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決意は遅くとも、実行は神速なれ

イギリスの文学者 ドライデン

●ドライデンは、イギリスの大政復古期の文壇で活躍した第一人者。詩、劇作を書き、批評家としても名を成した。

●ドライデンの時代を見通す眼力は鋭く、合理的な決断と神速な実行で成功をおさめた。タイトルの言葉に、ドライデンの実行力の冴えがうかがえる。

●東洋レーヨン会長の田代茂樹が昭和二十五年にアメリカ・デュポン社の開発したナイロンのライセンスを取得しようとしたとき、なかなか決断できなかった。それというのも、ライセンス使用料が二百万ドル(十億八千万円)という高額のためであった。当時の東洋レーヨンの資本金が七億五千万円だったことを考えれば、田代が二の足を踏むのもうなずける。

●しかし、なんとしてもナイロンのライセンス使用権が欲しい。九州の出張から芦屋の重役寮に帰り、床についても、そのことが念頭を離れない。ビールをあおってぐっすり眠った。翌朝、田代は、はっと気づいた。(十億八千万だって、二、三年の分割払いにすれば可能だ)

●田代は、ナイロンのライセンスを買う決断をすると、ただちにデュポン社と交渉にはいった。話は、田代の望んだ線でまとまった。

●あとは、デュポン社のナイロン技術をどれだけ神速にマスターして導入するかだ。田代ら一行は、契約が成立したその日から現地のホテルにこもって、英文の技術文書と取り組み、契約後、二週間ほどでマスターして帰国した。

●デュポン社のナイロン技術を導入した効果は二十七年ごろからあらわれ、翌年にはナイロンブームが起きた。東洋レーヨンは、競合他社がうらやむほどの成功をおさめることができた。

●ドライデンの言葉のように、田代の決意は遅かったが、神速に実行したことが功を奏したのである。決断を急ぐあまり、あきらめてしまっては、大成功を逃がすことになった。時には、じっくり決断し、時機を逸せず神速に行動することだ。

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