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好ききらいで人を使ってはいけない、その仕事に役立つ人かどうかが大切だ

松下電器産業創業者 松下幸之助

●人使いの名人、松下幸之助にして、なお好悪の感情で部下に接しがちになるという。タイトルの言葉の前で、松下はいう。

●「昔から十人十色というように、人にはそれぞれに異なった持ち味、性格、好みがある。経営者も例外ではない。だから、多くの人の中には、どうもあいつは虫が好かん、性格的にあわない、といったことも生じてくる。
 人間というものは不思議なもので、一度虫が好かないと思いこむと、たとえその相手がすぐれた点をもった人物であっても、そのことをなかなか素直に承認できない、‥‥その点を経営者たるものは、
よほど自戒しなくてはならないと思う」

●人を使い、人を生かして、事業を守り、発展させていくうえで、いかに好悪の感情が害をなすか、松下は十分に承知している。

●怖いのは、悪感情を抱くために、能力のある部下を遠ざけたり、冷遇したりすることだ。そこで、冒頭の言葉のごとくすることを松下はアドバイスしているのである。

●戦国武将の黒田如水は、息子の長政に人使いの秘訣を伝えている。

●「総じて人には、相口と不相口とがある。主人が家来に対し、ありがちなのは、気に入りとそうでない者を、分け隔てすることである。気に入りを相口という。善人ならば家の利になるが、悪人なら妨げになる。主人はそこらをよく見分けなければならない。 また、不相口の者は、善人であっても悪人のように思いがちで、その者の道理にかなったいいぶんさえも、無理押しだとはねつけたがる。つつしまなければならない大事である」

●如水は、創業を終え、守成の時代にはいった黒田家が、人事面から破綻をきたすことなく、子々孫々まで栄えることを願って諭したのである。

●如水のこの言葉のうちにある精神は、現代の名経営者に受け継がれ、事業のなかに生かされているのである。

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