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2020年6月7日アン・フーンさん法話

6月7日 アン・フーンさんによる全国のサンガメンバーに向けてのダルマトーク

(鐘の音)
この鐘の音が宇宙へと染み渡っていきますように。
最も暗いところに住んでいる生物にもこの音がはっきり聞こえますように。
理解と慈悲が彼らに届きますように。
困難から解き放たれて、恐れや悲しみの輪から抜け出すことができますように。

(鐘の音)

皆さんも今アメリカに起こっている非常に大きな苦しみについてお聞きになっているかもしれません。パンデミックが世界中に広がりました。そしてここ数週間でアメリカの中に非常に大きな苦しみが起こっています。

そのことによって、私の中の小さな女の子がとても怖がっています。そしてこの出来事が、私たち一家がボートにのってベトナムを去った時のことを思い出させます。

それは1972年4月のことでした。私たちは自由を求めていました。私の両親はそれがとても危険な旅になることになることはわかっていましたが、子供たちの未来のために命をかけてベトナムを出ることにしました。

30人が乗ったボートが国際海域に出たときに、大きな嵐に遭遇しました。そのとき私は17歳で、私たち家族の子供の中で一番年上でした。子供達はボートの底に滞在するように言われました。それはとても小さなボートで30人が乗っていて、そのうちの6人が私の家族でした。

私は嵐がやってきたとき、そのボートの中に恐れや緊張が広がっていくのが見えました。子供達は外を見ることができませんでした。子供達は海を泳ぐことができなかった。私の父親はボートの端でタイヤを抱えていました。


私たちは4日間を過ごしたあと、マレーシアの海岸に着きました。私たちはボートピープルと呼ばれていました。私たちが岸に留まることを許されたのは、ボートが壊れたからでした。私たちはそこで上陸許可を待っていましたが、大きな波がやってきて、陸に投げ出されてしまいました。これは長い話なので、次に日本に行ったときに、続きをお話したいと思います。

私たちはなんども海賊に襲われました。でも私たちは生き残ってこの国アメリカにたどり着きました。

そして私がこの話をするたびに思い出すのは、私たちと同じように自由を求めて、失われていった命です。自由はとても大切なものです。私たちは12月27日にアメリカにたどり着きました。この国は自由で知られている国です。

ベトナムでは全ての人がマスクをつけることを義務つけられていて、何の問題もありませんでした。ベトナム政府はコロナウィルス拡散防止に成功しました。ベトナムは貧乏な国ですが、今の所感染を防ぐことに成功しています。

アメリカは自由の国として知られていますが、そのため多くの困難を経験しました。コロナウィルスが広がったときに、マスクの着用を拒否する人がいたのです。アメリカでは拒否する人にマスクの着用を強制することはできません。全ての人がやりたくないことはやらない自由があるのです。法律でマスクを着用する法律があるわけではないのですから。

人々は亡くなっていくのを見るのは悲しいです。マスクをつけない人は自分の体が強くて、ウィルスが入っても戦うことができると思っています。でも、彼らはお年寄りや病気を抱えている人のことは考えていないのです。個人主義はこの文化の中ではとても強いです。

2006年に私の父は亡くなりました。もし父が生きていたら、アメリカにおいて自由が何を意味しているのか、もっとよく理解したと思います。

時として自由が苦しみを生み出すことあります。私たちのプラクティスでも自由や解放について語ります。それは政治的な自由ではありません。それは心の自由です。

苦しみを作り出す思考や考え、行動の習慣からの自由です。

アメリカでは自由の名の下に人々が苦しんで死んでいっています。それは真の自由ではありません。それは個人主義であり、自己中心的な自由です。他者と切り離された自己という信念に基づいた自由です。

仏陀は教えてくれました。立ち止まること、深く考えること、命が繋がっていること。それは人だけでなく動物や植物、海、岩や川の小石と私たちが繋がっているということです。

健康も幸せも苦しみも、自分だけのものではありません。それは家族、国の苦しみ、世界の苦しみとつながっています。


だんだん年を重ねていくと、様々なことに気がつきます。この道を歩いてく中で様々な人に出会いました。だんだんと、若者や若くない人もなぜドラッグなどにはまってしまうのか理解するようになりました。

私自身も若かった時には多くの困難を抱えていました。苦しみから隠れたいと思っていました。それはまるで小さなうさぎのようなもので、穴を掘って隠れたい。私は外の世界の音は聞きたくないし、見たくない。そのようにして自分を隠したいと思っていました。

若者そのような思いを抱えています。問題や苦しみから自分を隠すために、ドラッグを使ったり、お酒を飲んだり、買い物をすることでごまかそうとするのです。

私たちがアメリカに来た後に両親が話してくれました。船の旅の時は周りにあったのは水だけでした。嵐の時にはボートの隙間から外を見上げていると、あまりにも波が高かったので空は見えなくて周りに見えるのは大きな高い波だけでした。

ここ数週間、アメリカにも大きな波がきています。抗議運動がアメリカ全土で広がっていて、暴力、警察に対する抗議が起きています。

私の中の小さな女の子が怖がっています。でも、私たちの両親が言ったことを思い出しました。私たちはあの高い波を乗りこなすことができたのだから、今回もできるはずです。でも、どうやって?

私の中には小さな少女がいます、でも私の体は大人になっています。どうやって大人の私が私の中の少女のケアをしてあげることができるでしょうか。

昔は私は何年もに渡って、大人になっても隠れたいと思っていました。自分の感情を隠して逃げたいと思っていました。でも今の私はそれをする必要がありません。私のもう一つの体を持っているからです。それがダルマボディ(法身)です。ダルマボディというのは私の実践の体です。これはマインドフルネスと集中力と洞察からできています。


私のダルマボディは、私の小さな女の子を抱きしめて、怖れや絶望の波を乗り越えるのを助けてくれます。

苦しみの時、自分自身を隠して、麻痺させて何も感じなくして、目を閉じていることもできます。でも、もう一つの道は今この時に苦しみと共にいることです。

私たちは人生や周りを見渡すと人間の傾向を見ることができます。痛みを回避する傾向があり、痛みに直面しないようにします。それは私たちが生き残る本能です。

そうでなければ、私たちは苦しみの海の中で溺れてしまうからです。だから、過度に消費をしたり、仕事中毒になって、ずっと忙しくするのです。そうして、痛みや苦しみ、さみしさや孤独に出会う時間をなくすようにするのです。だからマインドフルネス、集中、洞察の実践をすることによって、ダルマボディが現れるように実践する必要があるのです。

ダルマボディはどこか外にあるものではありません。私たちの中の種のように存在しています。マインドフルネスのプラクティスすることによって、私たちの中のダルマボディの種の芽を育てることができます。ダルマボディはサンガのことです。

ダルマボディは私たちを抱きしめてくれます。苦しみの海で溺れそうな私たちを苦しみの海の外へと連れて行ってくれます。私たちが一人でプラクティスすると、ダルマボディの力はとても弱いです。ダルマボディを強く健康にするために、サンガでプラクティスする必要があります。これこそが最も強いあなたを守ってくれる防御になるのです。あなたは本当の意味で守られます。

ダルマボディとは、揺るぎなさ、喜び、怖れのなさ、慈悲などです。ティクナットハン 師は90歳を超えています。脳梗塞の後、何年も車椅子の生活をしていますが、近くにいるとても強いダルマボディを持っていることがわかります。彼の存在感からそれは分かります。ダルマボディは私たちの肉体の健康状態、才能、問題解決能力によって条件付けられるものではありません。

ダルマボディはプラクティスのボディなのです。苦しみ、混乱、怒り、憎しみの岸から、平和、慈悲、自由、解放の岸へと導いてくれるボートなのです。だから私たちにはダルマボディが必要です。ダルマボディが顔色が悪くて不健康だと、私たちは苦しみ続けることになります。

息を吸う時に息を吸うことに気がついて、息を吐く時に息を吐くことを感じると穏やかさを感じることができ、調和や爽やかさを感じることができます。呼吸はダルマボディをミルクの栄養のように滋養を与えてくれます。

マインドフルに呼吸をしたり、歩いたり、リラクゼーションをするときに、意識は休んでいます。何をしていてもエネルギーを与えられます。ダルマボディはブッタボディということもできます。ダルマボディが健康なら、恐れは少なく、幸せで、忍耐力があり、もっと自由になります。

ダルマボディの素晴らしいところは、プラクティスをすると育っていき、強くなっていくということです。サンガで一緒に育っていきます。私のダルマボディはあなたのダルマボディより強いとか弱いとかはありません。サンガメンバーが集まってプラクティスするとサンガボディとなり、強くなり、ダルマボディが強くなる。みんながより幸せを感じることになるのです。

私たちがこのように集まるときは、私たちのサンガボディ、ダルマボディを養っているのです。これはお祝いです。サンガボディもダルマボディもここにあるのです。

このように座って呼吸をするときにサンガボディ、ダルマボディのプレゼンス(存在)に気がつくことができます。

それでは一度鐘を招いて、一緒に呼吸をして鐘の音を楽しみましょう。

シェアリングや質問がある場合は質問をしてください。

質問

「先日信頼関係を築いていた方から、一方的に拒絶されるような態度をされて、とても混乱しました。呼吸に戻りマインドフルにメッセージをして、私に非があったかのかどうかやりとりをし、少し落ち着くことができました。ご自身の苦しさが私に向けられたに過ぎないとわかって、少し安心しました。いずれビギンニングアニューができればとも思いました。その人も自分を取り戻すのに時間が必要だと思います。私自身も過去のトラウマも蘇ってきて身体的にストレスが出てしまい、今回の出来事により暴力を受けたように感じて、その人への恐怖も感じています。今日のお話ではダルマボディをプラクティスすることを言われましたが、今は辛さの方が強いのですが、どのようにしたらいいのかアドバイスをください。」

アンフーンさんの回答
「リラックスして呼吸を楽しみましょう。呼吸をして、今ここに安全であるということを感じてください。

効率的にダルマボディを養う方法は、ネガティブな種に水を注ぐことを避けることです。それは自分自身の中にあり、周りの人の中にあります。日々の生活の中で何を選ぶのかということです。美しいもの、リフレッシュさせてくれるもの、自分を養ってくれるものにふれてください。

自分の中にネガティブな考えがうかんできたら、吸う呼吸、吐く呼吸に戻りましょう。自分の呼吸に気づくということは光に照らされるということです。自分の思考がポジティブやネガティブなのか、自分自身に問いかけてください。

自分の思考があり、見方があります。そのことにマインドフルであれば気づくことができます。そして問いかけてください。その思考はあなたの幸せを育んでいるだろうか?それとも苦しみを育てているだろうか?そうすると、分かれ道にいるときに、どの方向を選んだらいいのか分かります。右に行くのか、左に行くのか。より幸せでより健全になるためにポジティブの種に水をやっているのかどうかが分かります。

ダルマボデイを養う二つめの方法はその思考を自分が信じるかどうか、ということです。あなたの頭の中で「あの人は私を傷つけようとしたんだ」と思うかもしれません、でもその考えは本当か、自分に問いかけてみてください。あなた自身がその考えを信じるかどうか問いかけてください。もし信じるなら相手に復讐しようと思うかもしれません。その通りに受け取るともっと苦しむから、「あのように言ったけど、本当はそういうつもりじゃなかった」と、その考えを信じないという選択をすることもできます。このように共に座ることができるとき、ダルマボディはさらに強くなり、育っていきます。

トラウマというのは、過去に起こったことです。マインドフルであれば今は真新しい瞬間だと気がつくことができます。過去に起こったことは過去に起こったことです。今この瞬間にいることにより、今を生きることができます。立ち止まって共にいることを感じましょう。サンガボデイで呼吸をしてダルマボディを養っていきましょう。それが私たちが世界に向かって提供できることです。

喜びと感謝を感じながら手を合わせましょう。

私たちは物理的に一緒にいることはできませんが、マインドフルな呼吸は、私たちを本当の意味でつなげてくれました。

(翻訳・書き起こし:Chizuko Hanaoka & Kumiko Jin)

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アンフーン師ご夫妻は、マインドフルネスの実践と普及に人生を捧げています。心が 動いて、可能な方は、感謝からの寄付によって、先生の生活と活動を支えてください。


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ティク・ナット・ハン「マインドフルネスの教え」
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