福本伸行・かわぐちかいじの二大巨匠に学ぶ、駆け引きに負ける人間の思考法『告白~コンフェッション~』
僕はボードゲームをつくる仕事をしているのですが、職業柄ゲームを面白くする要素について考える機会がけっこうありまして、そういうときに真っ先に浮かぶのが“駆け引き”という言葉です。
いったい、相手プレイヤーは何を考えているのか。どの選択が正解なのか。それがハッキリと解らないままに行動を決めるしかないシチュエーション。緊張感の中での思考の読み合い。それが駆け引きです。
人と人が対峙して遊ぶボードゲームは、これがあると断然面白くなります。ボードゲームに限らず、ゲームにおいていつまでも対人ジャンルが廃れないのは、人間がこうした駆け引きを好む故ではないでしょうか。
漫画で描かれる駆け引きの魅力も、僕らを掴んで離しません。たとえば映画化もされた『カイジ』シリーズ。主にギャンブルをテーマに、大金や時に命をかけた人間同士の駆け引きが描かれ、長年人気を博しています。
今回ご紹介する『告白~コンフェッション~』では、そんな『カイジ』などを描く福本伸行先生が、大ベテランかわぐちかいじ先生と組んで濃厚な駆け引きを描きます。
二人きりの山小屋で始まる疑心暗鬼の夜
山登りにきた山岳部OBの浅井と石倉。慣れている山のはずが、途中の岩場の事故で石倉が足を負傷、加えて猛吹雪という不幸に見舞われます。
石倉の傷は深刻で、吹雪の中では身動きが取れません。下がっていく体温と止まらない出血に死を覚悟した石倉は、ある”告白”を始めます。
それは山岳部時代に起きた女性部員の死が、事故でなく自分による殺人だったということ。殺人を犯して以降の人生を後悔してきたこと。この告白ができて、やっと安心して眠れるということ…。
『告白~コンフェッション~』(福本伸行・かわぐちかいじ/講談社)より引用
しかし涙ながらに石倉が語り終えた瞬間、吹雪が晴れて山小屋が見つかります。これで助かる!はしゃぐ浅井ですが、背負われて山小屋についた石倉の表情は、何かを後悔している様子。生還の喜びも束の間、雪で閉ざされた山小屋を舞台に、疑念を抱え合った二人の長い夜が始まるのでした…。
『告白~コンフェッション~』(福本伸行・かわぐちかいじ/講談社)より引用
『告白~コンフェッション~』(福本伸行・かわぐちかいじ/講談社)より引用
『告白~コンフェッション~』(福本伸行・かわぐちかいじ/講談社)より引用
駆け引きの勝敗を分けるものは
駆け引きのゲームで勝敗を分けるのは、いかに相手のことを理解しているかだと思います。どんなに自分のカードが良かったとしても、相手の出方を全く把握しなかったばかりにリソースを無駄に使って敗北…なんてことがよくあるのです。そのため、相手に自分の意図を悟らせないようにするのが、攻めるよりも有効な時があったりします。
ちなみに駆け引きで最悪な思考法は、相手が自分の都合のいいように思考展開していると思い込むことです。思い込みは理解の正反対です。
『告白~コンフェッション~』(福本伸行・かわぐちかいじ/講談社)より引用
『告白~コンフェッション~』でも、そんな相手への理解と思い込みが、浅井と石倉の結末を決めることになります。
1巻完結、全300ページ。最後の最後まで読み切れないサスペンスを、一気読みで追いかけてほしいです。