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マーケティング戦略|リーチとリッチネスについて

Webマーケティングについては「TANOSHIKA HP作成」サイトにも詳しく掲載しています。
今回の記事では、マーケティング戦略|リーチとリッチネスについて書いてみます。
情報元は『マーケティング戦略』 野口智雄著 です。

媒体の到達範囲と充実度

情報の到達範囲のことをリーチといいます。これが大きくなければ認知には結びつきませんが、大きくても情報が一般的なものだと興味を示す人は少なくなります。個人の情報の充実度のことをリッチネスといいます。

リーチとリッチネス

★テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのいわゆるマスメディアは多くの人々に情報を届けることができます。テレビの視聴率は、関東地方だけでも1%が40万人に当たり、新聞の全国紙では発行部数が約1000万部というところもあります。
★しかし、老若男女、好みもいろいろで、かつての十人十色から現在では一人百色といわれるところまで多様化しています。マスメディアに多額の媒体使用料を支払っても、その情報が有効に機能するのはごく一部の人だけになってしまいます。これでは、費用対効果はあまり期待できません。
★これに対し、セールス・パーソンによる人的販売活動は個々の消費者と対面し、彼らの好みや疑問を聞き、その反応をみながら対応できるため、個人にフィットするようにカスタマイズした情報を提供することができます。このような個人ベースでの情報の充実度のことをリッチネスといいます。
★これまでリーチを高めようとするとリッチネスが損なわれ、リッチネスを充実させようとするとコスト面からリーチが確保できないというトレード・オフ関係がありました。しかし、インターネット利用者が爆発的に増加し、マス・カスタマイゼーションの技法が開発されてから、これまで無理と思われてきたこのトレード・オフが解消されつつあります。

リーチとリッチネスの事例

リッチとリッチネスのトレードオフの解消にはコストをかけなければならない。例えば私が引越したいと思えば、電話帳で業者を探し出し、そのいくつかに電話をかけ、数社から営業マンを呼び、話を聞いたうえで比較検討する必要がある。広いリーチから始まって、リッチネスの高い情報の入手までには時間的コストが非常にかかっている。
また、企業にとって、リッチネス提供の極致である営業マンが一日にアクセスできる顧客の人数は限られているため、リーチを広げようとすると、営業マンの絶対数を増やさざるを得ない。生保業界の生保レディが良い例で、生保業界が、世帯加入率90%を超える、圧倒的多数の顧客に対してリッチネスの高い情報を提供できてきたのは、高いコストをかけ、大量のセールスパーソンを提供することが出来る経営環境にあったからでしょう。もちろん、そのコストは我々が支払う保険料に含まれていたわけですが。
高いリッチネスのリーチを広げていくには、上記の様にコストかければ比較的簡単に実現可能である。クロネコヤマトの宅急便が好例で、配送車一台当たりのリーチ(集配エリア)を狭く取ることで、リッチネスを高め、配送車の台数(およびドライバーの人数)を増やすことで全体としてのリーチを広く取ることに成功した。配送車1台当たりの損益計算から配送エリアを決定したという故小倉社長の慧眼は見事で、周囲からの不安視をよそにクロネコヤマトは、現在では欠くことのできないインフラとして存在している。
逆に広いリーチを高いリッチネスに持っていくのは、やや困難を伴う。インターネットの普及によるHPの存在は消費者に対して広いリーチを提供したが、顧客にとって真にリッチネスの高い情報を手供することが出来ているかどうかに関しては疑問が残る部分もある。情報過多により、どの情報が重要で、どの情報が重要でないかを判断することが出来なくなるためである。
そのような事態に陥ると、既存のトップ企業が、そのブランド力でシェアを拡大すると、『ネット資本主義の企業戦略―ついに始まったビジネス・デコンストラクション』では紹介されている。過剰な情報は、消費者を混乱させ、ネームバリューのある企業への回帰を促すというものである。
リッチネスの高い情報とは、情報の量ではなく、質であることを忘れてはならない。全てを伝えようとするあまり、情報の量だけを増やしてしまうと、真に伝えたいことが何であるかが森の中に隠されてしまう。例えば、ライフネット生命がリーチの広い情報源(インターネット)を使用して伝えているリッチネスの高い情報とは、「保険料は安くていいんだ」ということに尽きる。「何故保険料は安くていいのか?」「何故今まで保険料は高かったのか?」を明確にすることで「安い保険料」はリッチネスを帯びた情報となって消費者に伝わる。
さらに保険業界の例でいうと、保険会社の最大のリッチネスは「信頼性」につきる。生保レディによるGNP営業は顧客との信頼性構築の観点からは非常に合理的で、だからこそ現在に至るまで、威力を発揮していると言える。顧客は、その生保レディが所属している生保会社を信頼しているのではなく、その生保レディを信頼して購買行動を起こしているのである。
信頼というリッチネスは一朝一夕では構築できないが、インターネットによるリーチの広さ、情報のリッチネスを乗せる信頼というリッチネスが土台に座った時に、既存企業が想像もしなかった業界変革が起こるとみている。


最後までお読みいただいて、ありがとうございました。

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