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【完走した感想】ユニコーンオーバーロード_ゴリ押せる優しさ、ゴリ押してしまう弱さ

 これまでのあらすじ。
 ゲームの完走とはメインコンテンツをやり切ったタイミングだと捉えている。アクションやRPGなら表のラスボスを倒した時だし、ADVならトゥルーエンドを見た時など、だいたいがここまで制作陣が想定した終幕なんだろうな~というところが基本的には存在する。

 個人的な基準だが、なるべく買ったゲームはここまではやり切りたいと思っている。だが子供のころはゲームの完走というものが中々できなかった。やれるゲームの本数が資金力的に少ないので、大人になった今のようにゲームになんとなく飽きてしまうということはなかったが、倒せないボスやら解けないギミックやら出るとそこで止まってしまうのだ。子供の立場では攻略情報へのアクセスも容易でなく、非効率的なプレイをしがちなことが大きな要因だろう。基本やれることと言ったらレベル差でのゴリ押しだし。

 大人になってゲームを完走するコツというものがつかめてきた。詰まったら素直に情報をあさる。先駆者の動画を見て動きを調べる。飽きたら難易度を下げて最短ルートで行く。社会人になってから、よくもわるくも自力攻略に固執しなくなったこともあり、一本のゲームを完走することに関しては子供の頃よりも上手くなったように思う。

 そんな大人になった身でユニコーンオーバーロードを50時間かけてクリアした訳だが、ぶっちゃけゴリ押しでクリアしてしまったなと思う。
(以下ネタバレあり。何故かガンパレードマーチのネタバレもある)

概要:ユニコーンオーバーロード

ジャンル:シミュレーションRPG
発売日:2024年3月8日
対応ハード:PS4・5/Nintendo Switch/Xbox Series X/S
価格:8,778円(税込)

運命に抗う、絆と愛の幻想戦記

ターン制でない。完全リアルタイム制のSRPG

十三機兵防衛圏の座組なので、一応アレの発展形かもしれない

 ジャンルとしてはいわゆるRTS(リアルタイムストラテジー)。FEやスパロボのようにユニットをターン制で動かしていくのではなく、全ユニットが同時に動く中、プレイヤーはすべての部隊の動作を先行入力しMAPのクリアを目指す。日本ではマイナー気味のジャンルというイメージがあり、自分もプレイしたのは「十三機兵」を除くと「半熟英雄」ぐらいしかもしれない。

 そこに敷居の高さを感じるユーザーが多いと見たのか、本作は徹底的にユーザーフレンドリーを貫いている。まず全体的な難易度が低く、システムに詰まってクリアできないということもほぼない。プレイしながら難易度設定を調整できるのも現代風だ。死亡したユニットを喪うといったこともなければ、MAPを失敗した際のペナルティもない。さらに初期難易度ではアイテムも使い放題……などと行き届いた救済措置の数々により、時間をかけて挑んだ攻略しプレイ時間がパアになる……といったことは基本的にない。

仲間と出会いながら巨悪に挑む、超王道の冒険譚をヴァニラウェアならではの高精細なグラフィックとキャラクター、自由度の高いフィールド探索と新機軸のシミュレーションバトルで描きます
1990年代(16-bit時代)の名作シミュレーションRPGが持つ重厚な雰囲気や戦術性をフィーチャー・継承しながら、独自のバトルシステムや、オンライン対戦など現行機ならではの要素を盛り込み、懐かしくも新しい唯一無二のゲーム体験としてお届けします

メーカー説明

 90年代の名作シミュレーションRPGの良さを~とメーカー説明にはあるが、古典意識ゆえの突き放すような仕様はほぼなく、とにかく遊びやすい。なんというか、昔は怖かったらしいが今ではめちゃくちゃ優しい先輩みたいな佇まい。

感想:めちゃくちゃ面白かった。だけど感じる『申し訳なさ』

 シナリオクリアまで50時間以上かかった本作だが、最初から最後まで余すところなく面白かったとまず言っておく。ストーリー自体は古典的なファンタジー物で、悪の帝国から領地を解放していくという流れなのだが、各所の領地を次々と解放し、各所で仲間を増やしながら軍の規模を拡大していく様は中毒性があり、ぶっ続けで何時間もやってしまった

 1MAPが短めで次々とやってしまうこと、戦闘に疲れたらキャラごとの好感度上げに奔走できること(豊富な特殊会話がある)広いワールドマップを黙々と探索するだけで楽しいこと……ととにかく長時間のプレイに耐えうる造りになっている。

 退屈と言われがちなストーリーだが、これはこれでありだと思う。言ってしまえば街を開放する→仲間を増やす→次の場所へ……の繰り返しだが、ストーリーが平坦であるが故にゲームに黙々と没頭できた。

 SPRGらしい個性的な仲間たちとそれらをカップリングできる好感度システムにより、キャラゲー的な面でも楽しめたのも大きい。キャラごとの会話はもうちょっと組み合わせが多いと嬉しかったが、ボリューム自体はかなりある。好きなキャラとの結婚イベント+お気に入りのキャラを最終決戦で重要な立ち位置にできることなども気分を盛り上げてくれる。

 総じてストーリー的には平坦だがそれ故にストレスはなく、ゲームコンセプトとの噛み合いを感じる出来だった。

指輪の相手はヴァージニアを選んだ。ああいう気の強い貴族系が好きなんだ

 と、まぁ満足度は非常に高いのだが、一方でゲームすべてを楽しまずにクリアをしてしまった申し訳なさを感じる側面もある。

凝りに凝ったシステム。だが最後まで理解し切らずにクリアをしてしまった

 本作の難易度は前述の通り低い。どれくらいかというと、自分としては非常に珍しく歯ごたえを求めて難易度を上げるほどだった。NORMALではユニットの性能差を感じにくかったため、一つ上のTACTICALに上げてメインストーリーをクリアをした。

 一方で本作の非常に凝った戦闘システムを十全に理解できたとは言いがたい。本作は完全オートバトルとなり、事前に組まれた作戦や行動の優先順位に従いユニットたちの勝敗が決まる。難敵も細かい優先順位の設定や装備の変更により打破できるようになっており、攻略記事を漁ると様々な部隊の組み方、攻略法があり、こ、こんな戦い方あったのか……と驚いてしまう。

途中から面倒でおまかせで装備を決めていた

 翻って自分のプレイを見てみると、まぁ……途中で面倒くさくなってゴリ押しをしている。大雑把な指示をレベル差とアイテム連打で乗り切る場面が多く、クリアした今でも戦闘周りの細かい仕様を理解していない。
 この難易度までだとアイテムに使用制限がないことが非常に大きく、蘇生アイテムに甘えた進軍が可能になってしまっている(これより上の難易度ではアイテムの使用に回数制限がつく)。

一応、店の在庫の概念があるためアイテム入手数には限りがある

 ちょっと歯ごたえはほしいけど、これ以上複雑なのは面倒だなぁ……というなんともワガママなユーザーも拾ってくれる細かい難易度設定もまた本作の完成度の高さを物語っている。いるのだが、同時にその優しさ故にシステムを最後まで理解しなくてもいいやという気分になってしまった面もある。

 これと真逆のまったく優しくないゲームとして高機動幻想ガンパレード・マーチという作品が存在する。現代から見ても複雑怪奇過ぎるシステムと異様なほど入り組んだシナリオが存在する作品だが、その突き放した仕様ゆえにシステムを理解できたという側面もある。
(以下ちょっとガンパレのネタバレ)

死地についてこなくてもいいと冷静に言ってた娘がこういうこと吐露するんですよ

 何故そんな複雑怪奇なシステムを理解できたか。
 それは理解しないと舞が死ぬからである。詳細は割愛するが、このゲームは序盤に超高難易度のMAPがあり、そのMAPをクリアした際に相棒ともいえるヒロインについていくかどうかの選択肢が出る。そして、その先に超超高難易度MAPが待っている。そのMAPでヒロインの生死が決まる

 このMAPの攻略は任意であり必ずしもクリアしなくてもいい……のだが、ここをクリアしないと舞が帰ってこない。このMAPをやる頃には私は舞に結構な勢いで惚れ込んでいたので、全力でこの苦難を乗り越えようとした。具体的には100P近い説明書を読み込みありとあらゆる仕様や装備(時にはバグ)を利用し、持てるものすべてを使って舞を救おうと奮闘した。果たして何時間かけたかは覚えていないが、こうした試行錯誤の末に舞が生き残っていた時、とてつもない達成感を抱いた記憶がある。もうこれでゲームクリアでいいだろというぐらいの勢いだった。あと気づいたらゲームの仕様に詳しくなっていた

 そうした観点で言えば、ユニコーンオーバーロードにおいてそうした壁にぶち当たるタイミングはほぼない(敢えて言うならラスボスで少し特殊な編成を求められる)。だからこそこれだけ凝ったシステムがありながらゴリ押しでクリアをしてしまった。

 令和の時代、ガンパレのような造りが正しいとも言わないし、ユニコーンオーバーロードの幅広いユーザーを受け止める度量の大きさも褒められる点だとは思うが、一方で本当はもっとも力を入れたであろう凝った部分をゴリ押しで乗り切ってしまったことを制作者にちょっと申し訳なく感じるようなそんな作品だった。

 なんだかお気持ち表明みたいなものが混じってしまったが、間違いなく面白い作品なので、SRPGが好きな人には今後もオススメしていこうと思う。それぐらいには全方位に堅い出来の一本だった。

ユニコーンオーバーロード 完。


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