今日なしうるだけの事に全力を尽くせば、明日は一段の進歩があるだろう
冒険家 植村直己
●植村直己は、昭和五十九年二月、世界初の冬期マッキンリー(北アメリカ)登頂を成し遂げた後、消息を絶った。
●四十年に母校明治大学のゴジュンバカン(ネパール)登山隊に加わり、初登頂して以来、植村は五大陸の最高峰をすべてきわめたいという夢を持ち、モンブラン、マッターホルンなどのアルプスの高峰やキリマンジャロ(アフリカ)などの登頂に成功した。
●四十五年には、世界最高峰のエベレストに日本人として初登頂。その間、山のほかにもアマゾン川のいかだ下り、日本列島三千キロ徒歩縦断などもやってのけた。
●四十九年から五十一年にかけては、グリーンランドからアラスカまでの一万二千キロの北極圏横断単独犬ぞり走破にも成功した。
●引用の言葉は、この冒険に挑戦するために、極寒地の暮らしと犬ぞりの技術を学ぶべく、エスキモーのもとに出かけるときに述べたものである。
●植村を冒険に駆り立てているものは、いったい何か。植村は言う。
「そこに物体があるから、あらゆる努力と体力の限界に挑戦してみたいだけ」「探検というものは必ずしも未知への挑戦、つまり登山などの地理的探検のみにあるのではなく、人間が持つ夢、希望、可能性に向かって何事をか成さんとするとき、未知の世界に憧れて当然なこと、そこに可能性というやり甲斐も生まれてこようし、私の人生目標がそうしたところにあるだけ」
●植村の冒険が多くの人々に何事かを示唆し、勇気付けてくれるのは、まさにこの点にある。
●植村は、五十四年に、第五回国際スポーツ勇敢賞を受賞した。そのとき植村は、「到達するには険しい道が必ずある」といった。植村は、その険しい道を進み、目標に到達すべくきびしい自己練磨を課し、人間的能力の限界にいどむ勇気を奮い起こさせよ、と教えているのである。
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