「生きがい」の方程式
就活の軸が「働きがい」だった、ときがある。
大学の生協に置いてあった「日本でいちばん働きがいのある会社」という本にひどく感銘を受けて、特に興味をもったワークスアプリケーションズや、Plan・Do・Seeの説明会に参加しESを提出し…選考ではあっけなく落ちた。
やりたいこともなく自分の軸も定まっていなかったあの頃の私は、なにか意味をもって没頭できるものを探していたのだと思う。
大学生最後の冬に3ヶ月で本を100冊近く読んだ、ことがある。
その中の1つ、今でも度々読み返す「コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング」。
ひとことで言えば、「もしドラ」のコトラー版。
マーケティングの入門書として楽しく学べるのはもちろん、ふとした時に、この一節を思い出す。
バンド名は八千代の提案で Zest for Living に決められた。意味は「生への情熱」あるいは「生きがい」。バンド名を決めるためのミーティングで、「Zest」という言葉はマーケターにとって一番大切な言葉なのよと言って八千代はうれしそうに笑っていた。
さらに、著者の解説ではこう綴られている。
良いマーケターになるためだけでなく、我々が生きがいを感じられる、素晴らしい人生を送るためには、やはり「Zest」は必要なのです。誰かを幸せにすることに情熱を向け、情熱を傾けること自体を楽しめるようになる。きっとそれが多くの人にとって「生きがい」を手に入れるための、最も簡単なやり方なのかもしれません。
転職した理由を訊かれたとき、その都度その人ごとに微妙に異なる答えをしているのだけど、仕事で「誰かを幸せにすることに情熱を向け、情熱を傾けること自体を楽しみたい」というのは、私にとってすごく大切なことだなあ、と、いま改めて思った。
***
「モチベーション革命」を読んだ。
目標に向かって邁進することにエネルギーが湧くタイプ、ではない私のモチベーションはどこにあるのかなあ、と興味津々にページをめくった。
ゆとり世代、さとり世代、ミレニアル世代、と様々にラベリングされる私たち。
この本では、いわゆる団塊世代など上の人たちが、お金を稼ぎ、クルマを買い、家を建て…などないものを埋めることをモチベーションにしていたのと対比して、欲しいものや情報がすでに溢れている私たちを「乾けない世代」と表現している。
恋愛では草食系、モノではミニマリズムが流行っているように、性愛や所有欲などへの渇望感は薄まっているのかもしれない。
「最近の若者は出世欲がない」というのもよく聞くし。
そんな「乾けない世代」のモチベーションはどこにあるのだろう?
人の幸せは5種類に分けられる。
・快楽 (Positive emotion)
・没頭 (Engagement)
・良好な人間関係 (Relationships)
・意味合い (Meaning)
・達成 (Achievement)
経済成長が続いていた昭和の幸せは、目標をクリアしたり、新しいことを成し遂げたりする「達成」と、美味しいものを食べたり、旅行やライブを楽しんだりするドーパミン的な「快楽」が占める割合が大きく。
乾けない世代は、「没頭」や「良好な人間関係」、「意味合い」に幸せを感じ、モチベーションになることが多い、と書かれていた。
ピアノを弾くことに熱中し、家族との暮らしや友だちと過ごす日常を愛おしく思い、聞いたこと学んだことが腹落ちしたあとのパワーが凄まじい私。
幸せの五角形を描いたらどうなるかが、ありありと想像できた。
偏愛を共有するコミュニティや、志を共有する仲間が集うオンラインサロン。自分の好きなこと、得意なことをもとにフリーランスとして活躍する人たち。イノベーションを巻き起こしてスケールするスタートアップ。
こういうモノや人たちが、少しずつ少しずつ広まり深まっているように感じる、ここ最近。
良い悪いではなく、これは時代の流れのようなものだし。
漫画化された「君たちはどう生きるか」が爆発的に売れたのは、きっと、今の日本の多くの人が自分の幸せやあり方を探しあぐねているから。
その答えを見つけるには、おじさんがコペルくんに伝えているように、「いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えて」いくしかない、と思う、けれど。
日々膨大に浴びる情報のひと握りを、頭の上辺での知るに留めることなく、腹まで落として納得する。
どうしても心が動いてしまうモノや人への偏った愛や、選択や行動に迷うこともなくのめり込んでしまう情熱、に対してもうひとつ心を傾けてみる。
そういうことを積み重ねていけば、日々の生活は今よりちょっぴり充実して、「生きがい」をぐっと感じられるようになるのかもしれない、と思う年の瀬の夜。
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