの損失などまだまだ「落ち着け」位のレベルだ。「最悪」を使うほどのものでもない。
うーん
「最悪」って生きている限りあまりないんじゃないかな。
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