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虚なれば則ち実の情を知り、静なれば則ち動の正を知る
『韓非子』主道篇
●「虚心坦懐の状態でおれば、他人の心情の実態がよくわかるし、心が冷静であれば、周囲の動きを正しくとらえることができる」という意味である。
●これは人の上に立つ者の心得を説いた言葉である。
●心を虚しくする、または虚心坦懐でいるとは、先入観を持たないことである。人の上に立つ者の持つべきでない心情に先入観がある。
●企業のトップが、一つのプロジェクトを遂行するにあたって、
「あの担当者では、この難しい仕事はできない」
という先入観を持った場合には、人事を急に入れ替えても、たいていは成功しないものである。なぜならば、人事配置は、プロジェクトのたびに変更できるものではないし、たとえその担当者には荷が勝ち過ぎる仕事であっても、部下を教育し、激励し、その不足を補ってやって、プロジェクトを完成させるのが、リーダーの務めであるからだ。
●心を静かにするとは、カッカとしないことである。人の上に立つ者は、どんなときでも、常に心を冷静にしておかねばならない。
●ビジネス界の競争でも、本当の戦争でも、スポーツの試合でも、すべて作戦に誤算はつきものである。相手がいることだし、こちらの作戦どおりにスムーズに進むものではない。誤算が生じたり思わざる困難が発生したりしたときに、社員や兵士やプレーヤーがあわてふためくのは当然である。
●だが、こんなときでもリーダーはカッカとしてはいけない。冷めた気持ちでいれば、相手の意図や周りの動きがはっきりわかる。
●相手や周りの動きを正確にとらえてから対策を練れば、不意の困難も克服できるというものである。
●ビジネス社会では、環境は刻々と変わり、競争相手もこちら以上の努力をしている。リーダーたるもの、常に心を虚と静の状態にするのが望ましいのである。