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自分らしさは大事にするか

「自分らしさを大事にしよう!」とはどういうことか。「自分の得意なことを伸ばそう」とか、「あんまり人の真似ばっかりすんなよ」とか、そういう意味だろう。

確かにそうだ。人にすぐ影響されて自分らしさをなくしてしまうのはもったいない気もする。また、無理して人と同じことをして成果を出せないのは苦しい。

個性を大事にする多様性時代のスローガンでもありそうだ。

ただ、これは言い換えると「今の自分が変化しないように頑張る」ということともとらえられる。

こんなことしていいのだろうか。

極端に考えるとわかりやすい。
赤ちゃんが20年間自分らしさを大事にしたらとんでもない大人になる。

おしゃぶりをくわえてて、それが可愛い可愛いともてはやされていても、大人になるまでおしゃぶりをつけ続けることはないだろう。

僕たちは、赤ちゃんの頃から、少しずつ外部環境に影響され、洗脳され、今の自分が出来上がっている。

「自分らしさ」というのは刻々と変わっていっているわけだし、「自分らしさの変化」を「成長」と言うこともできそうだ。

さて、僕達はここにきて「自分らしさを大事にしよう!」と言って、今まで縦横無尽に変化させてきた「自分らしさ」を固定したとしよう。

今現在の自分のスナップショットを「自分らしい」としてずっと固定し続けるのだ。

「大丈夫かな?とりあえずまだ成長したほうが良くない?」

という声を尻目に

「いや、今の自分らしさをもって、固定します!」とするわけだ。

「もったいないよ、新たな自分を発見できなくなるよ?」

と言われても

「いや、今の自分らしさは結構気にいってるし、ニーズもある。金にもなってるし、もう変化しません!固定!」

と言ってカチーンと固まるのだ。

これは危険だ。残念だが「"今現在"の自分らしさ」に価値があるかはほとんど観測不能だからだ。

「いや、今の自分が一番魅力的だ!間違いない!」って思うこともあるだろう。だがそれは違う。自分の魅力とは、今現在の外部環境から見た評価だ。

外部環境は刻々と変わる。今は魅力的でも次の外部環境では魅力的ではなくなることも大いにある。

演歌がうまく歌えれば大スターだったのに、今ではそうじゃないのと似ている。

自分の魅力を今現在の魅力で固定してしまうと、うずくまって「外部環境よ変わらないでくれ~頼む~」と祈るようなギャンブル疲れを伴う人生を歩むことになる。

そして、この観測不能な"今現在の自分の魅力"にこだわっちゃうと、"明日の自分の魅力"や"明後日の自分の魅力"が、"今現在の自分の魅力"を上回る可能性をつぶしていることにもなる。

つまり今がピークになって、明日以降は消化試合になってしまうということだ。死ぬまで消化試合は張り合いがない。

なので、自分らしさは大事にしない方がよい。いさぎよく明日の自分らしさで上書きしよう。




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のろさとし | 実業家 | 製造業 | システムエンジニア
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