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不条理短篇小説

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現世に蔓延る号泣至上主義に対する耳毛レベルのささやかな反抗――。
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2024年11月の記事一覧

短篇小説「み覚」

短篇小説「み覚」

「わかりみが深いわね」
 辛子が頷きながらそう言うと、甘彦は小さく首をひねりながら、
「でもおかしみはないよね」と言った。
 それはけっして楽しい話題ではなかったが、そんな中にも常におかしみを求めるのが甘彦だった。昼飯時のファミレスは混雑していて、なかなか注文の品は届かない。

「でもおかしみが入ると、わかりみが減るじゃない」
 辛子はおかしみとわかりみは、相反する要素だと思っている。
「いやおか

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